野党が脱炭素の国民経済負担で政権を追及 ― 英国
英国ではボリス・ジョンソン保守党政権が脱炭素(ネット・ゼロ)政策を進めている。だが、家庭用のガス使用禁止やガソリン自動車の禁止等の具体的な政策が明らかになるにつれ、その莫大な経済負担を巡って、与党内からも異論が噴出している。
野党労働党も黙ってはいない。英国の大衆紙サンが報じた。
すなわち英国下院のビジネス委員会は、2050年までに脱炭素化するための「真の経済負担を政権は国民に説明していない」と非難した。

ダレン・ジョーンズ下院議員 公式HPより
委員長のダレン・ジョーンズ議員は、「全国の無数の低所得の人々に、生活が苦しい中、脱炭素のための支払いを強いるわけにはいかない。そのようなことでは、ネット・ゼロを達成するために必要な変化は何も起こらない」と述べた。
これに先立って、英国財務省は、29年後にネット・ゼロを達成するための経済負担は累積で1.4兆ポンド(=210兆円)という試算を示している。
議員たちは、政府ができるだけ早く計画を発表し、ネット・ゼロのコストを心配する一般家庭にとっての意味を説明しなければ反発を招く、とした。
特に、ガソリン車の廃止やガスボイラーの禁止などの対策にかかる費用は、社会全体に公平に分配されるべきだと警告した。
ジョンソン首相はネット・ゼロを達成することは「非常に難しい」と述べている。その一方で、「わが政権は家庭の料金支払いが増えることはしない、それは最優先事項だ」と述べている。
日本の野党も、脱炭素の経済負担について政権に問い糾して、国民の生活を守る義務があるのではないか?
■

関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 以前、IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあった
-
「トンデモ本」というのを、ご存じだろうか。著者の思い込み、無知などによる、とんでもない話を書いた本の呼び方だ。「日本トンデモ本大賞」というものもあり、20年前の第1回は、「ノストラダムス本」が受賞している。当時、かなりの人が1999年7月に人類は滅亡するという、このトンデモないこじつけの予言を信じていた。2011年は大川隆法氏の『宇宙人との対話』が選定されている。
-
政府は電力改革、並びに温暖化対策の一環として、電力小売事業者に対して2030年の電力非化石化率44%という目標を設定している。これに対応するため、政府は電力小売り事業者が「非化石価値取引市場」から非化石電源証書(原子力、
-
3月11日に行われた日本自動車工業会の記者会見で、豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は「今のまま2050年カーボンニュートラルが実施されると、国内で自動車は生産できなくなる」と指摘した。キーワードはライフサイクルアセスメン
-
気候変動対策を巡る議論は、IPCC報告書や各種の「気候モデル」が示す将来予測を前提として展開されている。しかし、その根拠となる気候モデルは、科学的厳密性を装いながらも、実は数々の構造的な問題点と限界を抱えている。 本稿で
-
東日本大震災から、3月11日で1年が経過しました。復興は次第に進んでいます。しかし原発事故が社会に悪影響を与え続けています。
-
2012年6月15日に衆議院において原子力規制委員会法案が可決された。独立性の強い行政機関である「三条委員会」にするなど、政府・与党民主党案を見直して自民党および公明党の修正案をほぼ丸呑みする形で法案は成立する見通しだ。本来の政府案よりも改善されていると見てよいが、問題は人選をはじめ実質的な中身を今後どのように構成し、構成員のコンピテンシーの実をたかめていくかである。このコラムでは、福島原発事故のような原子力災害を繰り返さないために、国民の安全を守る適切な原子力規制機関の姿を考察する。
-
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ドイツがロシアからガスを輸入し続けていることを激しく非難し続けている。 ただ現実には、ロシアのガスは今もなおウクライナ経由の陸上パイプラインを通って西に向かって流れている。しかも、4月1
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間