世界最大の金融機関が融資先のCO2削減目標も撤回

JoeDunckley/iStock
英HSBCが自社の2030年ネットゼロ目標を撤回したことを今年2月に紹介しました。これ、いまだに日本の大手メディアではほとんど報じられていません。
英HSBC、ネットゼロ目標を撤回←日本語でも報道してください
HSBCは2030年までに事業全体で炭素排出量を実質ゼロにするという目標を断念すると発表した。世界最大の金融機関が気候変動対策の公約を撤回しているとして活動家らの間で懸念が高まっている。
あれから半年が経って、今週HSBCは石油・ガス部門など一部のセクターに対しても2030年ネットゼロ目標を撤回したようです。
HSBC softens near-term emissions targets for polluting sectors
HSBC、汚染セクターの短期的な排出量目標を緩和
HSBCは木曜日、実体経済の鈍化を受け、石油・ガスなどのセクターを対象に、より緩やかな短期気候目標を新たに発表した。この目標は、今年初めに発表された見直しに基づくもので、HSBCは2030年までに事業全体でネットゼロの炭素排出を達成するという目標を撤回した。
石油・ガス部門の顧客について、国際エネルギー機関(IEA)の2つのシナリオに沿い、2019年比で14~30%削減することを目指すと表明した。欧州最大の金融機関による移行計画の更新は、気候変動対策における広範な後退の中で、金融機関が顧客の排出量削減を支援するという自らの約束の一部を骨抜きにしている実態を示している。
昨年から今年にかけて起きた気候カルテル崩壊の際、金融機関側の言い分は「脱炭素イニシアチブからは抜けるが、自社のネットゼロ目標や融資先へのネットゼロ強制は継続する」という、企業の経営判断として矛盾に満ちたものでした。たとえばこちら。
三井住友FGの脱炭素枠組み脱退が日本の潮目を変える決定打になる
三井住友FGは枠組み脱退後も、脱炭素への投融資計画など気候変動への対応は個別に続ける構えだ。
(中略)
三井住友FGは「気候変動への対応は強化する」(幹部)と強調する。30年に向けて掲げたサステナブルファイナンスの投融資目標を維持するほか、50年までに融資先の企業が排出する温暖化ガスを実質的にゼロとする目標も続ける。
当時から、筆者は以下のように指摘していました。
自社ビルのCO2削減等はどうぞご自由に進めてください。でもネットゼロをめざすアライアンスやイニシアチブから自分たちは抜けるのですから、融資先の企業に温暖化ガスゼロを求めるのは明らかに矛盾しています。
(中略)
よく金融機関から企業に対して「TCFDやSBTiに参加しなさい」「気候変動によるリスクを特定しなさい」などと言われますが、脱炭素アライアンスに入っていることがビジネスリスクだと自ら判断したのです。
(中略)
自分たちが将来のビジネスリスクを回避したのに、融資先の企業に同じリスクを負わせるのはおかしい。当然ながらESG評価や要請もやめなければなりませんよね。
世界最大の金融機関と言われるHSBCが自社のネットゼロ目標撤回、さらに融資先へのネットゼロ強制についても見直し始めました。いずれ日本の金融機関も正常な経営判断をするはずです。
他方、多くの日本企業が2030年CO2半減、2050年ネットゼロを宣言しています。当然ながらあとたったの5年でCO2半減なんて不可能なので、強制労働由来の太陽光パネルやグリーンウォッシュである炭素クレジットに殺到して、何とか辻褄を合わせようとしています。
2030年半減は金融機関に迫られて宣言したのですが、依頼元が見直し始めましたよ。日本企業の皆さん、潮目が変わっていますのでご認識を。気候カルテル崩壊を受けて海外企業はネットゼロ宣言の撤回を始めています。バスから降り遅れませぬように。

■
関連記事
-
ドイツ政府は社民党、緑の党、自民党の3党連立だが、現在、政府内の亀裂が深刻だ。内輪揉めが激しいため、野党の発する批判など完全に霞んでしまっている。閣僚は目の前の瓦礫の片付けに追われ、長期戦略などまるでなし。それどころか中
-
権威ある医学誌The Lancet Planetary Healthに、気候変動による死亡率の調査結果が出た。大規模な国際研究チームが世界各地で2000~2019年の地球の平均気温と超過死亡の関連を調査した結果は、次の通
-
福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質の流出により、食品の放射能汚染がにわかにクローズアップされている。事故から10日あまりたった3月23日に、東京都葛飾区にある金町浄水場で1kgあたり210ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたことが公になるや、首都圏のスーパーマーケットに置いてあったミネラルウォーターがあっという間に売り切れる事態に発展した。
-
地球温暖化は米国では党派問題である。民主党支持者は「気候危機だ、今すぐ大規模な対策が必要」とするが、共和党支持者は「たいした脅威ではなく、極端な対策は不要」とする。このことは以前述べた。 さて米国では大手メディアも党派で
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
中国で石炭建設ラッシュが続いている(図1)。独立研究機関のGlobal Energy Monitor(GEM)が報告している。 同報告では、石炭火力発電の、認可取得(Permitted) 、事業開始(New projec
-
(前回:米国の気候作業部会報告を読む⑫:CO2の価格は何ドルなのか) 気候危機説を否定する内容の科学的知見をまとめた気候作業部会(Climate Working Group, CWG)報告書が2025年7月23日に発表さ
-
経済産業省は再生可能エネルギーの振興策を積極的に行っています。7月1日から再エネの固定価格買取制度(FIT)を導入。また一連のエネルギーを導入するための規制緩和を実施しています。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















