政府がやるべきことは節電のお願いではなく電力の確保だ
めまいがしそうです。
【スクープ】今冬の「節電プログラム」、電力会社など250社超参戦へ(ダイヤモンド・オンライン)
補助金適用までのフローとしては、企業からの申請後、条件を満たす節電プログラム内容であるかどうかなどを事務局が審査する。つまり申請から補助金適用が決まって公表されるまでにはタイムラグがあり、審査待ちか審査中の企業が210社以上あることになる。
3%の節電達成した家庭に「月1000円分のポイント」…政府支援策が12月スタート(読売新聞オンライン)
今冬に行われる節電プログラムで、利用者の節電量に応じてポイントを付与する政府の支援策がわかった。電力使用量を前年同月比3%以上減らした家庭に月1000円分、企業に月2万円分のポイントを上乗せする方針だ。
電力供給側では、参加企業による申請や事務局による審査に膨大な手間と時間がかかり、電力需要側の家庭や企業に対しても、これまた面倒な手間ひまをかけてポイントを配るそうです。しかもそのポイントは微々たる金額です。手を挙げた家庭には2000円分、企業には20万円分。さらに3%節電できたらそれぞれ1000円分、2万円分の上乗せとのこと。

y-studio/iStock
では、結婚や引っ越しなどで極端に生活環境が変わった場合は? 今年設備を増強した工場は? 昨年節電を頑張った家庭や企業と全く節電していなかった家庭・企業で基準が異なる場合は? そもそも手を挙げない家庭・企業には何の恩恵もないのでは? などなど、とても公平な制度とは言えません。
仮に全家庭・全企業の条件が同じであっても、前年より暖冬だったら参加者全員達成、厳冬だったら大半が未達成、ということもありえます。全世帯や産業界のほんの一部が参加して仮に3%削減したところで、現在のエネルギー価格高騰や電力不足に対する効果は全く期待できません。
こんな実効性の伴わない施策ではなく、① 再エネ賦課金の廃止、② 石炭火力のフル稼働、③ 原発再稼働を大至急で進めるべきです。
政府がやるべきことは国民や企業に節電をお願いすることではなく、日常生活や産業のために必要な電力量を確保することではないでしょうか。余力はあるし、これなら電気代も下がるためすべての国民と企業が恩恵にあずかれます。
世界各国は脱炭素・脱原発を棚上げして「エネルギー・ドミナンス(優越)」へ移りつつあるという指摘もあります。日本政府も早く舵を切るべきなのですが、こんな状況になってもまだ再エネ拡大、原発反対と叫んでいるSDGs・ESG界隈の人たちがいるためか、重い腰を上げることができないでいます。
現在直面しているエネルギー価格の高騰も、可能性がゼロではない真冬の大停電も、全国民(特に生活弱者)ならびに全産業(特に中小企業)にとって文字通り死活問題です。
脱炭素・脱原発では電力危機が拡大するばかりで、誰一人取り残さない社会からは遠ざかる一方です。
■

関連記事
-
引き続き、2024年6月に米下院司法委員会が公表した気候カルテルに関する調査報告書についてお届けします。 (前回:気候カルテルは司法委員会の調査から逃げ回る) 今回は日本企業(特にサステナビリティ部門の担当者)にとってと
-
前回、前々回の記事で、企業の脱炭素の取り組みが、法令(の精神)や自社の行動指針など本来順守すべき様々な事項に反すると指摘しました。サプライヤーへの脱炭素要請が優越的地位の濫用にあたり、中国製太陽光パネルの利用が強制労働へ
-
本年5月末に欧州委員会が発表した欧州エネルギー安全保障戦略案の主要なポイントは以下のとおりである。■インフラ(特にネットワーク)の整備を含む域内エネルギー市場の整備 ■ガス供給源とルートの多角化 ■緊急時対応メカニズムの強化 ■自国エネルギー生産の増加 ■対外エネルギー政策のワンボイス化 ■技術開発の促進 ■省エネの促進 この中で注目される点をピックアップしたい。
-
グレタ・トゥーンベリの演説を聞いた人は人類の絶滅が迫っていると思うかもしれないが、幸いなことにそうではない。25日発表されたIPCCの海洋・雪氷圏特別報告書(SROCC)では、従来の気温上昇予測(第5次評価報告書)にもと
-
ドイツの温室効果ガス排出量、前年比10%減 3月15日、ドイツ連邦政府は2023年の同国の温室効果ガス排出量が前年比10%減少して6億7300万トンになったとの暫定推計を発表した※1。ドイツは温室効果ガス排出削減目標とし
-
表題の文言は、フランス革命を逃れて亡命してきた王侯貴族たちを、英国人が揶揄した言葉である。革命で人民が求めた新しい時代への要求からは何事も学ばず、王政時代の古いしきたりや考え方を何事も忘れなかったことを指す。 この文言は
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 5月26日、参議院本会議で「2050年までの脱炭素社会の実現」を明記した改正地球温暖化対策推進法(以下「脱炭素社会法」と略記)が、全会一致で可決、成立した。全会一致と言うことは
-
基数で4割、設備容量で三分の一の「脱原発」 東電は7月31日の取締役会で福島第二原発の全4基の廃炉を正式決定した。福島第一原発事故前、我が国では54基の原発が運転されていたが、事故後8年以上が経過した今なお、再稼働できた
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間