日本の撤退で中国が独占する石炭火力の世界市場
石炭火力発電はCO2排出量が多いとしてバッシングを受けている。日本の海外での石炭火力事業もその標的にされている。

磯子火力発電所 J-POWERグループHPより
だが日本が撤退すると何が起きるのだろうか。
2013年以来、中国は一帯一路構想の下、海外において2680万キロワットの石炭火力発電所を建設するために、5兆円以上のファイナンスをしてきた。だがこれはほんの序曲に過ぎなかった。
2019年8月になると、中国を除く世界全体の石炭火力発電所建設のうち、72%が中国によってファイナンスされる状態になった(出典:QUARTZ)
いま、日本、韓国、そしてアジア開発銀行の国際機関などが、石炭火力発電事業から撤退するよう、環境団体から圧力を受けている。だが、もしこれらがすべて撤退してしまえば、今後は中国が世界市場をほぼ完全に独占することになる。
現在、ユーラシア、南アメリカ、アフリカにおける60の新規の石炭火力発電事業において、ほぼ全額が中国の銀行によって資金提供されている。
以下の図はそのマップであり、青は建設中、黒は反対運動に直面中、黄は建設許可待ちである(出典:QUARTZ)。一帯一路の輪郭がダブって見えてくる。
これらの石炭火力の合計は 7000万キロワット。日本の全ての石炭火力の合計4800万キロワットよりもはるかに多い。
「一帯一路」構想の下、中国は石炭火力発電をはじめとした化石燃料の採掘・利用技術で約150カ国を支援している。
これは開発途上国が切望していることだ。中国はそれを与えることが出来ている。
日本は、石炭事業から撤退するならば、単に事業機会を逃すばかりでなく、開発途上国を中国側に追いやって一帯一路を手助けしてしまうのだ。こんな愚かなことがあるだろうか。
■

関連記事
-
けさの「朝まで生テレビ!」は、3・11から7年だったが、議論がまるで進歩していない、というより事故直後に比べてレベルが落ちて、話が堂々めぐりになっている。特に最近「原発ゼロ」業界に参入してきた城南信金の吉原毅氏は、エネル
-
アゴラ・GEPRは、NHNJapanの運営する言論サイトBLOGOS 、またニコニコ生放送を運営するドワンゴ社と協力してシンポジウム「エネルギー政策・新政権への提言」を11月26、27日の2日に行いました。
-
新しい日銀総裁候補は、経済学者の中で「データを基に、論理的に考える」ことを特徴とする、と言う紹介記事を読んで、筆者はビックリした。なぜ、こんなことが学者の「特徴」になるのか? と。 筆者の専門である工学の世界では、データ
-
まもなく3・11から10年になる。本書は当時、民主党政権の環境相として福島第一原発事故に対応した細野豪志氏の総括である。当時の政権の誤りを反省し、今も続くその悪影響を考えている。 本人ツイッターより あの事故が民主党政権
-
今回はマニア向け。 世界の葉面積指数(LAI)は過去30年あたりで8%ほど増えた。この主な要因はCO2濃度の上昇によって植物の生育が盛んになったためだ。この現象は「グローバルグリーニング」と呼ばれる。なお葉面積指数とは、
-
先日紹介した、『Climate:The Movie』という映画が、ネット上を駆け巡り、大きな波紋を呼んでいる。ファクトチェック団体によると、Xで150万回、YouTubeで100万回の視聴があったとのこと。 日本語字幕は
-
英国のエネルギー政策をめぐる政府部内の対立は、オズボーン財務大臣対デイビー・エネルギー気候変動大臣の対立のみならず、連立与党である保守党対自民党の対立でもあった。
-
3月12日、愛知県の渥美半島沖の海底で、「燃える氷」と呼ばれる「メタンハイドレート」からメタンガスを取り出すことに世界で初めて成功したことが報じられた。翌13日の朝日新聞の朝刊にも、待望の「国産燃料」に大きな期待が膨らんだとして、この国産エネルギー資源の開発技術の概要が紹介されていた。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間