小泉進次郎氏は原発処理水の問題を打開できる

2019年09月18日 12:00
アバター画像
アゴラ研究所所長

大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾までタンカーで運ぶのは、膨大な無駄である。

国や自治体がカネを出す気なら、もっと効果的な方法がある。今や障害は福島県漁連しか残っていない。彼らは福島第一原発の沖では操業していないが、今も「風評被害」を理由にして海洋放出に反対している。

彼らが(暗に)求めているのは漁業補償の上積みだが、それを誰も言い出せない。東電はすでに休業補償を出したので、2度カネを出すことができない。だから漁業補償とは違う形で、カネを出すしくみを作ればいいのだ。

簡単なのは、大阪市が福島の魚を買い上げることだ。言論アリーナで澤田さんがいっていたが、今でも福島沖で操業することは禁止されていないので、魚をとっている船(漁協の組合員)がある。8年間も魚をとっていないので、漁業資源は非常に豊かだという。

魚の放射性物質を計測しても、検出できない。原発近海の濃度は1kgで10ベクレル以下と飲料水の水質基準を満たしており、トリチウムは生物濃縮されないからだ。そういう船のとった魚を大阪市が買い上げ、大阪で売ればいい。

これに小泉進次郎氏も協力できる。彼が復興政務官時代、福島のリンゴを食べたように、福島第一原発の沖でとれた魚を食べて「福島の魚は安全だ」とPRして風評被害を払拭すれば、県漁連が反対する理由もなくなる。

ANNニュースより:編集部

ANNニュースより:編集部

漁協にとって一番いいのは、漁ができるようになることだ。これを行政が買い上げて(農産物のように)品質保証すればいいのだ。風評被害が消えれば、処理水を流すことができるようになる。

処理水問題が混乱する最大の原因は、誰が水を流すと決めるのかという責任の所在がわからないことだ。これは形式的には東電だが、実質的には国である。ところがその国の中でも、どこの役所が責任をもつのかがわからない。

原子力規制委員会も経済産業省も「薄めて流すしかない」という結論は一致しているが、「決めるのは東電で役所はアドバイスするだけだ」という。この無責任体制では、いつまでたっても決着がつかない。

風評は科学の問題ではないので、論理的に説得するより小泉氏のようなヒーローが「処理水を流しても福島の魚は安全だ」とPRするほうが効果的だ。これに大阪市や全国のボランティアが協力して、福島の魚を食べるキャンペーンをやってはどうだろうか。

This page as PDF

関連記事

  • 【要旨】日本で7月から始まる再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の太陽光発電の買取価格の1kWh=42円は国際価格に比べて割高で、バブルを誘発する可能性がある。安価な中国製品が流入して産業振興にも役立たず、制度そのものが疑問。実施する場合でも、1・内外価格差を是正する買取価格まで頻繁な切り下げの実施、2・太陽光パネル価格と発電の価格データの蓄積、3・費用負担見直しの透明性向上という制度上の工夫でバブルを避ける必要がある。
  • 日本政府は昨年4月にエネルギー基本計画を策定し、今年の7月に長期エネルギー需給見通しが策定された。原子力は重要なベースロード電源との位置付けであるが、原発依存度は可能な限り削減するとし、20%~22%とされている。核燃料サイクルについては、これまで通り核燃料サイクル政策の推進が挙げられており、六ケ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、アメリカおよびフランス等との国際協力を進めながら高速炉等の研究開発に取り組むことが記載されている。
  • 厄介な気候変動の問題 かつてアーリは「気候変動」について次の4点を総括したことがある(アーリ、2016=2019:201-202)。 気候変動は、複数の未来を予測し、それによって悲惨な結末を回避するための介入を可能にする
  • 製品のCO2排出量表示 環境省、ガイドラインを策定 環境省は製品の製造から廃棄までに生じる二酸化炭素(CO2)の排出量を示す「カーボンフットプリント」の表示ガイドラインを策定する。 (中略) 消費者が算定方法や算定結果を
  • 脱炭素、カーボンニュートラル、ネットゼロ。これらの言葉は、いまや疑う余地のない「正解」として共有されている。一般には、木質バイオマスについて次のように説明されることが多い。 木々は成長過程で大気中の二酸化炭素(CO2)を
  • 昨年末の衆議院選挙・政権交代によりしばらく休止状態であった、電力システム改革の議論が再開されるようだ。茂木経済産業大臣は、12月26日初閣議後記者会見で、電力システム改革の方向性は維持しつつも、タイムスケジュール、発送電分離や料金規制撤廃等、個々の施策をどのレベルまでどの段階でやるか、といったことについて、新政権として検証する意向を表明している。(参考:茂木経済産業大臣の初閣議後記者会見の概要)
  • 去る2026年4月22日、ネブラスカ州、テキサス州、フロリダ州、アラスカ州など米国23州の司法長官が連名で、フィッチ、ムーディーズ、S&Pグローバルの世界3大格付け機関に対し、ESG評価を前提とした格上げ・格下げ
  • わが国の原子力事業はバックエンドも含めて主に民間事業者が担ってきた。しかし、原子力事業は立地の困難さもさることながら、核物質管理やエネルギー安全保障など、国家レベルでの政策全体の中で考えなければならない複雑さを有しているため、事業の推進には政府の指導・支援、規制が必要と考えられてきた。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑