今週のアップデート — 電力自由化、再編が課題に(2013年4月1日)
今週のアップデート
1)「電力業界、発送電分離より再編が必要 — 原発の将来を見据えて」
政策家の石川和男氏へのインタビュー記事です。政府は、発送電分離を柱にする2020年までの電力自由化を打ち出しました。しかし、これは「電力価格を引き下げる」という消費者や企業に必要な効果があるのでしょうか。また原発のことは何も決めていません。整合性の取れる政策は実行されるのでしょうか。
石川氏はそれよりも規模の拡大によるコストメリット、そして原子力の分離と新会社での国家管理化を主張しています。
経済・環境ジャーナリストの石井孝明氏の論考。過去の産業政策の成功事例を参考に、現代のエネルギー政策への教訓を引き出しています。数値目標を定めて実現する、温室効果ガス削減、原発比率の管理政策など、現代のエネルギー政策に応用できそうな内容との指摘。政策では合理性が追求されました。
3)「東京都の電力販売への違和感」
山本隆三氏の論考。同氏は国際環境経済研究所(IEEI)主席研究員、常葉大学経営学部教授です。東京都が東電に販売していた保有水力発電所の電気を別の会社に売りました。東電の株主として、また電力不足に直面した地域の行政機関として、この行動に疑問を示しています。
今週のリンク
1)虚構の料金値上げ
アゴラ研究所の池田信夫所長の論考です。電力料金の値上げ要請が行われています。ところが、一連の値上げが停止状況にある原発の稼動を織り込んだものです。原発は原子力規制委員会が、過剰規制を続けているため、再稼動のメドは立ちません。それなのにそれを織り込むことは、赤字が値上げしても続きます。このおかしな状況を変えなければなりません。
2)社会一変、想像以上だった「シェール革命」 米で原発廃炉相次ぐ
産経新聞4月1日記事。米国の状況変化が驚くべきものとのリポートです。安いエネルギー転換による合理的な解決策によって、エネルギーの未来が大きく変わる可能性があります。
3)密着 東電福島復興本社・石崎芳行代表/上(その1) 地元常駐、償いの日々
毎日新聞の4月1日記事。東京電力の福島本社の取り組みです。信頼回復は長い道のりでしょうが、その取り組みを静かに注目すべきでしょう。
4)米国の原子力の出口とは?(英語)US nuclear exit?
米国の原子力サイト、「Bulltein of Atomic Scientist」(原子力科学者の報告)掲載のリサーチペーパー。米国では原発の稼動、増設に動き出していますが、これについての批判、また電力会社の抑制の動きを紹介しています。
同サイトは米国の著名研究サイト。両論は併記しているものの、原子力批判派の論考が多いことで知られています。
5)中国の巨大電力需要をどう満たすのか–環境対策には日本の環境、石炭燃焼、 原子力
今回掲載の、山本隆三氏のウェッジ掲載のコラムです。中国は電力需要の伸びを石炭火力増設で対応しています。そのため、大気汚染が深刻です。この状況を止める方法は見当たらず、日本は技術輸出など、できる範囲で関わることを訴えています。

関連記事
-
冒頭に、ちょっと面白い写真を紹介しよう。ご覧のように、トウモロコシがジェット機になって飛んでいる図だ。 要するに、トウモロコシからジェット燃料を作って飛行機を飛ばす構想を描いている。ここには”Jet Fuel
-
日米の原子力には運転データ活用の面で大きな違いがある。今から38年前の1979年のスリーマイル島2号機事故後に原子力発電運転協会(INPO)が設立され、原子力発電所の運転データが共有されることになった。この結果、データを
-
自由化された電力市場では、夏場あるいは冬場の稼働率が高い時にしか利用されない発電設備を建設する投資家はいなくなり、結果老朽化が進み設備が廃棄されるにつれ、やがて設備が不足する事態になる。
-
日本でも縄文時代は今より暖かかったけれども、貝塚で出土する骨を見ている限り、食べている魚の種類は今とそれほど変わらなかったようだ。 けれども北極圏ではもっと極端に暖かくて、なんとブリや造礁サンゴまであったという。現在では
-
今年も3・11がやってきた。アゴラでは8年前から原発をめぐる動きを追跡してきたが、予想できたことと意外だったことがある。予想できたのは、福島第一原発事故の被害が実際よりはるかに大きく報道され、人々がパニックに陥ることだ。
-
ゲル首相の誕生 石破が最初に入閣、防衛庁長官に任じられたとき、ゲル長官という渾名がついた。2002年小泉内閣の時のことである。 「いしばしげる」をワープロソフトで変換したら〝石橋ゲル〟と変換されたからだといわれている。ま
-
昨今、日本でもあちこちで耳にするようになったESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉である。端的にいうならば、二酸化炭素(CO2)排
-
令和2年版の防災白書には「気候変動×防災」という特集が組まれており、それを見たメディアが「地球温暖化によって、過去30年に大雨の日数が1.7倍になり、水害が激甚化した」としばしば書いている。 だがこれはフェイクニュースで
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間