英国スターン報告書のハズレた温暖化被害予測

ThomasVogel/iStock
英国で2007年に発表されたスターン氏による「スターン・レビュー」と言う報告書は、地球温暖化による損害と温暖化対策としてのCO2削減の費用を比較した結果、損害が費用を上回るので、急進的な温暖化対策が必要だと訴えた。
当時のメディアや政治、行政はこぞってこれを引用して温暖化対策を訴えた。
だがその地球温暖化の損害の予測は正しかったのか? ロジャー・ピールキー・ジュニアが検証している。
図1はスターン報告書における気候関連の被害の金額の予測(グレー)と、統計の実績値(黒)の比較。破線はトレンド線。単位はGDPあたりの金額で、対象は世界全体。
スターンの予測では被害は増大するはずだったが、実績では被害は増大していない。

図1
図2は同じものを2050年までの予測を含めて示したもの。

図2
以前この連載でも書いたように、これまでのところ、台風やハリケーンの激甚化など一切起きていない。したがってGDPあたりの被害が増えていないことも、ごく当たり前のことだ。
スターン報告書は、少なくともこれまでのところ、「気候変動による損害」の増加を過大に見積もっていたようだ。もちろん、だからといって将来についても外れているとは論理的には結論できないが、あまり鵜呑みにすべきでないことも確かだろう。
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。
関連記事
-
気候関係で有名なブログの一つにClimate4youがある。ブログ名の中の4が”for”の掛詞だろうとは推測できる。運営者のオスロ大学名誉教授Ole Humlum氏は、世界の気候データを収集し整理して世に提供し続けている
-
CO2を多く排出するとして、ここのところ先進国ではバッシングを受けている石炭事業だが、世界には多くの炭鉱開発計画がある。 最近出た環境団体グローバル・エナジー・モニターの報告によると、世界で提案されている新しい炭鉱開発事
-
1.太陽光発電業界が震撼したパブリックコメント 7月6日、太陽光発電業界に動揺が走った。 経済産業省が固定価格買取制度(FIT)に関する規則改正案のパブリックコメントを始めたのだが、この内容が非常に過激なものだった。今回
-
ニューヨークタイムズとシエナ大学による世論調査(7月5日から7日に実施)で、「いま米国が直面している最も重要な問題は?」との問いに、気候変動と答えたのは僅か1%だった。 上位は経済(20%)、インフレ(15%)、政治の分
-
有馬純 東京大学公共政策大学院教授 今回のCOP25でも化石賞が日本の紙面をにぎわした。その一例が12月12日の共同通信の記事である。 【マドリード=共同】世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」は11日、地球温暖
-
CO2濃度が増加すると海洋が「酸性化」してサンゴ礁が被害を受けるという意見があり、しばしば報道されている。 サンゴは生き物で、貝のように殻を作って成長するが、海水中のCO2濃度が高まって酸性化してpHが低くなると、その殻
-
政府は脱炭素政策を進めているが、電気料金がどこまで上がるかを分かりやすい形で公表していない。本稿では、公開資料を元に具体的に何円になるのか計算してみよう。 日本の電気料金は東日本大震災以降、大幅に上昇してきた(図1)。
-
ユダヤ人は祈りのときにヒラクティリーという帽子をかぶる。そこから出た紐が右手と左手に結ばれる。右手はユダヤでは慈愛を象徴し「あなたの行いが慈愛に満ちるように、そしてそれが行き過ぎないように」、左手は正義を象徴し「あなたが正義を振りかざしすぎないように」という意味を込めているそうだ。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間


















