イギリスは風力で電気代上昇中 ― 日本はどうなる?
「いまや太陽光発電や風力発電が一番安い」というフェイクニュースがよく流れている。だが実際のところ、風力発電を大量に導入しているイギリスでは電気代の上昇が止まらない。

zhongguo/iStock
英国のシンクタンクGWPFの報告によると、イギリスの再生可能エネルギーに関する事実上の補助金は、世帯当たりで年間415ポンド、日本円にすると62250円に上る。(1ポンド150円で換算)。
その内訳であるが、簡単に言うと、高価な風力発電などを導入するためには直接の補助金が必要だが、のみならず、出力が不安定であるために、送電網を強化する必要があるし、火力発電でバックアップするためにも、間接的に費用がかかる。

GWPFの報告書より
より正確にいうと、やや専門的になるが、CfD制度によるものが総額で23億ポンド(図)、再生可能エネルギー義務(RO)によるものが60億ポンド、容量市場によるものが10億ポンドで、合計して世帯数で割ると350ポンドになる。これに加えてバランシング・メカニズムのために、世帯あたり65ポンドがかかる。
イギリスの世帯あたり人数は日本とほぼ同じ2.4人である。日本の再生可能エネルギー賦課金はいま総額で2.4兆円で、1人あたり年間約2万円、世帯あたりなら約5万円になる。日本もイギリスも、1人当たり年間2万円ぐらいを支払っていることになる。(注:厳密には日本でも賦課金以上に消費者は費用負担しているがここでは簡単のため省く)。
再生可能エネルギーは高くつくのだ。
日本ではいま2030年に向けて洋上風力などを大量導入しようといった意見がある。だが、ただでさえ高い電気代がますます高騰しないよう、十分に注意せねばならない。

関連記事
-
1月29日、米国のシンクタンク National Centre for Energy Anlytics のマーク・ミルズ所長と元国際エネルギー機関(IEA)石油産業・市場課長のニール・アトキンソンの連名で「エネルギー妄想
-
現在の日本のエネルギー政策では、エネルギー基本計画(2014年4月)により「原発依存度は、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」こととなり、電力事業者は今後、原発の新増設が難しくなりました。原発の再稼動反対と廃止を訴える人も増えました。このままでは2030年以降にベースロード電源の設備容量が僅少になり、電力の供給が不安定になることが懸念されます。
-
世界は激変している。だが日本のエネルギー政策は変わることが出来ていない。本当にこれで大丈夫なのか? 脱炭素の前に脱ロシア? ウクライナでの戦争を受け、日本も「脱ロシア」をすることになったが、「脱炭素の前に脱ロシア」という
-
18世紀半ばから始まった産業革命以降、まずは西欧社会から次第に全世界へ、技術革新と社会構造の変革が進行した。最初は石炭、後には石油・天然ガスを含む化石燃料が安く大量に供給され、それが1960年代以降の急速な経済成長を支え
-
1992年にブラジルのリオデジャネイロで行われた「国連環境開発会議(地球サミット)」は世界各国の首脳が集まり、「環境と開発に関するリオ宣言」を採択。今回の「リオ+20」は、その20周年を期に、フォローアップを目的として国連が実施したもの。
-
福島第一原子力発電所の津波と核事故が昨年3月に発生して以来、筆者は放射線防護学の専門科学者として、どこの組織とも独立した形で現地に赴き、自由に放射線衛生調査をしてまいりました。最初に、最も危惧された短期核ハザード(危険要因)としての放射性ヨウ素の甲状腺線量について、4月に浪江町からの避難者40人をはじめ、二本松市、飯舘村の住民を検査しました。その66人の結果、8ミリシーベルト以下の低線量を確認したのです。これは、チェルノブイリ事故の最大甲状腺線量50シーベルトのおよそ1千分の1です。
-
東日本大震災から2年。犠牲者の方の冥福を祈り、福島第一原発事故の被害者の皆さまに心からのお見舞いを申し上げます。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 前回、論点㉔で、地域ごとに見ると気温は大きく変動してきた
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間