米国政府の現実的で脱炭素全否定のエネルギー予測

TatyanaMishchenko/iStock
この3月に米国エネルギー省(DOE)のエネルギー情報局(EIA)が米国のエネルギー予測「Annual Energy Outlook」(AEO)を発表した(AEOホームページ、解説記事)。
この予測で最も重視されるのは、現状の政策と、もっともありそうな将来の技術・価格に基づいた「参照ケース」の計算だ。
次いで、経済成長率、石油価格、再エネ価格などについて、現実的な範囲での感度分析が行われている。
もっともオーソドックスな予測方法だ。かつては日本でもプロはみんなこうやっていた。
最近、2050年にCO2をゼロにする「脱炭素」という、夢物語のような「予測」が世界中に溢れかえっている。
だがこの予測は、全く惑わされていない。さすが、米国エネルギー省のプロたちだ。
「参照ケース」では、天然ガス生産も、石油生産も、2050年になってもガンガン続く。自動車も、殆どがガソリン車のままだ。
さて一方で、バイデン政権は2030年にCO2半減、2050年にCO2ゼロと宣言している。
どちらの予測を信じますか?
■

関連記事
-
自民党は「2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減する」という政府の目標を了承したが、どうやってこの目標を実現するのかは不明だ。経産省は原子力の比率を20~22%にする一方、再生可能エネルギーを22~24%にするというエネルギーミックスの骨子案を出したが、今のままではそんな比率は不可能である。
-
いま東芝をたたくのは簡単だ。『東芝解体』のように正義漢を気取って、結果論で東芝を批判するのは誰でもできる。本書のタイトルはそういうきわものに見えるが、中身は10年近い取材の蓄積をもとにしている。テーマは経営陣の派閥抗争な
-
欧州委員会は1月1日、持続可能な経済活動を分類する制度である「EUタクソノミー」に合致する企業活動を示す補完的な委任規則について、原子力や天然ガスを含める方向で検討を開始したと発表した。 EUタクソノミーは、EUが掲げる
-
アメリカのトランプ大統領が、COP(気候変動枠組条約締約国会議)のパリ協定から離脱すると発表した。これ自体は彼が選挙戦で言っていたことで、驚きはない。パリ協定には罰則もないので、わざわざ脱退する必要もなかったが、政治的ス
-
パリ気候協定への2035年の数値目標の提出期限は2月10日だったのだが、ほとんどの国が間に合っていない。期限に間に合った先進国は、米国、スイス、英国、ニュージーランドの4か国だけ。ただしこの米国は、バイデン政権が約束した
-
政策アナリストの6月26日ハフィントンポストへの寄稿。以前規制委員会の委員だった島崎邦彦氏が、関電の大飯原発の差し止め訴訟に、原告の反原発運動家から陳述書を出し、基準地震動の算定見直しを主張。彼から規制委が意見を聞いたという内容を、批判的に解説した。原子力規制をめぐる意見表明の適正手続きが決められていないため、思いつきで意見が採用されている。
-
きのうのアゴラシンポジウムでは、カーボンニュートラルで製造業はどうなるのかを考えたが、やはり最大の焦点は自動車だった。政府の「グリーン成長戦略」では、2030年代なかばまでに新車販売の100%を電動車にすることになってい
-
「海面が上昇する」と聞くと、地球温暖化を思い浮かべるかもしれない。しかし、地下水の過剰な汲み上げなどにより地盤が下がる「地盤沈下」によっても、海面上昇と類似の現象が生じることは、あまり知られていない。 2014年に公開さ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間