「グリーン7」に堕したG7で戦争の枢軸に勝てるのか

2024年05月08日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Bet_Noire/iStock

G7気候・エネルギー・環境大臣会合がイタリアで開催された。

そこで成果文書を読んでみた。

ところが驚くことに、「気候・エネルギー・環境大臣会合」と銘打ってあるが、気候が8、環境が2、エネルギー安全保障についてはほぼゼロ、といった割合だ。

「気候」については、お馴染みの「2050年CO2ゼロ」「1.5℃目標の達成」といったことがしつこく書いてある。

「環境」についても、生物多様性とプラスチックリサイクルの話ばかりだが、これもかなりこってりと書いてある。

けれども、これだけ世界の安全保障状況が切迫しているのに、エネルギー安全保障の話が全く出てこない。いちおう、冒頭のパラグラフでは、ウクライナの戦争やフーシ派による紅海の封鎖などについての言及は出てくるが、それでエネルギー安全保障のために何をするかということが一切書いていない。ひたすら脱炭素だ。

もともとG7というのは、1973年の石油ショックへの対応がきっかけになって開催されたのが始まりだ。

1975年の第1回サミットの共同声明を見ると、エネルギー安全保障は重要な柱になっている。石油の共同備蓄や、代替エネルギー開発、省エネルギー政策などの国際協調がここから始まった。

ちなみに日本のメディアでは、いつもの調子で、日本だけが石炭火力継続で孤立、という煽り記事が目立ったが、

石炭火力廃止へ「埋まる外堀」 狭まる抜け道、G7で孤立する日本

実際の成果文書を見ると、これまでの日本の方針を変える必要は全くない。

G7エネ相、脱石炭火力「30年代前半」「時期明示せず」併記

もっとも、この日本の方針というのも、2050年までに脱炭素、というものだから、実現不可能で馬鹿げていることには間違いないが・・・。

それにしても、G7は、もともと石油ショックに対処しエネルギー安全保障を確立することが大きな目的だったはずだが、いまやすっかり「グリーン7」になってしまい、化石燃料を全否定するようになった。

これではG7のエネルギー安定供給は損なわれ、エネルギー価格は上がって国力は低下する一方だ。こんなことで、軍事的な協調を深める戦争の枢軸「ロシア・中国・イラン・北朝鮮」に勝てるのだろうか?

もっとも、「たぶんトランプ」になれば、アメリカのエネルギー外交は180度変わる。グリーンなお花畑のG7成果文書は今年が見納めになるのではないか。

 

 

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 岸田首相が「脱炭素製品の調達の義務付け」を年内に制度設計するよう指示した。義務付けの対象になるのは政府官公庁や、一般の企業と報道されている。 脱炭素製品の調達、「年内に制度設計」首相が検討指示 ここで言う脱炭素製品とは、
  • 経済産業省の有識者会議がまとめた2030年の望ましい電源構成(エネルギーミックス)案は、政治的な思惑に左右され、各種電源の数字合わせに終始した印象が強く残った。エネルギーは暮らしや産業を支える国の重要な基盤である。そこにはイデオロギーや政治的な主張を持ち込むべきではなく、あくまで現実を踏まえた冷静な政策判断が求められる。だが、有識者会議では日本のエネルギーのあるべき将来像について、骨太な議論はみられなかったのは残念だ。
  • 英国国営放送(BBC)で内部監視の役目を受け持つEditorial Complaints Unit (ECU)は、地球温暖化に関するBBCのドキュメンタリー番組が、気候変動について誤った報道をしたと判定した。 番組「ワイ
  • 7月2日に掲載された杉山大志氏の記事で、ESG投資の旗を振っている欧米の大手金融機関が人権抑圧にはお構いなしに事業を進めていることを知り衝撃を受けました。企業のCSR/サステナビリティ担当者は必読です。 欧米金融機関が、
  • 原発は「トイレのないマンション」とされてきました。使用済みの核燃料について放射能の点で無害化する方法が現時点ではないためです。この問題について「核燃料サイクル政策」で対応しようというのが、日本政府のこれまでの方針でした。ところが、福島第一原発事故の後で続く、エネルギーと原子力政策の見直しの中でこの政策も再検討が始まりました。
  • 今春、中央環境審議会長期低炭素ビジョン小委員会がとりまとめた報告書では、長期の脱炭素化に向けた施策の中核としてカーボンプライシングを挙げている。この問題については、今後、国内的にも様々な議論が行われることになるだろう。そ
  • 福島第一原発の「廃炉資金」積み立てを東京電力に義務づける、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正案が2月7日、閣議決定された。これは原発の圧力容器の中に残っているデブリと呼ばれる溶けた核燃料を2020年代に取り出すことを
  • 北朝鮮の国防委員会は2013年1月24日、国連安全保障理事会の制裁決議に反発して、米国を核兵器によって攻撃することを想定した「高い水準の核実験」を実施すると明言した。第三回目となる核実験。一体、高い水準とは何を意味するのだろうか。小型化、高濃縮ウラン、同時多数実験をキーワードに解読する。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑