北大教授に「殺すぞ」と脅迫-反原発主張の人物
原子力研究と啓蒙活動を行う北海道大学大学院の奈良林直教授に対して「原発推進をやめないと殺すぞ」などと脅迫する電話が北大にかかっていたことが10月16日までに分かった。奈良林教授は大学と相談し、10日に札幌北警察署に届けて受理された。
奈良林教授は、これまで何度か脅迫を受けていたが、10月8日に殺害を示唆する電話が大学にかけられたことから、警察に届け出た。個人の安全に加えて、大学関係者へのテロを警戒したためという。19日時点で各メディアはこれを取り上げていないが、広く告知されるべきである。
奈良林氏は原子力工学・安全で国際的に著名な研究者であり、日本保全学会の会長として、一般への啓蒙も積極的に活動している。福島原発事故の後は、反対派との対話集会にも参加している。筆者も尊敬する誠実な方だ。脅迫は断じて許されない、卑劣な行為である。
奈良林氏は「これは明らかな犯罪であり、『原発の安全性を推進して人類の未来に貢献すべき』との信念を持つ私としては、学問の自由に対する悪質な犯罪ですので、許す訳にはいきません」と述べている。
脅迫はたいてい実際の暴力事件にはならないが、今回は懸念すべき事実がある。極左暴力集団が、奈良林氏の名前を出して北大構内で、批判ビラをまくなどの活動をしている。また奈良林氏が支援する福島復興のNPOが最近の福島で行ったイベントで最近、極左暴力集団の関係者が妨害をしたという。福島では、反原発を語りながら、活動をする極左の活動が目立つという。(参考記事、産経新聞「過激派、福島にターゲット 不安あおり浸透図る?」)そのような異常な人物らが、普通の市民を相手に、テロ活動をする可能性は否定できない。
反原発については、感情に基づく異常な言説がこの4年横行している。狂気もここまで来たかと、悲しい。警察当局は速やかに犯人を検挙して、再発防止の戒めとしてほしい。また奈良林教授の安全を祈り、同氏を守らなければならない。
残念ながら、最近「市民運動」と称する違法な暴力的デモ、またそれに参加する極左暴力集団の活動が活発だ。(参考の私の記事「異様な安保法制反対デモ、笑劇の現場」)筆者も福島デマの拡散を批判する言論活動に対して、嫌がらせ、脅迫を受けたことがある。(同「オペレーションコドモタチが石井孝明を脅迫」)こうした風潮が、今回の脅迫にも影響しているのかもしれない。
このほど国会前で活動するシールズという団体の代表が、匿名の殺害をほのめかされた封書を受け、警察に告発した。メディア、支持者が、強くその脅迫行為を批判した。原発をめぐる言論でも、反対意見を封殺する意見を封殺する行為は強く批判されるべきだ。
また元朝日新聞記者の植村隆氏を非常勤講師として雇う北海道の北星学園大学に、彼が慰安婦の誤報をしたことを非難する右派の抗議が集まった。それを大学の学問の自由と絡めて批判する人々もいた。
シールズや植村氏を守れと主張した人々は、この問題でも脅迫者へ強い批判をしなければならないだろう。沈黙は公平性を欠く。
そして嘆かわしい状況がある。極左暴力集団を甘えさせている人々がいるのだ。参議院議員山本太郎氏が極左暴力集団の中核派の支持を受けている。民主党幹事長の衆議院議員枝野幸男氏もかつて同じような集団の革マル派の支援を選挙で受けた。そしてメディアがこうした暴力集団の活動を支援するかのような報道をしている。(参考・報道ステーションの中核派支援についての記事「報道ステ、偏向報道批判」)また言論活動を、スラップ訴訟(嫌がらせ訴訟)で止めようとする人も(参考・池田信夫氏記事「上杉隆の訴状について」)、こうした動きを支える(実際にはそれによる金儲けをする)一部左派系弁護士もいる。残念ながら、一連の国会前デモは、こうした極左暴力集団の影響が強い。
言論活動を暴力で妨害をする極左暴力集団を支援する動きをする人には、今回の事件を機に猛省を求めたい。このような70年代に暗躍した化石化した「化け物」を、実社会で再び、悪霊のように呼び覚ましてしまった。
こうした脅迫行為は、私たちの民主主義体制と言論の自由を破壊するものである。断じて許してはならない。
(2015年10月19日掲載)
関連記事
-
アゴラ研究所の運営するネット放送「言論アリーナ」。6月2日に「京都議定書はなぜ失敗したのか?非現実的なエネルギーミックス」を放送した。出演は澤昭裕氏(国際環境経済研究所所長、21世紀政策研究所研究主幹)、池田信夫氏(アゴラ研究所所長)、司会はGEPR編集者であるジャーナリストの石井孝明が務めた。
-
7月2日付の各紙の報道によれば、7月1日の原子力規制委員会での審議とそのあとの記者会見の場でまたまた、とんでもないことが起こっている。
-
山梨県北杜市の環境破壊の状況は異常で、もう取り返しがつかなくなっている。現場を見て、次の問題が浮かび上がる。第一の論点として、「環境にやさしい」という良いイメージで語られる太陽光が、一部地域では景観と住環境を破壊しているという問題がある。
-
日本経済新聞 5月18日公開。中国電力は17日、島根原子力発電所(松江市)1号機の廃炉計画を巡り、周辺自治体への説明会を松江市で開いた。
-
上野から広野まで約2時間半の旅だ。常磐線の終着広野駅は、さりげなく慎ましやかなたたずまいだった。福島第一原子力発電所に近づくにつれて、広野火力の大型煙突から勢い良く上がる煙が目に入った。広野火力発電所(最大出力440万kw)は、いまその総発電量の全量を首都圏に振向けている。
-
はじめに 原子力にはミニトリレンマ[注1]と呼ばれている問題がある。お互いに相矛盾する3つの課題、すなわち、開発、事業、規制の3つのことである。これらはお互いに矛盾している。 軽水炉の様に開発済みの技術を使ってプラントを
-
2年前の東日本大震災は地震と津波による災害と共に、もう一つの大きな災害をもたらした。福島第一原子力発電所の原子力事故である。この事故は近隣の市町村に放射能汚染をもたらし、多くの住人が2年経った現在もわが家に帰れないという悲劇をもたらしている。そして、廃炉に用する年月は40年ともいわれている。
-
判定の仕組みも問題だ。原子力規制委員会の決定は、制度上は5人の委員の合議で決まることになっている。しかし今は島崎氏が地震関係業務を一人で引き受けている。島崎氏はこれまで原子力関係の規制づくり、判定の経験がほとんどない地震学者だ。委員に就任してから、事業者とほとんど対話をせずに規制基準をつくり、そしてその後は自ら判定者となってしまった。日本各地の原発の周辺で意味があるとは思えない「穴掘り」を繰り返している。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















