国連幹部の”We own the science”発言のおぞましさ

LewisTsePuiLung/iStock
最近、私の周辺で「国連の幹部の発言」が話題となりました。
NEW – UN Secretary for Global Comms says they "own the science" on "climate change," and opposing viewpoints have now been pushed down in search results through their partnership with Google.pic.twitter.com/fMaPYsHGUT
— Disclose.tv (@disclosetv) October 2, 2022
この動画は、9月下旬に開催された世界経済フォーラム(WEF)の「持続可能な開発インパクト会議」に出席した、国連グローバルコミュニケーション担当事務次長メリッサ・フレミングの発言です。
「Tackling Disinformation(偽情報への取り組み)」と題されたパネルに登壇したフレミング氏は、気候変動とCOVID-19について、グローバルエリートが「科学を支配」しており、国連が、Googleなどのソーシャルメディア大手と謀って、「誤報」とみなされるすべての言動を弾圧している事実を語っています。
動画を聞いてみると、次の3点が語られています。
- 国連が「気候変動」でググると、信じられないほど歪んだ情報がトップに出てきてショックを受けた。
- これは不味いと思って、Googleとパートナーシップを結んで、検索結果リストの上位に国連の発信している情報が並ぶよう変更してもらった。
- 気候変動に関する科学は国連のもの(own)である。
You Tubeによれば、フレミング氏の話は「世界中の科学者などをインフルエンサーとして訓練し、TikTokなどを活用するTeam Haloプロジェクト」にまで及んでいます。
言い換えれば、世界で最も強力な国際機関の一つである国連は、「自分たちが気候変動の科学に関する最高権威であり、国連のナラティブを実現させるために、完全に沈黙させないまでも、反対意見を確実に封じ込める事を決めた」という事らしいのです。
言論の自由と科学的方法を信じる者にとって、これらのコメントは背筋を凍らせるほどショックを与えるものです。おぞましく感じる方も多いのではないでしょうか。
twitterコメント欄には、Democratic DictatorshipやGeorge Orwellなどの単語が散見されます。
オーウェルといえば、「1984」の他に「Animal Farm」も有名です。そこには「すべての動物は平等だが、ある動物は他の動物より平等である」という下りがあります。恰も、世界は「すべての言論は平等だが、ある言論は他の言論より平等である」とでも主張しているようです。
また、「Tackling Disinformation」パネルのモデレーターを務めたのは、WEF幹部のモンク氏でしたが、気候変動やCOVID-19などの社会的課題については、「誰がナラティブを所有するかという政治戦争」の真っただ中にあると強調していました。
仮に、「科学を所有し」、情報の流れをコントロールしようとする欲求が他の領域にも展開されるなら、もはや自由な社会とは言えません。
長らく、国連の官僚化、肥大化、非効率さなどが指摘されて来ました。今回、国連改革(解体を含む)を断行する新しい理由が見つかったような気がします。我が国も、国連との関係を見直すべき時にきているのではないでしょうか。

関連記事
-
「もんじゅ」以降まったく不透明なまま 2016年12月に原子力に関する関係閣僚会議で、高速原型炉「もんじゅ」の廃止が決定された。それ以来、日本の高速炉開発はきわめて不透明なまま今に至っている。 この関係閣僚会議の決定では
-
はじめに:なぜ気候モデルを問い直すのか? 地球温暖化対策の多くは、「将来の地球がどれほど気温上昇するか」というシミュレーションに依存している。その根拠となるのが、IPCCなどが採用する「気候モデル(GCM=General
-
今回も、いくつか気になった番組・報道についてコメントしたい。 NHK BS世界のドキュメンタリー「デイ・ゼロ 地球から水がなくなる日」という番組を見た。前半の内容は良かった。米国・ブラジルなど水資源に変化が現れている世界
-
「持続可能な発展(Sustainable Development)」という言葉が広く知られるようになったのは、温暖化問題を通してだろう。持続可能とは、簡単に言うと、将来世代が、我々が享受している生活水準と少なくとも同レベル以上を享受できることと解釈される。数字で表すと、一人当たり国内総生産(GDP)が同レベル以上になるということだ。
-
経産省が、水素・アンモニアを非化石エネルギー源に位置づけるとの報道が出た。「製造時にCO2を排出するグレー水素・アンモニアも、燃焼の瞬間はCO2を出さないことから非化石エネルギー源に定義する」とか。その前にも経産省は22
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPRはサイトを更新しました。
-
前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。 ■ 「要約」に環境影響についての観測の統計が図表で提示されていないのはおかしい、と指摘したが、唯一あったのはこれだ(図TS.6)。 これは、気候
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間