2026年は脱炭素の終わりの始まり

筆者はこれまで「2023年はESGの終わりの始まり」「2024年は企業の脱炭素宣言の終わりの始まり」と述べてきました。
この4年間でESG投資が半減し、企業の脱炭素宣言見直しや炭素クレジット利用中止も相次いでいます。米証券取引委員会(SEC)による気候関連情報開示規則が廃案となり、欧州CSRD、CSDDD、CBAMが事実上の骨抜きとなりました。
ただしこれらは米欧の話。国内大手メディアはこの4年間も「ESG・脱炭素は世界の潮流だ」的な報道を続けてきましたし、日本政府は産業界の首を絞めるだけのGX-ETS(排出量取引)、スコープ3開示義務化を2026年度から開始しました。
ところが、ここにきてようやく我が国でも脱炭素を転換する動きが民間から出てきました。そりゃそうです。メディアや政府と違って、企業は観念的な脱炭素を盲従し続けられるはずがありません。
特にここ1か月間、立て続けに大きなニュースが続いたのでメモしておきます。
まずはホンダの2040年ガソリン車廃止宣言見直し。発表当初から無理筋であることは明白だったのに、巨額赤字という最悪の結果になってしまいました。
ホンダは最大損失2.5兆円も、EV戦略見直し-三部氏は報酬一部返上 – Bloomberg
■今期営業損益見通しは最大5700億円赤字に-北米でEV3車種開発中止
■ホンダの将来を考え「断腸の思い」で開発中止決定、と三部社長
(中略)
四輪事業の中長期戦略再構築の詳細について、5月に発表を予定しているという。
社内で見直すべきだと諫言する人がいたはず。その方々こそ腸が煮えくり返っているのでは。経営判断の遅れによって顧客、従業員、サプライヤーすべてが被害者となってしまいました。
来月発表されるホンダの中長期戦略が他社のEVやネットゼロ計画見直しへと波及することを切に願います。数年後、「ホンダのおかげで日本の産業界が脱炭素から転換できた」と振り返りたいものです。
続いて、JAPEXの脱炭素方針見直し。
石油資源開発が「原油生産4倍」 地政学リスク受け投資最大の1兆円 – 日本経済新聞
資源開発国内2位の石油資源開発(JAPEX、ジャペックス)は22日、原油ガスの生産量を4倍にする方針を発表した。米国・イスラエルとイランの軍事衝突が起き、エネルギー資源の重要性が増す。脱炭素を強調した従来の経営方針を見直す。
(中略)
経営方針を転換したのは、脱炭素の潮流の鈍化がある。従来目標を発表した22年当時は、温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)を増やす石油・ガス採掘に逆風が吹いていた。化石燃料から新エネルギーへ転換を迫られていた。一方でロシアのウクライナ侵略に始まるインフレが世界で広がった。初期投資がかさむ脱炭素関連の収益性が不透明になった。温暖化に懐疑的なトランプ米政権の誕生が追い打ちになり、脱炭素計画を撤回する動きが世界で広がった。
そして、電事連会長の発言。
電事連の森会長「脱炭素、立ち止まるべき」 エネルギー供給不安 – 日本経済新聞
電気事業連合会の森望会長は23日、中東緊迫によるエネルギー供給不安を受け「脱炭素への取り組みは一度立ち止まるべきだ」と話した。
(中略)
森会長は「安定供給とのバランスを踏まえ、脱炭素のスピードを見極め直す必要がある」と話す。一例として、企業にCO2排出の削減義務を課す「日本版排出量取引制度(GX-ETS)」の見直しを挙げた。
(中略)
政府はホルムズ封鎖を受け、26年度は非効率な石炭火力発電所でも稼働しやすくした。GX-ETSは見直されておらず、森会長は「整合性が取れていない」と話した。制度適用の一部先送りなど見直しの必要性を訴えた。森会長は「脱炭素で先行していた欧州でもCO2排出義務の緩和が進んでいる」とした。その上で「日本だけCO2排出を厳格化する方向性が続けば、産業の海外への流出も起こりかねない」と訴えた。
遅きに失したとはいえ、エネルギーの需要側・供給側の双方から同時に脱・脱炭素の声が上がり始めたのは必然の帰結と言えます。事業活動におけるCO2排出量は経営計画そのものですが、規模も業種も顧客もまったく異なるのに、あらゆる企業が2030年CO2半減、2050年ネットゼロと横並びの経営計画を公表してきたこの6年間が異常な光景でした。
排出量取引、スコープ3、EV、ネットゼロ…、あらゆる脱炭素施策は義務化・強制でなく自由参加にすればよいのです。2026年が日本にとっても脱炭素の終わりの始まりとなることを切に願います。繰り返しになりますが、数年後「ホンダが日本の産業界を救った」と振り返りたいものです。
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