IPCC報告の論点㊴:大雨はむしろ減っているのではないか

2022年02月01日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

IPCCの報告が昨年8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。

Mac99/iStock

大雨についてはこのシリーズでも何度か書いてきたが、今回は、大雨はむしろ減っているというデータ(論文紹介記事)。

図は、陸地全体の平均の大雨日数(赤)および地球全体の平均の大雨日数(緑)である。ここで大雨の指標として縦軸には月あたりの日量20mm以上の降水日数をとっている。例えば縦軸が1ならば月に1回だけ20mm以上の雨が降ったという意味になる。データ出所は米国の気象庁(NOAA)のデータセット。

これを見ると、とくに21世紀に入ってから、大雨はむしろ減少傾向にある。

地球温暖化で大雨が増えるという説があるが、はて、このデータと整合性はあるのだろうか。

1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

【関連記事】
IPCC報告の論点①:不吉な被害予測はゴミ箱行きに
IPCC報告の論点②:太陽活動の変化は無視できない
IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱行きに
IPCC報告の論点④:海はモデル計算以上にCO2を吸収する
IPCC報告の論点⑤:山火事で昔は寒かったのではないか
IPCC報告の論点⑥:温暖化で大雨は激甚化していない
IPCC報告の論点⑦:大雨は過去の再現も出来ていない
IPCC報告の論点⑧:大雨の増減は場所によりけり
IPCC報告の論点⑨:公害対策で日射が増えて雨も増えた
IPCC報告の論点⑩:猛暑増大以上に酷寒減少という朗報
IPCC報告の論点⑪:モデルは北極も南極も熱すぎる
IPCC報告の論点⑫:モデルは大気の気温が熱すぎる
IPCC報告の論点⑬:モデルはアフリカの旱魃を再現できない
IPCC報告の論点⑭:モデルはエルニーニョが長すぎる
IPCC報告の論点⑮:100年規模の気候変動を再現できない
IPCC報告の論点⑯:京都の桜が早く咲く理由は何か
IPCC報告の論点⑰:脱炭素で海面上昇はあまり減らない
IPCC報告の論点⑱:気温は本当に上がるのだろうか
IPCC報告の論点⑲:僅かに気温が上がって問題があるか?
IPCC報告の論点⑳:人類は滅びず温暖化で寿命が伸びた
IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
IPCC報告の論点㉒:ハリケーンが温暖化で激甚化はウソ
IPCC報告の論点㉓: ホッケースティックはやはり嘘だ
IPCC報告の論点㉔:地域の気候は大きく変化してきた
IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
IPCC報告の論点㉖:CO2だけで気温が決まっていた筈が無い
IPCC報告の論点㉗:温暖化は海洋の振動で起きているのか
IPCC報告の論点㉘:やはりモデル予測は熱すぎた
IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあったのか
IPCC報告の論点㉚:脱炭素で本当にCO2は一定になるのか
IPCC報告の論点㉛:太陽活動変化が地球の気温に影響した
IPCC報告の論点㉜:都市熱を取除くと地球温暖化は半分になる
IPCC報告の論点㉝:CO2に温室効果があるのは本当です
IPCC報告の論点㉞:海氷は本当に減っているのか
IPCC報告の論点㉟:欧州の旱魃は自然変動の範囲内
IPCC報告の論点㊱:自然吸収が増えてCO2濃度は上がらない
IPCC報告の論点㊲:これは酷い。海面の自然変動を隠蔽
IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化

「15歳からの地球温暖化」

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 電力自由化は、送電・配電のネットワークを共通インフラとして第三者に開放し、発電・小売部門への新規参入を促す、という形態が一般的な進め方だ。電気の発電・小売事業を行うには、送配電ネットワークの利用が不可欠であるので、規制者は、送配電ネットワークを保有する事業者に「全ての事業者に同条件で送配電ネットワーク利用を可能とすること」を義務付けるとともに、これが貫徹するよう規制を運用することとなる。これがいわゆる発送電分離である。一口に発送電分離と言ってもいくつかの形態があるが、経産省の電力システム改革専門委員会では、以下の4類型に大別している。
  • 既にお知らせした「非政府エネルギー基本計画」の11項目の提言について、3回にわたって掲載する。今回は第3回目。 (前回:非政府エネ基本計画②:太陽光とEVは解答ではない) なお報告書の正式名称は「エネルギードミナンス:強
  • 東日本大震災と原発事故災害に伴う放射能汚染の問題は、真に国際的な問題の一つである。各国政府や国際機関に放射線をめぐる規制措置を勧告する民間団体である国際放射線防護委員会(ICRP)は、今回の原発事故の推移に重大な関心を持って見守り、時機を見て必要な勧告を行ってきた。本稿ではこの間の経緯を振り返りつつ、特に2012年2月25-26日に福島県伊達市で行われた第2回ICRPダイアログセミナーの概要と結論・勧告の方向性について紹介したい。
  • 前橋地裁判決は国と東電は安全対策を怠った責任があるとしている 2017年3月17日、前橋地裁が福島第一原子力発電所の原発事故に関し、国と東電に責任があることを認めた。 「東電の過失責任」を認めた根拠 地裁判決の決め手にな
  • さまよえる使用済み燃料 原子力の中間貯蔵とは、使用済み核燃料の一時貯蔵のことを指す。 使用済み燃料とはその名称が示す通り、原子炉で一度使用された後の燃料である。原子炉の使用に伴ってこれまでも出てきており、これからも出てく
  • (前回:温室効果ガス排出量の目標達成は困難①) 田中 雄三 トレンドで見る発展途上国のGHG削減 世界銀行の所得分類 GHG排出量に関するレポートは、排出量が多い国に着目したものが一般的ですが、本稿では、国の豊かさとの関
  • 発送電分離、地域独占を柱とする電力システム改革の見直しが検討されています。6月の国会では、審議未了によって廃案になりましたが、安倍内閣は再提出の意向です。しかし、実施によって、メリットはあるのでしょうか。
  • かつて省エネ政策を取材したとき、経産省の担当官僚からこんなぼやきを聞いたことがある。「メディアの人は日本の政策の悪い話を伝えても、素晴らしい話を取材しない。この仕事についてから日本にある各国の大使館の経済担当者や、いろんな政府や国際機関から、毎月問い合わせの電話やメールが来るのに」。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑