神奈川県さん、自衛隊から地球温暖化対策の報告が必要ですか?
神奈川県地球温暖化対策推進条例の中に「事業活動温暖化対策計画制度」というものがあります。
これは国の省エネ法と全く同じ中身で、国に提出する省エネ法の定期報告書から神奈川県内にある事業所を抜き出して報告書を作成し神奈川県に提出することを事業者に強いる制度です。事業者にとっても地球環境にとっても何のメリットもないブルシット・ジョブの典型なのですが、なんと、神奈川県がこれを自衛隊にもやらせていたとは知りませんでした。

Highwaystarz-Photography/iStock
こちらが自衛隊から神奈川県へ提出された報告書です。
https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0502/kouhyou/2015j/2015j0124-2.html
日本周辺の安全保障が緊迫化し防衛予算のGDP比2%が議論されている只中です。ただでさえ装備品も日常的な運営予算も足りないところで、自治体がこんな無駄な報告を自衛隊にやらせているなんて信じられません。報告書の中身を見ると、隊員にエネルギー管理士の資格を取らせるとか環境教育をやるとか人感センサーを入れるとか、国防に全く関係のない内容が並んでいます。
ようやくトイレットペーパーが自由に使えるようになったものの、まだウォシュレットは完備されていないのでは。装備品や戦闘機の修理・定期メンテナンスもままならず、他の機体の部品を流用する「共食い整備」でしのいでいる状況が改善された上での、省エネ機器への更新やLED照明への切り替えなのでしょうか。
さすがに新エネルギー導入計画はなし。まさか中国製の太陽光パネルやパワコンをPPA(Power Purchase Agreement)で入れるなんていうことにはならないと思いますが、昨今のおかしな世の流れを鑑みると将来の可能性がゼロとは言い切れないのが恐ろしいところです。もしもそんなことになったら、いざ有事の際に簡単に停電させられてしまうリスクを抱え込みます。
筆者の経験からも、この神奈川県への報告は地味ですがとても大変な作業です。当然ながら、何も中身がなければ報告できませんので組織をあげて脱炭素へ取り組む必要があります。一方で、中露北がカーボンニュートラルを目指したり、地球環境に配慮して兵器の開発や軍備を考える訳がありません。神奈川県にはこんなことすぐにやめてほしいものです。
【追記】
神奈川県での自衛隊のこの温暖化対策計画書はたまたま見つけただけなのですが、気になったので検索してみたところ、残念ながら他の自治体でも見つかりました。。
自治体の環境課の皆さん、日本の国防の足を引っ張るだけで温暖化対策に何ら寄与しないこのような報告制度はぜひとも見直していただきますよう切に願います。
関連記事
-
東京電力福島第一原子力発電所の事故から早2年が過ぎようとしている。私は、原子力関連の会社に籍を置いた人間でもあり、事故当時は本当に心を痛めTVにかじりついていたことを思い出す。
-
政府は停止中の大飯原発3号機、4号機の再稼動を6月16日に決めた。しかし再稼動をしても、エネルギーと原発をめぐる解決しなければならない問題は山積している。
-
原子力発電の先行きについて、コストが問題になっています。その資金を供給する金融界に、原発に反対する市民グループが意見を表明するようになっています。国際環境NGOのA SEED JAPANで活動する土谷和之さんに「原発への投融資をどう考えるか?--市民から金融機関への働きかけ」を寄稿いただきました。反原発運動というと、過激さなどが注目されがちです。しかし冷静な市民運動は、原発をめぐる議論の深化へ役立つかもしれません。
-
4月の日米首脳会談では、炭素税(カーボンプライシング)がテーマになるといわれています。EU(ヨーロッパ連合)は今年前半にも国境炭素税を打ち出す方針で、アメリカのバイデン政権も、4月の気候変動サミットで炭素税を打ち出す可能
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)非在来型ウランと核燃料サイクル アゴラ研究所、池田信夫氏の論考です。もんじゅは廃炉の方向のようですが核燃料
-
洋上風力発電事業を巡る汚職事件で、受託収賄容疑で衆院議員、秋本真利容疑者が逮捕された。捜査がどこまで及ぶのか、今後の展開が気になるところである。各電源の発電コストについて、いま一度確認しておきたい。 2021年8月経済産
-
集中豪雨に続く連日の猛暑で「地球温暖化を止めないと大変だ」という話がマスコミによく出てくるようになった。しかし埼玉県熊谷市で41.1℃を記録した原因は、地球全体の温暖化ではなく、盆地に固有の地形だ。東京が暑い原因も大部分
-
菅政権の目玉は「2050年CO2排出ゼロ」だろう。政府は25日、「カーボンニュートラル」(炭素中立)を目標とするグリーン成長戦略を発表した。炭素中立とは、人間の排出するCO2と森林などの吸収を合計して実質ゼロにするという
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間













