中国の石炭で造った太陽光パネルでCO2は減るのか

2022年11月19日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

chuyu/iStock

米国ブレークスルー研究所の報告書「太陽帝国の罪(Sins of a solar empire)」に衝撃的な数字が出ている。カリフォルニアで設置される太陽光パネルは、石炭火力が発電の主力の中国で製造しているので、10年使わないとCO2削減にならない、というのだ。

この報告書、分かり易い図が沢山あるので、それを用いてハイライトを紹介しよう。

まず基本。太陽光パネル製造には5つの段階がある:

5つの段階全ての生産量において、2021年には中国のシェアが圧倒的だ。とくにインゴットとウェハは殆どが中国だ:

中国は石炭を多用していて電気料金が低い。とくに新疆ウイグル自治区(Xinjiang)は電力量が大きく、大半が石炭火力で、電気料金はKWhあたりで6セント程度と安い:

以上は州別の統計に基づく計算だが、実際にはもっと石炭依存は直接的だ。この航空写真には、炭鉱のすぐそばに石炭火力発電所と太陽光パネル用のポリシリコン製造工場がある。ここでは強制労働が行われている疑いも濃厚だ。このような大規模な工場が幾つも見つかっている。

そして冒頭に述べたように、中国の電力を使って生産された太陽光パネルをカリフォルニアに設置すると、生産に要したCO2を削減するために9.8年もかかる、と言う計算になる。日本はどうなのか、気になるところだ:

今後、中国の独占状況は変わるだろうか?

いまのところ、世界のソーラーパネル生産における中国の独占は増々進む見込みだ。建設中や計画発表済みの太陽光パネル製造能力は殆どが中国によるものだ:

仮に全て米国で生産するとなると、ソーラーパネルのコストは約1.5倍(下図の0.51/0.34=1.5)となるという:

これぐらいで本当に実現できればよいのだが、環境規制の多い先進国で果たしてこれができるだろうか・・・。

これでも太陽光パネルを設置し続けるべきなのだろうか?

キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 朝鮮半島に「有事」の現実性が高まってきたが、国会論議は相変わらず憲法論争だ。憲法違反だろうとなかろうと、弾道ミサイルが日本国内に落ちたらどうするのか。米軍が北朝鮮を攻撃するとき、日本政府はそれを承認するのか――日米安保条
  • 震災から10ヶ月も経った今も、“放射線パニック“は収まるどころか、深刻さを増しているようである。涙ながらに危険を訴える学者、安全ばかり強調する医師など、専門家の立場も様々である。原発には利権がからむという“常識”もあってか、専門家の意見に対しても、多くの国民が懐疑的になっており、私なども、東電とも政府とも関係がないのに、すっかり、“御用学者”のレッテルを貼られる始末である。しかし、なぜ被ばくの影響について、専門家の意見がこれほど分かれるのであろうか?
  • 岸田首相肝いりのGX実行会議(10月26日)で政府は「官民合わせて10年間で150兆円の投資でグリーン成長を目指す」とした。 政府は2009年の民主党政権の時からグリーン成長と言っていた。当時の目玉は太陽光発電の大量導入
  • 「エネルギー資源小国の日本では、国策で開発したナトリウム冷却高速炉の技術を次代に継承して実用化させなければならない。それには高速増殖原型炉『もんじゅ』を運転して、技術力を維持しなければならない。軽水炉の運転で生ずるプルトニウムと劣化ウランを減らすためにも、ナトリウム冷却高速炉の実用化が必要だ」
  • 翻って、話を原子力平和利用に限ってみれば、当面の韓米の再処理問題の帰趨が日本の原子力政策、とりわけ核燃料サイクル政策にどのような影響を及ぼすだろうか。逆に、日本の核燃料サイクル政策の変化が韓国の再処理問題にどう影響するか。日本ではこのような視点で考える人はあまりいないようだが、実は、この問題はかなり微妙な問題である。
  • カナダが熱波に見舞われていて、熱海では豪雨で土砂災害が起きた。さっそく地球温暖化のせいにするコメンテーターや自称有識者が溢れている。 けれども地球の気温はだいだい20年前の水準に戻ったままだ。 図は人工衛星による地球の大
  • 原子力政策の大転換 8月24日に、第2回GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議が開催された。 そこでは、西村康稔経産大臣兼GX実行推進担当大臣が、原子力政策に対する大きな転換を示した。ポイントは4つある。 再稼
  • 検証抜きの「仮定法」 ベストセラーになった斎藤幸平著『人新世の「資本論」』(以下、斎藤本)の特徴の一つに、随所に「仮定法」を連発する手法が指摘できる。私はこれを「勝手なイフ論」と命名した。 この場合、科学的な「仮説」と「

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑