日本のAI敗戦を確定する排出量取引制度導入は延期すべきだ

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経済産業省は排出量取引制度の導入を進めている。今年度内にルールを策定し、26年度から27年度にかけて本格的な導入を進める予定だ※1)。
対象となるのは日本の大手企業であり、政府から毎年排出枠を無償で受け取るが、それを超えてCO2を排出したい場合、他社もしくは政府からその分の排出権を購入しなければならない。
政府は当面は無償の排出枠を多く割り当てるので、事業者への負担は小さいと説明する。
しかし一方で政府は、2050年CO2ゼロに向かって直線的にCO2を減らすという目標を立てている。2013年を起点として2030年に46%削減、2035年に60%削減、2040年には73%もの削減となっている。
これと辻褄を合わせるならば、今後、政府からの無償の排出枠は大きく減らされる、ということになる。政府から追加で購入できる排出枠も、同じようにどんどん絞られていくことになる。
この最大の標的となるのが発電所である。火力発電は、今なお日本の発電量の7割を占める基幹電源である。だが、これだけ排出枠が絞られてゆく見通しだとなると、新規の火力発電所が建設されなくなることはもちろん、既存の火力発電所についても、その維持費すら拠出されなくなり、次々と閉鎖されていくことになるだろう。
仮に将来、国が数値目標を緩和して、排出枠の割り当てがある程度増えるとしても、またいつ排出枠を絞られて高い排出権を買わされ、利益の全てを奪われるかも分からないような排出量取引制度の下で、火力発電事業への投資を積極的に進める事業者などいないだろう。
日本は電力不足に陥ることになる。
これが困るのは、今まさにAIのためには膨大な電力が必要だ、というタイミングにあることである。
今、日本全体で送電線への接続待ちをしているデータセンターは1500万キロワットもある。これが全てフル稼働するならば、日本の電力消費量は現状の9000億キロワットアワーから15%も一気に増大することになる※2)。
しかしながら、火力発電が減少するということでは、当然、このような電力消費量の増大はまかなえない。原子力の再稼働や新設には時間がかかるし、太陽・風力などの再生可能エネルギーではデータセンターに必要な安定的かつ安価な電気は供給できない。
すると、日本にはデータセンターは立地せず、日本はAIに関する国際競争から脱落することになる。
米国と中国はAIを巡り国の存亡を賭けた激しい競争をしている。米国は現在、日本の4倍の電力消費量があるが、今後10年程度で、デジタル電力消費の増大によって更に日本1国分が追加されるという見通しになっている。この8割方は天然ガス火力を利用することによって賄われると見られている※3)。
一方の中国では、1年間に建設される石炭火力発電所の設備容量は5000万キロワット規模に上っている※4)。これは日本のすべての石炭火力発電所を合わせたものと同じ設備容量である。つまり日本が数十年かけて建設してきた石炭火力発電所と同じだけの規模を1年で建設している。
アメリカは安価な天然ガス火力発電で勝負をかけてくる。中国も安価な石炭火力発電で勝負をかけてくる。これに追いついてゆくためには、日本も可能な限り安価な電源を探さねばならない。もちろん原子力発電所の再稼働は重要であるが、既設および新設の石炭火力発電所、天然ガス火力発電所、これらをすべて動員しなければ間に合わない。
日本の基幹電源である火力発電を壊滅させる排出量取引制度は導入を延期すべきだ。
日本がAIで敗戦しないこと、これは日本の産業、経済が敗戦しないことを意味する。排出量取引制度の導入によって自滅をすることは愚かである。
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※1)政府の予定は以下となっている。2026年度から排出量の算定・義務化が本格化する。排出権取引市場の立ち上げは2027年秋ごろとされ、制度は段階的に本格運用へ移行する。
・経産省:排出量取引制度(総合ページ)
・排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針(経産省)
・排出量取引制度小委員会 中間整理(案)
※2)経産省資料 局地的な大規模需要立地への対応について 2025年1月23日
近年、大規模需要家(特別高圧)の系統接続供給申込みの件数は急増している。現在未連系の需要の容量(kW)は、2030年度までの累計で約1500万kWと、日本の夏の最大電力需要の約1割に相当する量となっている(6ページ)
※3)米国National Center for Energy Analysis (NCEA) マーク・ミルズ所長による
※4)非政府研究機関Carbonbriefによる推計によると2023年に運転開始した設備容量は4740万kWであった。
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