IEAの中国脱石炭という希望的予測は外れまくり
世界エネルギー機関(IEA)は毎年中国の石炭需要予測を発表している。その今年版が下図だ。中国の石炭消費は今後ほぼ横ばいで推移するとしている。
ところでこの予測、IEAは毎年出しているが、毎年「今後の伸びは鈍化する」と言い続けてきた。だが現実には中国の石炭消費は増大し続けた。下図がうまくまとめているように、予測は大きく外れ続けた。
IEAは、もともとは、OPECに対抗してエネルギー安全保障のためにOECD諸国が設立した機関で、冷静に情報を分析する機関だった。それがここ数年、すっかり「脱炭素の運動を推進する機関」になってしまった。
本件もそうだけれど、IEAの出す「予測」なるものは、脱炭素運動家の希望的予測にすぎないものばかりになった。
ちなみに日本政府が推進するグリーントランスフォーメーション(GX)政策の正当化にも、しばしばIEAの資料が引き合いに出されているので要注意である。
こんなIEAは、もう要らない。
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