2026年は「脱炭素ナイター」 → 2027年は「脱炭素デーゲーム」?

RBFried/iStock
筆者は3月の記事「セ・リーグが「脱炭素ナイター」開催=グリーンウォッシュナイターです」の中で以下の指摘をしました。
https://agora-web.jp/archives/260327143206.html
何度でも繰り返しますが、炭素クレジット・カーボンオフセットはすべてグリーンウォッシュです。大気中のCO2を1グラムも減らさないため「実質」などと言って誤魔化す必要があります。電気は「同時同量」が大原則なのです。環境価値を生み出したとされる太陽光発電由来の電気は、その瞬間に家庭や工場などですでに消費済み。プロ野球のナイトゲームであればその瞬間に発電された電気(主に火力発電)を使用しています。
続いて、4月に書いた「CO2データ非開示の「脱炭素ナイター」=グリーンウォッシュナイターです」では、各球場のCO2排出量を公表しないことが「環境表示ガイドライン」に違反するのではないかと述べました。
https://agora-web.jp/archives/260417210224.html
各球場のCO2排出量を開示しない???これではグリーンウォッシュにウォッシュを重ねてしまいませんかJERAさん。。
(中略)
そもそもカーボン・オフセットで「脱炭素ナイター」と称することがグリーンウォッシュでありプロ野球ファンに誤解を与える可能性があります。加えてCO2排出量データを開示しないのであれば「環境表示ガイドライン」にも反します。
そして今シーズンから脱炭素ナイターが始まりました。どうやら相殺したCO2排出量実績は公表されたようです。関係者が筆者のアゴラ記事をご覧になったのかは分かりませんが、この点についてはよかったと思います。
JERA、バンテリンドームで脱炭素ナイター CO2排出量実質ゼロに – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD226O10S6A520C2000000/
JERAは22日、再生可能エネルギーを活用した「脱炭素ナイター」を名古屋市内のバンテリンドームで開催した。太陽光発電由来の環境価値を活用し、試合運営に伴う電力の二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする仕組みを導入する。今回の脱炭素ナイターで、10トン分のCO2削減が見込まれる。1日あたりに換算すると、2000世帯が排出するCO2量に相当する。
オフセット実績を開示することで日本の環境表示ガイドラインには準拠したようですが、更なる難題が脱炭素ナイターを悩ませるかもしれません。
温室効果ガス排出量の計算方法でデファクトスタンダードとなっているGHGプロトコルが算定ルールの大幅な見直しを進めています。論点はたくさんありますが、炭素クレジットなどの環境価値を利用する場合について、「同時同量」という基準が設けられそうです。
現状の非化石証書などでは、数か月前に発電された再エネ由来の環境価値利用が横行しています(これもめちゃくちゃです…)。ところが、GHGプロトコルの見直し案ではこの時間差を1時間以内に収めることが求められるようです。発電と環境価値の消費が1時間以内になるのですから、当然ナイトゲームで太陽光発電由来の環境価値を利用することはできないはず。
GHGプロトコルもこんな抜け道を用意するのではなく、そもそも炭素クレジットやカーボン・オフセットを禁止にすればよいだけなのに。仮にこの1時間以内という運用を求められて、電力事業者は対応可能なのでしょうか。現在の非化石証書付き電力メニューはそのままの形では継続できなくなります。また1kWhあたりの単価が高騰するのではないでしょうか。
カーボン・オフセットなんかに手を出さず、地道な省エネ活動に注力してきた企業であれば今回のGHGプロトコル見直しに振り回されることはありません。
GHGプロトコルの見直しは2027年度と言われています。この「同時同量」が適用された場合、来年には脱炭素ナイターが開催できなくなります。ひょっとして2027年からは「脱炭素デーゲーム」に変わるのかも? でも当日雨が降ったら? 悩みは尽きません。
そもそも、野球少年の目を見て「脱炭素ナイターで10トンのCO2を削減しました」「CO2ゼロで球場が運営されています」と言える大人がいるのでしょうか。筆者にはとてもできません。
■
関連記事
-
系統用蓄電池が参入ラッシュ 2022年度以降、系統用蓄電池の参入が急速に拡大している。図1は資源エネルギー庁の「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」資料からの抜粋だが、送電線への接続検討申込み数、ならびに送電系統への接
-
東日本大震災から間もなく1年が経過しようとしています。少しずつ、日本は震災、福島第一原発事故の状況から立ち直っています。
-
「東京は、水素でおもしろくなる。」 「この街を動かすエネルギーが、水素に変わってきています。誰もが、あたりまえに水素を使う。そんな日常が、すぐそこまで来ています。東京が水素シティになったとき、そこにはどんな景色があって、
-
多くのテレビ、新聞、雑誌が事故後、放射能の影響について大量に報道してきた。しかし伝えた恐怖の割に、放射能による死者はゼロ。これほどの報道の必要があるとは思えない。
-
この連載でもたびたび引用してきたが、米国共和党は、気候危機など存在しないことを知っている。 共和党支持者が信頼しているメディアはウオールストリートジャーナルWSJ、ブライトバートBreitbart、フォックスニュースFo
-
内閣府のエネルギー・環境会議は9月18日、「革新的エネルギー・環境戦略」を決定する予定です。2030年代までに原発ゼロを目指すなど、長期のエネルギー政策の方針を決めました。これについては実現可能性などの点で批判が広がっています。
-
東日本大震災からはや1年が経過した。昨年の今頃は首都圏では計画停電が実施され、スーパーの陳列棚からはミネラルウォーターが姿を消していた。その頃のことを思い返すと、現在は、少なくとも首都圏においては随分と落ち着きを取り戻した感がある。とはいえ、まだまだ震災後遺症は続いているようだ。
-
エネルギー危機が世界を襲い、諸国の庶民が生活の危機に瀕している。無謀な脱炭素政策に邁進し、エネルギー安定供給をないがしろにした報いだ。 この年初に、英国の国会議員20名が連名で、大衆紙「サンデー・テレグラフ」に提出した意
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














