IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。

前回の論点⑳に続いて「政策決定者向け要約」の続き。前回と同様、針小棒大な書きぶりが続く:



普通の人にはとにかく判り難い言葉だが、とにかくおどろおどろしい。「極端現象に既に影響を及ぼしている」「熱波、大雨、旱魃、熱帯低気圧..」「大雨の頻度と強度は..増加、人為起源の気候変動が主要な駆動要因」..
でもねえ。
「熱波に影響を及ぼしている」といっても、地球温暖化は江戸時代と比べて僅か1℃だ。40℃の熱波が41℃になるぐらいの話。自然変動や都市熱の方がずっと影響が大きい。
大雨については既に論点⑧に書いたように、大雨の雨量が増えた観測所は全体の1割以下しかない(図1)。また論点⑥で書いたように、地域ごとに調べたら、日本を含めて殆どの場所で、それは地球温暖化のせいは言えない、というのが現状(図2)。

図1
図1 緑が有意に大雨の雨量が増加した観測所の割合で、地球全体では9%ぐらい。詳しくは論点⑧を参照。

図2
図2 大雨の増加が観測された地域はいくらかあるものの、自然の変動などもあり、人為的な温暖化によるものとは言えない地域が殆どである。詳しくは論点⑥を参照。
つまり大雨が増えたり強くなったりする傾向は何となく見られるけれども、ようやく観測できるといったぐらいで、かろうじて誤差から見分けられる、という程度だ。
それに仮に雨が強くなっているとしても、理論的には1℃の気温上昇で6%から7%程度。100ミリの雨が106ミリか107ミリになったということで、これが江戸時代から今までの長い時間に起きた、ということだ。
おどろおどろしく「気候危機」というなら、自然災害のデータはさぞや急激な右肩上がりで、誰の目にも明らかで文句無しなのかと思えば、そうではない。実態はこの程度のことで、たいていは誤差の内か、せいぜい、かろうじて判別できるぐらいだ。
冷静になって数字を見ると、「人類の危機が迫っている!」という様な話からは程遠いことが分かる。
■
1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。
次回:「IPCC報告の論点㉒」に続く
【関連記事】
・IPCC報告の論点①:不吉な被害予測はゴミ箱行きに
・IPCC報告の論点②:太陽活動の変化は無視できない
・IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱行きに
・IPCC報告の論点④:海はモデル計算以上にCO2を吸収する
・IPCC報告の論点⑤:山火事で昔は寒かったのではないか
・IPCC報告の論点⑥:温暖化で大雨は激甚化していない
・IPCC報告の論点⑦:大雨は過去の再現も出来ていない
・IPCC報告の論点⑧:大雨の増減は場所によりけり
・IPCC報告の論点⑨:公害対策で日射が増えて雨も増えた
・IPCC報告の論点⑩:猛暑増大以上に酷寒減少という朗報
・IPCC報告の論点⑪:モデルは北極も南極も熱すぎる
・IPCC報告の論点⑫:モデルは大気の気温が熱すぎる
・IPCC報告の論点⑬:モデルはアフリカの旱魃を再現できない
・IPCC報告の論点⑭:モデルはエルニーニョが長すぎる
・IPCC報告の論点⑮:100年規模の気候変動を再現できない
・IPCC報告の論点⑯:京都の桜が早く咲く理由は何か
・IPCC報告の論点⑰:脱炭素で海面上昇はあまり減らない
・IPCC報告の論点⑱:気温は本当に上がるのだろうか
・IPCC報告の論点⑲:僅かに気温が上がって問題があるか?
・IPCC報告の論点⑳:人類は滅びず温暖化で寿命が伸びた
・IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
・IPCC報告の論点㉒:ハリケーンが温暖化で激甚化はウソ
・IPCC報告の論点㉓: ホッケースティックはやはり嘘だ
・IPCC報告の論点㉔:地域の気候は大きく変化してきた
・IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
■
関連記事
-
地震・津波に関わる新安全設計基準について原子力規制委員会の検討チームで論議が進められ、その骨子が発表された。
-
11月1日にエネルギーフォーラムへ掲載された杉山大志氏のコラムで、以下の指摘がありました。 G7(主要7カ国)貿易相会合が10月22日に開かれて、「サプライチェーンから強制労働を排除する」という声明が発表された。名指しは
-
グレタ・トゥーンベリの演説を聞いた人は人類の絶滅が迫っていると思うかもしれないが、幸いなことにそうではない。25日発表されたIPCCの海洋・雪氷圏特別報告書(SROCC)では、従来の気温上昇予測(第5次評価報告書)にもと
-
G7伊勢志摩サミットに合わせて、日本の石炭推進の状況を世に知らしめるべく、「コールジャパン」キャンペーンを私たちは始動することにした。日出る国日本を「コール」な国から真に「クール」な国へと変えることが、コールジャパンの目的だ。
-
福島における原発事故の発生以来、世界中で原発の是非についての議論が盛んになっている。その中で、実は「原発と金融セクターとの関係性」についても活発に議論がなされているのだが、我が国では紹介される機会は少ない。
-
経済産業省で12月12日に再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会(以下単に「委員会」)が開催され、中間とりまとめ案が提示された(現在パブリックコメント中)。なお「中間とりまとめ」は役所言葉では報告書とほぼ同義と考え
-
表面的に沈静化に向かいつつある放射能パニック問題。しかし、がれき受け入れ拒否の理由になるなど、今でも社会に悪影響を与えています。この考えはなぜ生まれるのか。社会学者の加藤晃生氏から「なぜ科学は放射能パニックを説得できないのか — 被害者・加害者になった同胞を救うために社会学的調査が必要」を寄稿いただきました。
-
2015年10月1日放送。出演は、有馬純(東京大学公共政策大学院教授)、池田信夫(アゴラ研究所所長)、司会は石井孝明(ジャーナリスト・GEPR編集者)の各氏。有馬氏は、経産省で、地球温暖化問題の首席交渉官。年末のCOP21に向け、これまでの交渉を振り返り、今後何をすべきかを議論。環境だけではなく、国益をかけた経済交渉の側面があることで、参加者は一致した。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















