2026年は「脱炭素ナイター」 → 2027年は「脱炭素デーゲーム」?

2026年05月30日 06:40

RBFried/iStock

筆者は3月の記事「セ・リーグが「脱炭素ナイター」開催=グリーンウォッシュナイターです」の中で以下の指摘をしました。

https://agora-web.jp/archives/260327143206.html

何度でも繰り返しますが、炭素クレジット・カーボンオフセットはすべてグリーンウォッシュです。大気中のCO2を1グラムも減らさないため「実質」などと言って誤魔化す必要があります。電気は「同時同量」が大原則なのです。環境価値を生み出したとされる太陽光発電由来の電気は、その瞬間に家庭や工場などですでに消費済み。プロ野球のナイトゲームであればその瞬間に発電された電気(主に火力発電)を使用しています。

続いて、4月に書いた「CO2データ非開示の「脱炭素ナイター」=グリーンウォッシュナイターです」では、各球場のCO2排出量を公表しないことが「環境表示ガイドライン」に違反するのではないかと述べました。

https://agora-web.jp/archives/260417210224.html

各球場のCO2排出量を開示しない???これではグリーンウォッシュにウォッシュを重ねてしまいませんかJERAさん。。

(中略)

そもそもカーボン・オフセットで「脱炭素ナイター」と称することがグリーンウォッシュでありプロ野球ファンに誤解を与える可能性があります。加えてCO2排出量データを開示しないのであれば「環境表示ガイドライン」にも反します。

そして今シーズンから脱炭素ナイターが始まりました。どうやら相殺したCO2排出量実績は公表されたようです。関係者が筆者のアゴラ記事をご覧になったのかは分かりませんが、この点についてはよかったと思います。

JERA、バンテリンドームで脱炭素ナイター CO2排出量実質ゼロに – 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD226O10S6A520C2000000/

JERAは22日、再生可能エネルギーを活用した「脱炭素ナイター」を名古屋市内のバンテリンドームで開催した。太陽光発電由来の環境価値を活用し、試合運営に伴う電力の二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする仕組みを導入する。今回の脱炭素ナイターで、10トン分のCO2削減が見込まれる。1日あたりに換算すると、2000世帯が排出するCO2量に相当する。

オフセット実績を開示することで日本の環境表示ガイドラインには準拠したようですが、更なる難題が脱炭素ナイターを悩ませるかもしれません。

温室効果ガス排出量の計算方法でデファクトスタンダードとなっているGHGプロトコルが算定ルールの大幅な見直しを進めています。論点はたくさんありますが、炭素クレジットなどの環境価値を利用する場合について、「同時同量」という基準が設けられそうです。

現状の非化石証書などでは、数か月前に発電された再エネ由来の環境価値利用が横行しています(これもめちゃくちゃです…)。ところが、GHGプロトコルの見直し案ではこの時間差を1時間以内に収めることが求められるようです。発電と環境価値の消費が1時間以内になるのですから、当然ナイトゲームで太陽光発電由来の環境価値を利用することはできないはず。

GHGプロトコルもこんな抜け道を用意するのではなく、そもそも炭素クレジットやカーボン・オフセットを禁止にすればよいだけなのに。仮にこの1時間以内という運用を求められて、電力事業者は対応可能なのでしょうか。現在の非化石証書付き電力メニューはそのままの形では継続できなくなります。また1kWhあたりの単価が高騰するのではないでしょうか。

カーボン・オフセットなんかに手を出さず、地道な省エネ活動に注力してきた企業であれば今回のGHGプロトコル見直しに振り回されることはありません。

GHGプロトコルの見直しは2027年度と言われています。この「同時同量」が適用された場合、来年には脱炭素ナイターが開催できなくなります。ひょっとして2027年からは「脱炭素デーゲーム」に変わるのかも? でも当日雨が降ったら? 悩みは尽きません。

そもそも、野球少年の目を見て「脱炭素ナイターで10トンのCO2を削減しました」「CO2ゼロで球場が運営されています」と言える大人がいるのでしょうか。筆者にはとてもできません。

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