トランプの公約②:パリ協定は離脱しエネルギードミナンスを達成する
「もしトランプ」が大統領になったら、エネルギー環境政策がどうなるか、これははっきりしている。トランプ大統領のホームページに動画が公開されている。
全47本のうち3本がエネルギー環境に関することだから、トランプ政権はこの問題を重要視していることが分かる。今回は第2回目。
(前回:トランプの公約①:アメリカの光熱費を世界一安くする)
【動画】トランプ大統領、アメリカを再びエネルギー自立させるために
一言でポイントを述べると、「バイデンのグリーンディールは米国経済を痛めつけ中国を利している。パリ協定は離脱する。気候が破局するという政治的な予測に怯えることなく、アメリカのエネルギーを復活させる」ということだ。
以下、演説の抄訳を付けておこう:
ジョー・バイデンによるアメリカのエネルギー戦争は、過去58年間で最悪のインフレを引き起こした主な要因のひとつであり、アメリカの各家庭に大きな打撃を与えている。バイデンは、エネルギー自給、そしてやがては世界でのエネルギードミナンス(優勢)を達成するために私がとった行動をことごとく覆した。
彼はキーストーンXLパイプラインをキャンセルし、米国にとっては不公平で、他国にとっては好都合で、我々にとっては不都合な、恐ろしいパリ協定に再び参加した。彼は、石油、ガス、石炭の新規生産に巨大な障害物を設置した。
事実上、バイデンの反米エネルギー十字軍は、あらゆるものに対する大増税である。エネルギーコストが上がれば、食品、原材料、輸送、建設、製造、その他すべての価格が上がる。
ジョー・バイデンの急進的な左派グリーン・ニューディールによって、今最も恩恵を受けている国は中国である。アメリカのエネルギー価格の高騰は中国への贈り物であり、アメリカの重工業が海外に流出する大きな要因となっている。先進的な製造国になりたければ、低コストのエネルギーを生産できなければならない。それなくして豊かな国にはなれない。
そして、もし米国を非工業化したいのであれば、ジョー・バイデンが無意識のうちに行なってきたように、可能な限りエネルギーコストを引き上げようとするだろう。それは私には理解不能だ。
バイデンのエネルギー政策は中国のエネルギー政策なのだ。
だから中国は、あらゆる愚かなグローバリズムの気候変動協定にサインし、そしてすぐにそれを破るのだ。彼らは協定を守らない。私がホワイトハウスに戻ったら、必ずや親米的なエネルギー政策を復活させるだろう。
我々は再びパリから離脱する。そして、価格を急速に引き下げるため、最大限のスピードに焦点を当て、すべての価値あるエネルギー・インフラ・プロジェクトの承認を迅速に発行する。何千人ものアメリカ人を明日の発電所、パイプライン、送電網、港湾、製油所、出荷ターミナルの建設に従事させるのだ。ほんの2年半前のように、再び非常に安価なエネルギーが手に入るのだ。
この偉大な事業はまた、気候が破局するという政治的な予測に不合理に怯えるのではなく、アメリカの若者たちに希望と志を取り戻す助けとなるだろう。低賃金や左翼的なおざなりプロジェクトのために労働するのではなく、2年半前のように、アメリカの若者に本当の意味と仕事を見つけるチャンスを再び与え、力強く、豊かで、生産的で、活力にあふれ、近代的で、独立的で、自由なアメリカの屋台骨を築くビジョンを私は持っている。
トランプ次期政権の下で、我々は国として再び偉大になるだろう。アメリカの雇用とアメリカンドリームの復活は、アメリカのエネルギーの復活によってもたらされる。
アメリカほど足下に豊かな資源を蓄えている国はない。我々はそれを使い、利益を得て、それとともに生きていく。そして再び豊かになり、再び幸せになる。そして再び誇りに思うだろう。
■

関連記事
-
英国イングランド銀行が、このままでは気候変動で53兆円の損失が出るとの試算を公表した。日本でも日経新聞が以下のように報道している。 英金融界、気候変動で損失53兆円も 初のストレステスト(日本経済新聞) 英イングランド銀
-
筆者はかねがね、エネルギー・環境などの政策に関しては、科学的・技術的・論理的思考の重要さと有用性を強調してきたが、一方で、科学・技術が万能だとは思っておらず、科学や技術が人間にもたらす「結果」に関しては、楽観視していない
-
4月15-16日、札幌において開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合は共同声明を採択して閉幕した。 欧州諸国はパリ協定、グラスゴー気候合意を経てますます環境原理主義的傾向を強めている。ウクライナ戦争によってエネルギ
-
筆者は先月、「COP26はパリ協定の「終わりの始まり」」と題する本サイトに寄稿をしたが、COP26の会議・イベントが進められている中、視点を変えたPart2を論じてみたい。 今回のCOPは、国連の公式発表によれば、交渉官
-
直面する東京電力問題において最も大切なことは、1.福島第一原子力発電所事故の被害を受けた住民の方々に対する賠償をきちんと行う、2. 現在の東京電力の供給エリアで「低廉で安定的な電気供給」が行われる枠組みを作り上げる、という二つの点である。
-
日本の国全体のエネルギーコストを毎月公表する慶応大学 野村教授のエネルギーコストモニタリング。 下図で、「電力コスト」とは家庭や企業の支払う電気代の合計。補助金などがあればその分下がる。(より詳しい説明はこちら) その電
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
「もんじゅ」の運営主体である日本原子力研究開発機構(原子力機構)が、「度重なる保安規定違反」がもとで原子力規制委員会(規制委)から「(もんじゅを)運転する基本的能力を有しているとは認めがたい」(昨年11月4日の田中委員長発言)と断罪され、退場を迫られた。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間