小学生にも計算できるカーボンハーフで何度下がるか

2022年10月11日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

東京都が「カーボンハーフ」を掲げている(次々とカタカナのキャッチフレーズばかり増えるのは困ったものだ)。「2030年までCO2を半減する」という計画だ。ではこれで、いったいどのぐらい気温が下がり、大雨の雨量が減るのか、計算してみた。

簡単な比例計算なので、小学生の算数の問題風にしてみました。小学校の先生は、ぜひ、本当にテスト問題にしてください!・・・東京都関係者におかれては、このぐらいの計算は自分で全て出来るようになるべし。

NicoElNino/iStock

【問題】

東京都は2030年までに、CO2排出量を2000年の半分にする計画です。この計画を「カーボンハーフ」と呼んでいます。2000年の東京都のCO2排出量は5775万トンでした。

  1. 2000年のまま2030年までCO2の排出量を横ばいにした場合に比べて、2030年までに、カーボンハーフによって、累積のCO2排出量はどのぐらい減るか計算しなさい。なお2000年から2030年までの間、毎年の排出量は同量ずつ削減されてゆくと仮定します。
  2. カーボンハーフによって、地球の気温は何度下がるでしょうか。CO2の累積の排出量に比例して地球の気温は上昇するとして、CO2が1兆トン排出されると地球の気温がo.5℃上がると仮定して計算しなさい。
  3. カーボンハーフをしない場合に2030年において1日に100ミリの大雨があるとして、カーボンハーフをすることで、この大雨の降水量は何ミリ減るでしょうか。1℃の気温上昇によって、大雨の雨量は6%増加すると仮定して計算しなさい。
  4. (発展問題)カーボンハーフによる気温や大雨の変化は大きいですか、小さいですか。考えられる理由を書きなさい。

【式】

  1. カーボンハーフによる累積のCO2の削減量を計算します。
    カーボンハーフをしない場合のCO2の排出量は、5775万トン×31=17.9億トンです。
    カーボンハーフにする場合のCO2の排出量は、5775万トン×31×3÷4=13.4億トンです。
    カーボンハーフにする場合のCO2の削減量は差し引き5775万トン×31×1÷4=4.48億トンです。
  2. 気温の低下は 4.48×0.5÷10000=0.00022℃です。
  3. 100ミリの大雨の雨量の減少は、100×0.00022×0.06=0.0013ミリです。

【答え】

  1. 4.5億トン、
  2. 0.00022℃、
  3. 0.0013ミリ
  4. カーボンハーフによる気温や大雨の変化は小さいです。カーボンハーフによる気温の変化が小さい理由は、地球温暖化は起きるといっても1兆トンのCO2排出に対してo.5℃と僅かであること、および、東京のCO2排出量は世界のCO2排出量に比べて僅かであるからです。カーボンハーフによる降水量の変化が小さい理由は、気温の変化が小さいことに加えて、降水量の変化も1℃あたりで6%と小さいためです。

(※ なお答えは四捨五入して有効数字2桁までとしました)

【解説】

1. 東京都の排出量についての資料を以下に示す:

2. 累積のCO2排出量と地球の気温上昇の関係はIPCCの図から読みとることが出来る。下図で、横軸が累積のCO2排出量、縦軸が気温上昇。右肩上がりの比例関係になっていて、横軸が1000GtCO2、つまり1兆トンCO2のときに、縦軸は0.5℃程度になっている。

FIGURE 2.3 Temperature changes from 1850–1900 versus cumulative CO2 emissions since 1st January 1876.
出典:IPCC

3. 気温上昇と降水量増大の関係についてはクラウジウスクラペイロン関係を仮定した。

なおこの概算方法についてさらに詳しい解説は下記をご覧ください。

【研究ノート】CO2の削減によって、気温は何度下がり、豪雨は何ミリ減ったのか、簡単に概算する方法――再エネ大量導入の例

キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。

 

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 国の予算の使い方が、今批判を集めている。国の活動には、民間と違って、競争、市場による制約がないため、予算の無駄が生まれやすい傾向があることは確かだ。
  • ここ数回、本コラムではポストFIT時代の太陽光発電産業の行方について論考してきたが、今回は商業施設開発における自家発太陽光発電利用の経済性について考えていきたい。 私はスポットコンサルティングのプラットフォームにいくつか
  • 脱原発が叫ばれます。福島の原発事故を受けて、原子力発電を新しいエネルギー源に転換することについて、大半の日本国民は同意しています。しかし、その実現可能な道のりを考え、具体的な行動に移さなければ、机上の空論になります。東北芸術工科大学教授で建築家の竹内昌義さんに、「エコハウスの広がりが「脱原発」への第一歩」を寄稿いただきました。竹内さんは、日本では家の断熱効率をこれまで深く考えてこなかったと指摘しています。ヨーロッパ並みの効率を使うことで、エネルギーをより少なく使う社会に変える必要があると、主張しています。
  • 読売新聞
    6月25日記事。バイデン副大統領が、米国でのインタビューで、習近平中国国家主席に、このような警告をしたと発言した。もちろん本音は中国への牽制だろうが、米国の警戒感もうかがえる。
  • 電気代が高騰している。この理由は3つある。 反原発、再エネ推進、脱炭素だ。 【理由1】原子力の停止 原子力発電を運転すれば電気代は下がる。図1と表1は、原子力比率(=供給される全電力に占める原子力発電の割合)と家庭用電気
  • 菅首相が昨年末にCO2を2050年までにゼロにすると宣言して以来、日本政府は「脱炭素祭り」を続けている。中心にあるのは「グリーン成長戦略」で、「経済と環境の好循環」によってグリーン成長を実現する、としている(図1)。 そ
  • 元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 前回書ききれなかった論点を補足したい。現在の日本政府による水素政策の概要は、今年3月に資源エネルギー庁が発表した「今後の水素政策の課題と対応の方向性 中間整理(案)」という資料
  • トランプ政権のエネルギー温暖化対策やパリ協定への対応に関し、本欄で何度か取り上げてきたが[注1]、本稿では今年に入ってからのトランプ政権の幹部人事の影響について考えて見たい。 昨年半ば、米国がパリ協定に残留するか否かが大

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑