今週のアップデート — 福島原発事故、海外専門家からの視点(2013年9月30日)
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
今週のアップデート
1)「汚染水、環境への影響は小さい」— 福島事故で世界の専門家ら(上)
2)「成熟したコミュニケーションが必要」— 福島事故で世界の専門家ら(下)
事故を起こした東京電力の福島第一原子力発電所を含めて、原子炉の廃炉技術の情報を集積・研究する「国際廃炉研究開発機構」は9月27日までの4日間、海外の専門家らによる福島原発事故対策の検証を行いました。最終会議の一部が、報道陣に公開されたのでそれを報告します。
汚染水問題の環境への影響は限定的など、示唆に富む見解が示されています。中立的で専門性を持つ人の指摘は多くの人の参考になるでしょう。
元日本原電理事で、福島県富岡町で被災した北村俊郎氏は、被災地の日常をエッセイに書き綴っています。そのうち、3編を紹介します。被災者対策は、本当に役立っているのだろうかということを、考えさせられます。
4)脱原発のために、日本は再生可能エネルギー大国にならなければならない?
久保田宏東京工業大学名誉教授の論考です。提携する、国際環境経済研究所(IEEI版)の掲載を転載しました。書評から日本の再エネ事情を分析しています。
今週のリンク
1) 法の支配とその敵
アゴラ研究所の池田信夫所長のコラムです。東京電力が原子力規制委員会に新潟県にある柏崎刈羽原発の再稼動審査を提出しました。泉田裕彦同県知事は了承するとしましたが、彼はその権限はありません。泉田知事の一連の行為を「法の支配の敵」と厳しく批判しています。
政府や東電、電力会社、研究機関が廃炉技術を集積するために、8月に同機関を設立しました。その資料です。GEPRではではこの機関の取り組みを今回の更新で紹介しました。
3)原子力規制委1年 「反原発」偏向を排せよと産経、推進側から独立と毎日は評価
産経新聞の9月25日記事。同紙の主要紙と自社論説を比較するという日本のメディアでの珍しい形の記事の一つです。原子力規制委員会設立から今年9月で1年が経過しました。同委員会の動きの評価について、新聞の論説は割れています。産経、読売は、恣意的運用について批判的に見ています。
IAEA(国際原子力機関)の9月25日の公表リポート。原文は英語で原文タイトルは「Energy, Electricity and Nuclear Power Estimates for the Period up to 2050 」。世界経済の回復、温暖化防止の要請を背景にして、今後の原子力発電の拡大が続くことを予想しています。
5)「東電社長、福島第1汚染水の海洋への影響を否定」
東電が柏崎6・7号再稼働審査申請、今年度黒字は「困難」
ロイター通信9月27日記事。東京電力社長が衆議院の経済産業委員会に呼ばれ、当面の対策を語りました。事故処理の負担に加え、再稼動申請を新潟県に行うものの、経営の厳しさは続くとの見通しを述べました。
6)福島の最悪ケースのシナリオとは—原発事故、広まった話の大半は誤りだ
GEPRに過去寄稿したポール・ブルースティン氏が米国のウェブマガジン「Slate」に掲載した記事。前者の原題は「Fukushima’s Worst-Case Scenarios–Much of what you’ve heard about the nuclear accident is wrong」後者の原題は「Shaken Faith After the Fukushima disaster, a U.S. mistake undermined the Japanese government」.英語メディアで広まった情報の誤り、米政府の福島原発事故の認識の誤りを取り上げています。

関連記事
-
このごろ世の中は「脱炭素」や「カーボンニュートラル」でにぎわい、再生可能エネルギーとか水素とかアンモニアとか、いろんな話が毎日のようにマスコミに出ています。それを後押ししているのがESG投資ですが、その意味がわからない人
-
エネルギー問題では、福島事故の影響で、原発に賛成か反対かという論点ばかりが議論されがちです。しかし私たちが考えなければならない問題は数多くあります。原子力規制庁、外部コストと呼ばれる社会影響、代替策についての論考を紹介します。
-
北朝鮮の野望 北朝鮮はいよいよ核武装の完成に向けて最終段階に達しようとしている。 最終段階とは何か—— それは、原子力潜水艦の開発である。 北朝鮮は2006年の核実験からすでに足掛け20年になろうとしている。この間に、核
-
国会の事故調査委員会の報告書について、黒川委員長が外国特派員協会で会見した中で、日本語版と英語版の違いが問題になった。委員長の序文には、こう書かれている
-
EV補助金の打ち切り…その日は突然訪れた 12月17日、夜7時のニュースをつけたら、「EVの補助金は明日から中止されることになりました。あと5時間です」。 寝耳に水。まるでエイプリスフールだ。 政府はいくらお金がないとは
-
ウクライナ戦争以前から始まっていた世界的な脱炭素の流れで原油高になっているのに、CO2排出量の2030年46%削減を掲げている政府が補助金を出して価格抑制に走るというのは理解に苦しみます。 ガソリン価格、172円維持 岸
-
ついに出始めました。ニュージーランド航空が2030年のCO2削減目標を撤回したそうです。 ニュージーランド航空、航空機納入の遅れを理由に2030年の炭素排出削減目標を撤回 大手航空会社として初めて気候変動対策を撤回したが
-
COP28に参加して強く感じたことは「すでに破綻している1.5℃目標に固執することは、世界にとって決して良い結果をもたらさない」ということであった。特に1.5℃目標、2050年カーボンニュートラルからの逆算ですべてを律す
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間