今週のアップデート — 再生エネ振興策を見直す(2012年5月14日)
今週のコラム
1)今年7月からはじまる再生可能エネルギーの振興策である買取制度(FIT)が批判を集めています。太陽光などで発電された電気を電力会社に強制的に買い取らせ、それを国民が負担するものです。政府案では、太陽光発電の買取額が1kWh当たり42円と高額で、国民の負担が増加することが懸念されています。
電力中央研究所の主任研究員朝野賢司氏に「太陽光バブルを避ける3つの提案」を寄稿いただきました。先行したヨーロッパなどの詳細な調査を背景に、1買取価格の切り下げ、2発電とパネル価格のデータ蓄積、3費用負担見直しの透明性の向上によって、価格が乱高下する「バブル化」を避けられるという考えを提案しています。現実的な改善策と評価できる考え方でしょう。
2)原子力発電の未来について、さまざまな意見が社会に提案されています。独立行政法人経済産業研究所(RIETI)研究員の戒能一成氏に、「福島第一原子力発電所事故と今後のエネルギー政策」の寄稿をいただきました。
戒能氏は、ユニークな視点から考察をしています。統計から、東京電力と事故を起こした福島第一発電所の状況を分析し、ここでは他の発電所と違って旧型の原子炉を使っているにもかかわらず、東電の改修費は横ばいでした。旧型炉を稼動させ続けた東電の経営陣にミスがあった可能性があるという指摘です。
福島第一原発の事故の可能性が、すべての原発に当てはまらないと言えるかもしれません。原発について「絶対悪」と思考停止するのではなく、原発のリスクと可能性を多角的な視点から分析をする必要があるのではないでしょうか。
3)NPO法人の国際環境経済研究所(IEEI)と、GEPRはコンテンツの公開の提携をしています。民間有志による電力改革研究会による「日本における発送電分離は機能しているか」という寄稿を紹介します。
現行制度で発電と送電の連携において、形骸化していても「電力系統利用協議会」(ESCJ)という組織があります。その運用の見直しによって、発電事業者のアクセスが容易になるのではないかという指摘です。
今週の論文
1)「「ポスト・失われた20年」に光」。スタンフォード大学名誉教授の青木昌彦氏の日本経済新聞への論考です。産業革新についての分析ですが、その中で電力問題を考えるべきだという、主張です。日本に求められている視点でしょう。
2)経産省・資源エネルギー庁、総合資源エネルギー調査会基本問題調査会が「経済影響分析について(試算結果の中間報告)」を5月9日公表しました。まとめています。2030年までに原発による発電割合をゼロから35%までの5パターンを示し、それによって経済にどのような影響がでるかを分析したもので、国内の5団体の試算をまとめました。
30年に原発の比率がゼロである場合、再生可能エネルギー普及のための設備投資が増えるものの、消費や輸出が悪化するなどして実質GDPが最大5%下押しされる。一方、原発比率が35%とされると、GDPの下押しは最大でも2.5%にとどまるという結果です。
3)公益社団法人日本アイソトープ協会がICRPの勧告111の日本語訳をホームページ上で公開しています。(印刷、保存などには対応せず)。この文章は、日本政府の放射線防護対策に影響を与えるなど、被曝対策で重要な文章となっています。(参考GEPR記事「放射線防護の重要文書「ICRP勧告111」の解説 ― 規制の「最適化」「正当化」「住民の関与」が必要」)
4)米国のサイト「原子力科学者の報告」が特集として低線量被曝のリスクについて、サイトで特集を組んでいます。同団体は、「核をめぐる世界の破滅時計」を毎年公開し、注目を集めている団体です。
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