自治体「2050年CO2ゼロ宣言」の不真面目と罪
自治体で2050年迄にCO2排出をゼロにするという宣言が流行っている。環境省はそれを推進していて、宣言をした自治体の状況を図のようにまとめている。宣言した自治体の人口を合計すると7000万人を超えるという。

(環境省サイトより)
だがこれらの宣言は、どれもこれも不真面目極まりない。具体的な計画も無ければ、技術的・経済的な裏付けも無い。そもそも2050年にCO2をゼロにするなど不可能だから、具体的なことは誰も書けない訳だ。
もしも本気で2050年にCO2をゼロにするとしたら、莫大な費用がかかり、失業者が続出し、経済は大打撃を受けるはずだ。家庭は全部電化しなくてはならない。プロパンガス業者は廃業するのだろう。都市ガスも全部廃止するしかない。
建設機械を全部電化するのか?
農業機械も全部電化するのか?
工場は閉鎖するのか?
病院のボイラーはどうするのか?
明らかに甚大な経済影響のある宣言を自治体が表明するに当たって、住民に詳しく説明して合意を取ったと言う話も全く聞かない。住民の財産や雇用を守ることが使命である自治体がそれを放棄するのは重大な背信行為であり罪は深い。読者諸賢もご自分の自治体を図で見て頂きたい。いつの間にかCO2をゼロにすることを勝手に宣言されているのではなかろうか。
環境省はCO2ゼロを宣言した自治体に優先的に補助金を割り当てると報道されている。
「脱炭素」宣言都市を優先支援 50年実質ゼロ後押し―環境省(時事通信:9月19日)
これでますます多くの自治体が宣言をすることになりそうだ。だが具体性の全く無い宣言だけで補助金が貰えるとは何事か。全く勉強しない子どもが「次のテストで100点を取る」と宣言したら小遣いを遣るというようなもので、これを「空手形」と言わずしてなんと言うべきか。

関連記事
-
この4月に米国バイデン政権が主催した気候サミットで、G7諸国はいずれも2050年までにCO2ゼロを目指す、とした。 コロナ禍からの経済回復においても、グリーン・リカバリーということがよく言われている。単なる経済回復を目指
-
トランプ前大統領とハリス副大統領の討論会が9月10日に開催される。大統領選に向けた支持率調査によると、民主党の大統領候補であるハリス副大統領が42%、共和党候補のトランプ前大統領が37%で、ハリス氏がリードを広げていると
-
シナリオプランニングは主に企業の経営戦略検討のための手法で、シェルのシナリオチームが“本家筋”だ。筆者は1991年から95年までここで働き、その後もこのチームとの仕事が続いた。 筆者は気候変動問題には浅学だが、シナリオプ
-
途上国の勝利 前回投稿で述べたとおり、COP27で先進国は「緩和作業計画」を重視し、途上国はロス&ダメージ基金の設立を含む資金援助を重視していた。 COP27では全体決定「シャルム・エル・シェイク実施計画」、2030年ま
-
さまざまな専門家が実名ブログで発言する、言論プラットフォーム『アゴラ』と、 ニコニコ生放送がコラボしました。その名も『ニコ生アゴラ』。第3弾は「被災地の復興を脅かす、『汚染がれき』と除染」がテーマです。
-
原子力発電所の再稼働問題は、依然として五里霧中状態にある。新しく設立された原子力規制委員会や原子力規制庁も発足したばかりであり、再稼働に向けてどのようなプロセスでどのようなアジェンダを検討していくのかは、まだ明確ではない。
-
G7気候・エネルギー・環境大臣会合がイタリアで開催された。 そこで成果文書を読んでみた。 ところが驚くことに、「気候・エネルギー・環境大臣会合」と銘打ってあるが、気候が8、環境が2、エネルギー安全保障についてはほぼゼロ、
-
12月にドバイで開催されたCOP28はパリ協定発効後、最初のグローバル・ストックテイクが行われる「節目のCOP」であった。 グローバル・ストックテイクは、パリ協定の目標達成に向けた世界全体での実施状況をレビューし、目標達
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間