今週のアップデート — 核廃棄物、国際管理の必要(2013年8月26日)

2013年08月26日 15:30

アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。

1) 核燃料サイクルを放棄するなかれ・その3 — 六ヶ所の再稼動はなぜ必要か

2) 核燃料サイクルを放棄するなかれ・その4 — 国際的なプルトニウム管理体制の必要

先週に続いて、初代外務省原子力課長の金子熊夫氏の論考です。日本の核燃料サイクルが、原子力をめぐる国際関係の中でどのように位置づけられているかの、分析はあまりありません。今回の議論では、それを明らかにしています。

「余剰プルトニウムを持たない」。日本の原子力政策は、このような政策を重ね、平和利用に特化する形で発展してきました。そこで強調されたのが、核兵器、汚染を拡散する「汚い爆弾」の原料となるプルトニウムを持たないことでした。「その3」ではプルトニウムを減らす核燃料サイクル政策の関係を解説。さらに「その4」でプルトニウム管理の国際体制の整備を訴えています。

3) 真の原子力再生に必要なことは何か?(下)原子力再生に向けて

前週に引き続いて(記事上)、国際環境経済研究所の論考を掲載。福島原発事故前後の電力会社原子力部門の状況を説明しています。

4)原子力により防がれた従来および予測される死亡者数および温室効果ガスの排出量

NASA(米航空宇宙局)とコロンビア大学の共同研究論文。米国化学学会機関誌「Environmental Science and Technology」に掲載。原子力が導入されたことで、大気汚染に関連した184万人の死と温暖化をこれまで抑制したと推計されます。原子力発電はさまざまな問題を抱えていますが、大気汚染と温暖化の抑制という点では大きな成果がありました。

今週のリンク

1) 温暖化「人類が原因」の可能性95% 国連報告書の内容判明

ハフィントンポスト8月22日記事。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第一作業部会報告(気候システムおよび気候変動に関する科学的知見の評価)が今年9月中に発表されます。(残りは来年春まで)日本のメディアには詳細な話は出ていません。(米ニューヨークタイムズ記事)温暖化は人為的なものによる可能性が高いというこれまでの結論が一段と強められています。

2) 汚染水漏れ、原因究明難航 規制委が福島原発視察

日本経済新聞8月23日記事。福島原発の事故現場で、事故処理に基づく汚染水の漏洩が広がっています。原子炉から地下水にしみ出したことに加え、処理済み水で保管したタンクからの漏洩も懸念されています。現時点で、福島他地域の周辺地域の線量上昇などの影響は見られないものの、長期的な海洋汚染が懸念されています。

3) 大飯活断層調査 科学的な議論に徹するべきだ

読売新聞8月24日社説。原子力規制委員会の活断層をめぐる判断の迷走が続いています。結論が出ません。社説はこれを「科学的な議論をしているのか」とその動きを疑問視しています。

4) 回り回って結局、エネルギーは原子力

ニューヨークタイムズ、8月20日掲載の論説。原題は「Coming Full Circle in Energy, to Nuclear」。米国のジャーナリスト、エデュアルト・ポーター氏の寄稿。オバマ政権の「グリーン・エネルギー政策」が失敗。いろいろ試してみて、結局、原子力は有力な選択肢として残ったという分析です。

5) 原子力のまやかし–温暖化の恐れによる推進は誤り

ニューヨークタイムズ、8月23日掲載の論説。原題は「The New Nuclear Craze-Fears of climate change are no reason to revive a doomed energy source」。使用済み核燃料の処理方法は決まらず、再生可能エネルギーを伸ばすべきだ。化石燃料の使用を規制を強めて当面はするべきだとの論調です。日本と同じような議論が、米国でも行われています。ただし、その議論はメディアで見る限り理性的です。

 

This page as PDF

関連記事

  • 企業で環境・CSR業務を担当している筆者は、様々な識者や専門家から「これからは若者たちがつくりあげるSDGs時代だ!」「脱炭素・カーボンニュートラルは未来を生きる次世代のためだ!」といった主張を見聞きしています。また、脱
  • 私はNHKに偏見をもっていないつもりだが、けさ放送の「あさイチ」、「知りたい!ニッポンの原発」は、原発再稼動というセンシティブな問題について、明らかにバランスを欠いた番組だった。スタジオの7人の中で再稼動に賛成したのは、
  • 2021年6月末、北米大陸の太平洋岸北西部で40℃を超える熱波が発生した。カナダのリットンでは6月27日に46.6℃を記録し、カナダでの過去最高気温を84年ぶりに更新した。また、米国オレゴン州のポートランドでも6月28日
  • 【要旨】(編集部作成) 放射線の基準は、市民の不安を避けるためにかなり厳格なものとなってきた。国際放射線防護委員会(ICRP)は、どんな被曝でも「合理的に達成可能な限り低い(ALARA:As Low As Reasonably Achievable)」レベルであることを守らなければならないという規制を勧告している。この基準を採用する科学的な根拠はない。福島での調査では住民の精神的ストレスが高まっていた。ALARAに基づく放射線の防護基準は見直されるべきである。
  • 東京大学公共政策大学院教授の関啓一郎氏に、「電力・通信融合:E&Cの時代へ — 通信は電力市場へ、電力は通信融合に攻め込めもう!」というコラムを寄稿いただきました。関教授は、総務官僚として日本の情報通信の自由化や政策作成にかかわったあとに、学会に転身しました。
  • 「CO2から燃料生産、『バイオ技術』開発支援へ・・政府の温暖化対策の柱に」との報道が出た。岸田首相はバイオ技術にかなり期待しているらしく「バイオ技術に力強く投資する・・新しい資本主義を開く鍵だ」とまで言われたとか。 首相
  • グレートバリアリーフのサンゴ被覆面積が増えつつあることは以前書いたが、最新のデータでは、更にサンゴの被覆は拡大して観測史上最大を更新した(報告書、紹介記事): 観測方法については野北教授の分かり易い説明がある。 「この素
  • アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)核燃料サイクルに未来はあるか 池田信夫アゴラ研究所所長の論考です

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑