2030年SDGsは必ず未達に終わる
SDGsの前身は2000年に国連で採択されたMDGs(Millennium Development Goals、ミレニアム開発目標)です。2015年を最終年とし、貧困や乳児死亡率の削減、環境問題など8分類21項目を掲げた世界目標でした。当時、筆者も必死にMDGsを勉強して自社で貢献できることを考えていました。このMDGsが未達に終わったことを受けて、ポストMDGsとして今をときめくSDGsが誕生したのです。今度は17分類169項目もあります。読むだけで大変な分量です。

metamorworks/iStock
さて、SDGsの目標達成年である2030年の未来を想像してみます。SDGsは必ず未達に終わります(ここだけは想像ではなく、断言します)。すると2031年以降に「ポストSDGs」が生まれるはずです。企業のサステナビリティ担当者や学生は、また勉強し直さなければなりません。企業では、自社の活動とSDGs17分類との関連付け(SDGsタグ付け)もポストSDGsタグ付けとしてやり直しです。ポストSDGsコンサルタント(元CSRコンサルタント、元SDGsコンサルタント、元ESGコンサルタント)たちは「新たな世界目標ができました!」「日本企業は遅れています!」「バスに乗り遅れるな!」と言って企業を煽っている姿が目に浮かびます。
ポストSDGsの目標は果たして何項目になっているでしょうか。200項目?300項目?分量が多いほど、内容が難解なほど、そしてクライアントに成果や付加価値が現れないほど、ポストSDGsコンサルタントは儲かり、サステナブルなビジネスになります。さらにその先の未来である2045年、もしくは2050年にポストSDGsの最終年を迎え、また未達に終わります(ここだけは想像ではなく、断言します)。するとその翌年には「ポストポストSDGs」が現れ、ポストポストSDGsコンサルタントはまた日本企業に対して……以下略。
6年以上CSR・サステナビリティ部門に携わっている方であれば、この「MDGs(未達)→SDGs」の流れはよくご存じだと思います。他にも、「京都議定書(未達)→パリ協定」は有名です。「生物多様性2010年目標(未達)→愛知目標(未達)→ポスト愛知目標(2021年現在議論中)」をご存知の方は生物多様性の分野について詳しい方ですね。「環境報告書→CSR報告書→統合報告書、サステナビリティ報告書」は情報開示の変遷です。では「SRIとESG投資」「環境会計と自然資本会計」「SDGsとESDとESG」「A4SとGRIとIIRCとSASBとTCFD」の違いや関係を説明できる人が果たして何人いるでしょうか(略語の説明は省略します。詳しくはSDGsコンサルにお問い合わせください)。
事程左様に、企業に対する環境・CSR分野の要求は手を変え品を変え目先を変えることが繰り返されてきました。企業自身が取り組んでよかった、付加価値があったと振り返れるものがいくつあったでしょうか。歴史は繰り返します。欧米出羽守やコンサルタント発の喧騒に対して右顧左眄のCSR・サステナビリティ経営はそろそろ止める時期です。
■

関連記事
-
人形峠(鳥取県)の国内ウラン鉱山の跡地。日本はウランの産出もほとんどない 1・ウラン資源の特徴 ウラン鉱床は鉄鉱石やアルミ鉱石などの鉱床とは異なり、その規模がはるかに小さい。ウラン含有量が20万トンもあれば
-
原発事故をきっかけに、日本のエネルギーをめぐる状況は大きく変わった。電力価格と供給の安定が崩れつつある。国策として浮上した脱原発への対応策として、電力会社は「ガスシフト」を進める。しかし、その先行きは不安だ。新年度を前に、現状を概観するリポートを提供する。
-
我が国の2030年度の温室効果ガスの削減目標について、2050年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、2013年度から46%削減を目指すこと、さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていきます。トップレベルの
-
「2030年までにCO2を概ね半減し、2050年にはCO2をゼロつまり脱炭素にする」という目標の下、日米欧の政府は規制や税を導入し、欧米の大手企業は新たな金融商品を売っている。その様子を観察すると、この「脱炭素ブーム」は
-
政府のエネルギー・環境会議による「革新的エネルギー・環境戦略」(以下では「戦略」)が決定された。通常はこれに従って関連法案が国会に提出され、新しい政策ができるのだが、今回は民主党政権が残り少なくなっているため、これがどの程度、法案として実現するのかはわからない。2030年代までのエネルギー政策という長期の問題を1年足らずの議論で、政権末期に駆け込みで決めるのも不可解だ。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告には地球の平均気温がぐんぐん上昇しているとい
-
未来の電力システムの根幹を担う「スマートメーター」。電力の使用情報を通信によって伝えてスマートグリッド(賢い電力網)を機能させ、需給調整や電力自由化に役立てるなど、さまざまな用途が期待されている。国の意向を受けて東京電力はそれを今年度300万台、今後5年で1700万台も大量発注することを計画している。世界で類例のない規模で、適切に行えれば、日本は世界に先駆けてスマートグリッドを使った電力供給システムを作り出すことができる。(東京電力ホームページ)
-
地球温暖化の原因は大気中のCO2の増加であるといわれている。CO2が地表から放射される赤外線を吸収すると、赤外線のエネルギーがCO2の振動エネルギーに変換され、大気のエネルギーが増えるので、大気の温度は上がるといわれてい
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間