気候危機説を真向否定する米国タッカー・カールソン
科学的根拠の無い極端な気候危機説が溢れかえっているのは日本だけではなく米国も同じだ。
米国の大手テレビ局であるフォックス・ニュースの名物キャスターであるタッカー・カールソンが気候危機説を真向から批判している番組があったので紹介しよう。
■ これのどこが科学なのか?
■ これは極めて不条理だ!
タッカー・カールソンのYoutubeのチャンネル登録者数は1000万人を超え、動画視聴回数はそれぞれ204万回、121万回もあり、これに加えてもちろんテレビで視聴した人もいるから、大変な影響力だ。
まず、殆ど完全な偽情報と言ってよいような極端な気候危機説が、完全に外れていたことを幾つか指摘している:
- グレタ・トゥンベルグは、「ある高名な気候科学者が、5年以内に化石燃料使用を止めなければ、気候変動によって人類は絶滅すると述べた」と2018年にツイートした。このツイートは5年後の2023年にひっそりと削除されていた。
- 通信社のAPは、1989年に、「ある国連の環境担当の高官が、地球温暖化の傾向が2000年までに逆転できなければ、全ての国々が海面上昇によって沈没するかもしれないと述べた」と報道した。
- ガーディアン紙は、2004年に、「2020年までに、主要な欧州の都市は海面上昇によって沈没し、イギリスはシベリアなみの気候になる」と書いた。
次いで、「あとX年以内に行動しないと破滅する」という警句も、昔から繰り返されてきたことだ、と笑い飛ばしている:
2006年、NBCニュースは、「著名な米国の気候研究者は、地球温暖化に対して断固とした行動をとり破局を避けるためには、世界には10年間しか残されていない、と述べた」と報道した。
通信社APは、2023年、「国連の最も著名な科学者の委員会は、気候変動の将来における最悪な影響を未然に防ぐために、人類にはまだ機会があるが、もう殆ど最後の機会だと述べた」「しかしそのためには2035年までに炭素汚染を3分の2近く急激に削減する必要がある」とした。
そして、「公平性」とか「インクルーシブ」といった、左翼リベラル的な価値観満載で、いかにも国際機関の役人の作文のようなIPCCの政策提言について、「これのどこがいったい科学なのだ? と疑問を呈している。その文言の例:
公平性、気候正義、社会正義とインクルージョンを優先する行動が、より持続可能な結果、コベネフィットをもたらし、トレードオフを減らし、トランスフォーマティブな変化を支持し、気候に対して頑強な開発を前進させる。
その他にも、米国がCO2を減らさねばならないという一方で、米国の倍のCO2を排出している中国が、毎週2基というすさまじいハイペースで石炭火力発電所を建設していることを挙げ、米国の温暖化対策は中国を利するだけだと述べている。
化石燃料使用によってCO2は増えており、地球温暖化はゆるやかに起きていることは、タッカー・カールソンも否定していない。だが極端な悪影響など今のところ全く起きていない、ということだ。
タッカー・カールソンはフォックス・ニュースの看板キャスターで、人気は絶大だ。フォックス・ニュースは、共和党支持者の人々が最も信頼するニュース放送局でもある。そのタッカー・カールソンが以上のような認識でいるということは、米国のかなり多くの人々が同様な認識であることを示していると言ってよい。
まじめに温暖化対策を考える人々は、明らかな偽情報である極端な気候危機説を否定すべきだ。もっとも、以前書いたように、グテーレス国連事務総長やバイデン米国大統領がその偽情報の発信源なので、言いにくいとは思うが。
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。
関連記事
-
2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、様々な面で世界を一変させる衝撃をもたらしているが、その中の一つに、気候変動対策の世界的な取り組みを規定するパリ協定への悪影響への懸念がある。 人類が抱える長期の課題である
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
まもなく3・11から10年になる。本書は当時、民主党政権の環境相として福島第一原発事故に対応した細野豪志氏の総括である。当時の政権の誤りを反省し、今も続くその悪影響を考えている。 本人ツイッターより あの事故が民主党政権
-
シンクタンク「クリンテル」がIPCC報告書を批判的に精査した結果をまとめた論文を2023年4月に発表した。その中から、まだこの連載で取り上げていなかった論点を紹介しよう。 ■ IPCC報告における将来の海面上昇予測が地点
-
地球が将来100億人以上の人の住まいとなるならば、私たちが環境を扱う方法は著しく変わらなければならない。少なくとも有権者の一部でも基礎的な科学を知るように教育が適切に改善されない限り、「社会で何が行われるべきか」とか、「どのようにそれをすべきか」などが分からない。これは単に興味が持たれる科学を、メディアを通して広めるということではなく、私たちが自らの財政や家計を審査する際と同様に、正しい数値と自信を持って基礎教育を築く必要がある。
-
けさの「朝まで生テレビ!」は、3・11から7年だったが、議論がまるで進歩していない、というより事故直後に比べてレベルが落ちて、話が堂々めぐりになっている。特に最近「原発ゼロ」業界に参入してきた城南信金の吉原毅氏は、エネル
-
先日、朝日新聞の#論壇に『「科学による政策決定」は隠れ蓑?』という興味深い論考が載った。今回は、この記事を基にあれこれ考えてみたい。 この記事は、「世界」2月号に載った神里達博氏の「パンデミックが照らし出す『科学』と『政
-
9月25日、NHK日曜討論に出演する機会を得た。テーマは「1.5℃の約束―脱炭素社会をどう実現?」である。 その10日ほど前、NHKの担当ディレクターから電話でバックグラウンド取材を受け、出演依頼が来たのは木曜日である。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間