また大手炭素クレジット会社の社長が逮捕

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また大手炭素クレジット会社の社長が逮捕されました。
気候変動ウィークリー#539 -炭素詐欺の終焉は近いのか?- ハートランド研究所
今週初め、現存する最大のカーボンオフセット/クレジット取引の新興企業のひとつであるAspiration Partners、Inc.が破産を申請したというニュースが流れた。
米国司法省が共同創業者のジョセフ・サンバーグ氏を、少なくとも1億4500万ドルの投資家資金を騙し取ったとして起訴した直後、同社は破綻した。
炭素市場における詐欺、詐称に関する警告は永年にわたり蔓延している。そもそも開発の脅威にさらされていない森林の保護や、実際には二酸化炭素の削減につながらない炭素貯留や技術転換などのクレジットを企業が購入していたことが原因である。さらに、監査の結果、排出量のオフセットが行われたプロジェクトの場合でも、実際に削減された排出量よりもはるかに多くのクレジットを販売していたことが明らかになっている。
たしかに、米国司法省のプレスリリースに出ていました。
カリフォルニア州セントラル地区 |アスピレーション・パートナーズの共同創業者ジョセフ・サンバーグ氏、投資ファンドから少なくとも1億4,500万ドルを詐取しようと共謀した容疑で逮捕 |米国司法省
金融・持続可能性サービス企業アスピレーション・パートナーズの共同創業者で筆頭株主であるジョセフ・ニール・サンバーグ容疑者(45歳)が、2つの投資ファンドから少なくとも1億4500万ドルを詐取した共謀の疑いで本日連邦刑事告発により逮捕された。
ただ、司法省のサイトを見ると逮捕容疑は(通常の?変な言い方ですが)巨額詐欺であって、炭素クレジットの売買に関連した詐欺ということではなさそうです。しかし、炭素クレジット大手企業の社長が逮捕されたことに変わりありません。
念のため、氏の名誉のために司法省の記述を引用しておきます。
刑事告訴には容疑が含まれます。被告人は、法廷で合理的な疑いを超えて有罪が立証されるまでは無罪と推定されます。
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昨年10月には、世界最大のボランタリー炭素クレジット認証機関であるVerraの元取締役であるケン・ニューカム氏が告訴されています。
いわば世界の炭素クレジット市場の創始者、カーボン・オフセットビジネスの創業社長のような人物ですが、炭素クレジットをめぐる詐欺の疑いで昨年10月に米国司法省(DOJ)と連邦捜査局(FBI)から刑事告訴され、米国証券取引委員会(SEC)と米国商品先物取引委員会(CFTC)から民事告訴をされました。
こちらの案件は炭素クレジット詐欺です。
陰謀のメンバーは、データを操作して、実際よりもはるかに炭素排出量の削減に成功しているかのように見せかけた。例えば、2021年8月頃に、CQCはマラウイの2つのプロジェクトとザンビアの2つのプロジェクトの調査データを受け取った。調査データは、CQCが予想していた排出削減の約半分だった。
約30年前に炭素クレジット市場を創った人物や、現在の炭素クレジット業界大手の社長が逮捕されているにもかかわらず、いずれも日本語メディアでの報道はありません。これでは日本企業の意思決定に偏りが生じてしまいます。
畢竟日本企業や自治体が「J-クレジットを活用して脱炭素に取り組みます」「実質CO2ゼロ製品を販売します」といった報道が相次いでいます。しかしながら、世界的に高品質だと言われている炭素クレジットであっても、後から詐欺だったと判明する事例が後を絶ちません。炭素クレジットを購入しても見かけ上相殺できるだけであって、大気中のCO2は1グラムも減らないのです。
詐欺罪に問われなくても、炭素クレジットは本質的にグリーンウォッシュであると認識する日本企業が増えることを願います。
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