ウクライナの戦時に相次ぐインフラの「不具合」

2022年03月11日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

yangphoto/iStock

2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以来、世界各地でインフラの「不具合」が相次いでいる。サイバー攻撃が関与しているのか、原因は定かではないが・・・。

1. ドイツの風力発電

ドイツでは、2022年3月4日時点で、約6000基の風力発電機(総発電容量11ギガワット)の事業者が、風力発電機にアクセスできず、リモートコントロールができない状況に陥った

ヨーロッパ全域で影響を受けたタービンは、衛星の故障のため、一種の緊急モードとして厳しく制限された形でしか稼働していない。原因は、ロシアのウクライナ攻撃とほぼ同時に発生した衛星インターネットの不具合である。

衛星システムの不具合の原因については不明。この通信システムは、ヨーロッパ全土の約3万台の衛星端末で利用されているほか、多くの産業で利用されている。

誤作動の引き金は、ハッカーによる攻撃、送信信号の妨害、ウクライナの地上局の破壊などが考えられる。

2. 台湾で大規模停電

台湾では3月3日に大規模停電が起きた

米国のトランプ政権で国務長官を務めたポンペオ氏らの一団の歴史的な訪台中だった。この停電のため、ポンペオ氏と蔡英文相当の会談のライブ配信は中断された。

台湾経済省はこの停電は人為的ミスによるものだという。

ロイターより

3. トヨタの全工場停止

トヨタは、取引先の部品メーカーのシステム障害の影響で3月1日に全工場の稼働を停止した。サイバー攻撃を受け、それへの対応を行ったもの。

NHKより

4. 米国ガス会社へのサイバー攻撃

米国Fox Newsの取材によると、2月上旬に、液化天然ガス(LNG)の生産に関わるアメリカ企業20社近くがハッカーの攻撃を受けたらしい

標的になったのはシェブロン社やシェニエール・エナジー社を含む21社のアメリカ企業。米政府当局は、この攻撃がロシアから発せられたものであることの確認作業を行っている。

上記のうち、サイバー攻撃であるとはっきり判明しているのは、トヨタの件のみだ。だが、こうも相次ぐと、心穏やかではいられない。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 現状、地球環境問題と言えば、まず「地球温暖化(気候変動)」であり、次に「資源の浪費」、「生態系の危機」となっている。 しかし、一昔前には、地球環境問題として定義されるものとして
  • EUタクソノミーとは 欧州はグリーンディールの掛け声のもと、脱炭素経済つまりゼロカーボンエコノミーに今や邁進している。とりわけ投資の世界ではファイナンスの対象がグリーンでなければならないという倫理観が幅を効かせている。
  • 今週、ドイツ最大の週刊紙であるDie Zeit(以下、ツァイトとする。発行部数は100万部をはるかに超える)はBjorn Stevens(以下、スティーブンス)へのインタビューを掲載した。ツァイトは、高学歴の読者を抱えて
  • 東北電力原町火力発電所(福島県南相馬市)を訪れたのは、奇しくも東日本大震災からちょうど2年経った3月12日であった。前泊した仙台市から車で約2時間。車窓から見て取れるのはわずかではあるが、津波の爪痕が残る家屋や稲作を始められない田んぼなど、震災からの復興がまだ道半ばであることが感じられ、申し訳なさとやるせなさに襲われる。
  • 2022年11月にChatGPTが発表されてから2年と数か月、この間に生成AIはさらに発展し続けている。生成AIの登場で、Microsoft、Google、Amazon、Metaなどの大手テック企業が、2022~2023
  • 大型原子力発電所100基新設 政府は第7次エネルギー基本計画の策定を始めた。 前回の第6次エネルギー基本計画策定後には、さる業界紙に求められて、「原子力政策の180度の転換が必要—原子力発電所の新設に舵を切るべし」と指摘
  • 「再エネ100%の日」って何だ? 2025年5月21日付の日本経済新聞に、「東北地方、再エネ発電量急増で出力制御が頻発 電力需要の伸び低く」という記事が掲載されていました。記事の要旨は、「燃料費ゼロの太陽光発電が捨てられ
  • 野田佳彦首相は5月30日に開催された「原子力発電所に関する四大臣会合」 に出席し、関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼働について「総理大臣である私の責任で判断する」 と語りました。事実上、同原発の再稼動を容認するものです。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑