IEAの中国脱石炭という希望的予測は外れまくり

2024年12月23日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Sergei Chuyko/iStock

世界エネルギー機関(IEA)は毎年中国の石炭需要予測を発表している。その今年版が下図だ。中国の石炭消費は今後ほぼ横ばいで推移するとしている。

Coal2024より

ところでこの予測、IEAは毎年出しているが、毎年「今後の伸びは鈍化する」と言い続けてきた。だが現実には中国の石炭消費は増大し続けた。下図がうまくまとめているように、予測は大きく外れ続けた。

IEAは、もともとは、OPECに対抗してエネルギー安全保障のためにOECD諸国が設立した機関で、冷静に情報を分析する機関だった。それがここ数年、すっかり「脱炭素の運動を推進する機関」になってしまった。

本件もそうだけれど、IEAの出す「予測」なるものは、脱炭素運動家の希望的予測にすぎないものばかりになった。

ちなみに日本政府が推進するグリーントランスフォーメーション(GX)政策の正当化にも、しばしばIEAの資料が引き合いに出されているので要注意である。

こんなIEAは、もう要らない。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • おかしなことが、日本で進行している。福島原発事故では、放射能が原因で健康被害はこれまで確認されていないし、これからもないだろう。それなのに過剰な放射線防護対策が続いているのだ。
  • 資産運用会社の経営者でありながら、原子力行政の「非科学的」「不公正」な状況を批判してきた森本紀行HCアセットマネジメント社長に寄稿をいただきました。原子力規制委員会は、危険性の許容範囲の議論をするのではなく、不可能な「絶対安全」を事業者に求める行政を行っています。そして政治がこの暴走を放置しています。この現状を考える材料として、この論考は公平かつ適切な論点を提供しています。
  • 2023年12月にドバイで開催されたCOP28はパリ協定後、初めてのグローバルストックテイクを採択して閉幕した。 COP28での最大の争点は化石燃料フェーズアウト(段階的廃止)を盛り込むか否かであったが、最終的に「科学に
  • 国会は今、GX推進法の改正案を審議している。目玉は2026年度から本格稼働する予定の国内排出量取引制度(GX-ETS)の整備を進めることであり、与党は5月15日に採決する構えであると仄聞している。 日本政府は、排出量取引
  • 18世紀半ばから始まった産業革命以降、まずは西欧社会から次第に全世界へ、技術革新と社会構造の変革が進行した。最初は石炭、後には石油・天然ガスを含む化石燃料が安く大量に供給され、それが1960年代以降の急速な経済成長を支え
  • 「海面が上昇する」と聞くと、地球温暖化を思い浮かべるかもしれない。しかし、地下水の過剰な汲み上げなどにより地盤が下がる「地盤沈下」によっても、海面上昇と類似の現象が生じることは、あまり知られていない。 2014年に公開さ
  • スマートジャパン
    スマートジャパン 3月14日記事。環境省が石炭火力発電所の新設に難色を示し続けている。国のCO2排出量の削減に影響を及ぼすからだ。しかし最終的な判断を担う経済産業省は容認する姿勢で、事業者が建設計画を変更する可能性は小さい。世界の主要国が石炭火力発電の縮小に向かう中、日本政府の方針は中途半端なままである。
  • 以前、カリフォルニアで設置される太陽光パネルは、石炭火力が発電の主力の中国で製造しているので、10年使わないとCO2削減にならない、という記事を書いた。 今回は、中国で製造した太陽光パネルが日本に設置されるとどうなるか、

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑