CO2ではなく雲の減少で気温が上昇しているという論文
2023年からなぜ急に地球の平均気温が上がったのか(図1)については、フンガトンガ火山噴火の影響など諸説ある。
Hunga Tonga volcano: impact on record warming
だがこれに加えて、最近の衛星観測の結果で面白い論文が出ている。
即ち、地球の反射率が急減している(図2)。これは雲の量が減少したためだと見られている。2000年以降で0.79%の減少となっている。
飛行機から下を見下ろすと、雲は白く、海は黒い。すなわち太陽光のうち可視光線は海に吸収される。この吸収量が激増している。
地球によって吸収された太陽光は2000年以降で1平方メートルあたり2.7ワットも増大した(図3)。なお図中でshortwaveというのは太陽光のこと。地表などからの赤外線放射をlongwaveと呼んで区別するのがこの業界の習慣だ。
IPCC第6次報告だと、1750年から2019年までの温室効果ガスによる温室効果の増加は2.72ワットとされている。すると、2000年以降の僅かな時間だけで、これとほぼ同じだけ太陽光の吸収が増えたということだ! もしも温室効果ガスが地球の気温を上げるというなら、この太陽光吸収の増大が地球の気温に影響しない筈がない。
論文では、この太陽光吸収の増大が、海洋を温め(図4)、それが大気を温めている、としている。
そのようなシンプルなモデルを作ることで、過去の地球の平均気温上昇を再現できてしまう(図5)。そしてこのモデルにCO2濃度の上昇による温室効果は説明変数として入っていない! つまり地球温暖化は雲量の変化だけでほぼ説明できてCO2は殆ど関係ない、という訳だ。
図5では、なんと、2024年の気温の急上昇も雲量の変化で説明できている。
論文では、雲量が変化した理由については、太陽活動の変化による宇宙線の影響などが考えられるが、不明であり、重点的な研究が必要だとしている。
なお、CO2による温室効果が雲量減少を引き起こし、それにより温暖化が加速するという意見(いわゆる雲によるポジティブフィードバック)もあるが、マックスプランク研究所のビョルン・スティーブンスのように、雲のそのようなフィードバック効果はゼロであるという意見もある。
この論文で用いている反射率のデータ(図1)はNASAのCERESプロジェクトによるもので、この業界ではもっとも有名なものだ。今後、このデータをどう解釈したらよいのか論争になるだろう。また、観測される反射率はまた来年も大きく変化するのだろうか。ナゾは尽きない。
■
関連記事
-
割高な太陽光発電等を買い取るために、日本の電気料金には「再生可能エネルギー賦課金」が上乗せされて徴収されている(図)。 この金額は年々増え続け、世帯あたりで年間1万円に達した注1)。 これでも結構大きいが、じつは、氷山の
-
先進国では、気候変動対策の一つとして運輸部門の脱炭素化が叫ばれ、自動車業界を中心として様々な取り組みが行われている。我が国でも2020年10月、「2050年カーボンニュートラル」宣言の中で、2035年以降の新車販売は電気
-
日本の自治体も参加するスマートシティ 元ゲリラ活動家の左派大統領、ダボス会議で資本主義否定のスピーチに引き続き、ハートランド研究所の動画“In the Tank”第382回ならびにダボス会議のセッション「Bold New
-
エネルギー政策の見直しの機運が高まり、再生可能エネルギーへの期待が広がる。国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP・FI)の特別顧問を務め、環境、エネルギー問題のオピニオンリーダーである末吉竹二郎氏の意見を聞いた。
-
先日3月22日の東京電力管内での「電力需給逼迫警報」で注目を浴びた「揚水発電」だが、ちょっと誤解している向きもあるので物語風に解説してみました。 【第一話】原子力発電と揚水発電 昔むかし、日本では原子力発電が盛んでした。
-
シンクタンク「クリンテル」がIPCC報告書を批判的に精査した結果をまとめた論文を2023年4月に発表した。その中から、まだこの連載で取り上げていなかった論点を紹介しよう。 ■ IPCC報告における将来の海面上昇予測が地点
-
野田佳彦首相は5月30日に開催された「原子力発電所に関する四大臣会合」 に出席し、関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼働について「総理大臣である私の責任で判断する」 と語りました。事実上、同原発の再稼動を容認するものです。
-
スマートジャパン 3月14日記事。環境省が石炭火力発電所の新設に難色を示し続けている。国のCO2排出量の削減に影響を及ぼすからだ。しかし最終的な判断を担う経済産業省は容認する姿勢で、事業者が建設計画を変更する可能性は小さい。世界の主要国が石炭火力発電の縮小に向かう中、日本政府の方針は中途半端なままである。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間