政府が見せない中国とインドは脱炭素していない図を公開します

Floriana/iStock
日本は2050年ネット・ゼロに向けて基準年(2013年)から直線的にCO2が減っている。日本政府はこのことを「着実に削減を進めている」と評価しており、環境大臣は直線に乗っていることを「オン・トラック」と発言している(図1)。
そして政府は、この日本の図を、G7諸国と比較している(図2)。それぞれの国が、個別に設定した基準年から2050年に向けて直線的にCO2を減らした場合(赤い点線)と、実績の排出量(黒い折れ線)が比較してある。
この図を見ると、日本以外のどの国も、「オン・トラック」ではないにせよ、まあまあCO2を減らしてそれなりにネット・ゼロに向かっているように見える。
だがこれは世界全体の趨勢などではない。
中国、インドについて同様な図を書くと、以下の様になる。図の見方はさきほどと同じである。中国は2060年、インドは2070年までにCO2をゼロにすることになっているが、排出量の実績はこれとはかけはなれている。

図3 中国、インドについての「排出削減の進捗状況」
出典:出典:筆者作成。排出量実績はOurWorldInData
この両国はいずれも、オン・トラックにはほど遠く、排出量は激増をしている。
しかも、これらの国はいずれも大排出国である。
だから、世界全体でみると、脱炭素に向かってなどいないのだ。
冒頭の図1や図2を見せるとき、日本政府はいつも先進国との比較しか見せない。だがこれだと全体像を見誤る。印象操作に騙されてはいけない。世界の動きは「ネット・ゼロ」「オン・トラック」などには程遠いのである。
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