ESG投資がインデックス投資よりもCO2を排出?

Funtap/iStock
11月24日付Bloombergに「Top-Selling Climate Funds Fail to Deliver on Carbon Emissions」という記事が出ていました。以下、要約します。
Investment Metrics社のレポートによると、欧州で最も売れている気候変動ファンド7本のうち4本は、北米、欧州、アジア太平洋地域の1600以上の大企業を対象としたMSCIワールド・インデックスよりも、炭素排出量への影響が大きい。
今回の調査結果は、気候変動を焦点にする投資家が、二酸化炭素排出量の削減を目的としたファンドを選択する際に直面する困難を強調している。
ESG投資商品の普及に伴い、ラベリングに関する疑問も生じている。 倫理的な投資を誇張して主張したり、誤解を招いたりする「グリーンウォッシュ」への懸念が高まっている。
筆者が6月4日にGEPRで公開し、9月16日に発売された『SDGsの不都合な真実 「脱炭素」が世界を救うの大嘘』(宝島社)にも書いた内容を裏付けるニュースが出始めたようです。
「実はあんまり普通の投資と変わらないESG投資の実態」(GEPR2021年6月4日)より引用。
私が機関投資家の立場であれば、<例2><例3>のケース(※)でどちらかを銘柄として選ぶことはできません。さらに、ここでは同じ業種としましたがこれが別の業種(製造業と小売業、サービス業など)の場合や、同じエネルギー使用量でも立地地域や国によって電力のCO2排出係数が異なる場合など、現実の企業比較ではますます複雑な条件が重なります。
(※)CO2排出量だけでなく、従業員一人当たりや売上高単位当たりなど企業規模を勘案したり、CO2排出量の経年推移も比較したケースのこと。詳細はリンク先を参照。
まず収益性や成長性などを基にしたユニバース(母集団)があって、そこにESGという多少のスクリーニング要素を加えているだけなので、「ESG投資」と言い換えるほどの違いはないのです。「ESG投資市場が急拡大」「ESG投資商品が従来の投資商品をアウトパフォーム」といった報道がかまびすしいのですが、実態は従来の投資商品と大して違いません。
『SDGsの不都合な真実 「脱炭素」が世界を救うの大嘘』154頁より引用。
従来の投資商品とESG投資商品に本質的な違いはない。ESG 投資と謳っている投資商品の公開目論見書や構成銘柄の一部を見れば、誰もが知る大企業がずらりと並んでいるだけだ。
今後もこうしたESG投資の実態が表に出てくることで、ESGに特化したアンケートや投資家説明会、エンゲージメントなど企業側に強いられている不毛な業務が削減されることを期待します。
■
関連記事
-
以前、海氷について書いたが、今回は陸上の氷河について。 6000年前ごろは、現代よりもずっと氷河が後退して小さくなっていた(論文、紹介記事)。 氷河は山を侵食し堆積物を残すのでそれを調査した研究を紹介する。対象地点は下図
-
筆者は数年前から「炭素クレジット・カーボンオフセットは本質的にグリーンウォッシュ」と主張してきました。具体的な問題点についてはこちらの動画で整理していますのでぜひご覧ください。 さて、ここ半年ほどESGコンサルや金融機関
-
「世界で遅れる日本のバイオ燃料 コメが救世主となるか」と言う記事が出た。筆者はここでため息をつく。やれやれ、またかよ。バイオ燃料がカーボンニュートラルではないことは、とうの昔に明らかにされているのに。 この記事ではバイオ
-
原子力規制委員会は、日本原電敦賀2号機について「重要施設の直下に活断層がある」との「有識者調査」の最終評価書を受け取った。敦賀2号機については、これで運転再開の可能性はなくなり、廃炉が決まった。しかしこの有識者会合なるものは単なるアドバイザーであり、この評価書には法的拘束力がない。
-
先日、「国際貿易投資ガバナンスの今後」と題するラウンドテーブルに出席する機会があった。出席者の中には元欧州委員会貿易担当委員や、元USTR代表、WTO事務局次長、ジュネーブのWTO担当大使、マルチ貿易交渉関連のシンクタンク等が含まれ、WTOドーハラウンド関係者、いわば「通商交渉部族」が大半である。
-
古野真 350.org Japan代表 石炭発電プラント(カナダ、Wikipediaより) (GEPR編集部より) 投稿原稿を掲載します。GEPRは、石炭火力の使用増加は環境配慮をすればやむを得ないという立場の意見を紹介
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 今回からIPCC報告の冒頭にある「政策決定者向け要約」を
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














