今更ですが、CO2は地球温暖化の原因ですか?

Sansert Sangsakawrat/iStock
地球温暖化の原因は大気中のCO2の増加であるといわれている。CO2が地表から放射される赤外線を吸収すると、赤外線のエネルギーがCO2の振動エネルギーに変換され、大気のエネルギーが増えるので、大気の温度は上がるといわれている。
しかし、これは本当に正しいのだろうか。物理化学の基礎知識を使って、もう一度、原点にもどって考えてみよう※)。
気体の温度は固体の温度とは違うのか?
固体の温度は、それらを構成する分子や原子などの粒子間の熱振動(振動エネルギー)の大きさを反映する。固体に温度計を接触させて、粒子間の振動エネルギーの大きさから温度を測ることができる。また、固体からは振動エネルギーの量に応じて赤外線が放射されるので、非接触型温度計で赤外線の量を測定して、温度を測ることもできる。
一方、気体の温度は、気体を構成する分子や原子などの粒子が空間を移動するエネルギー(並進エネルギー)を反映する。気体の中に温度計を入れて、温度計に衝突する粒子の並進エネルギーの大きさから温度を測ることができる。しかし、気体は赤外線をほとんど放射しないので、固体と異なり、非接触型温度計で温度を測ることはできない。
大気分子の並進エネルギーの大きさは何で決められるのか?
大気分子(N2、O2など)は常に地表との衝突を繰り返し、熱平衡状態になっている。昼間には、大気分子は大気よりも温度の高い地表からエネルギーを受け取り、並進エネルギーが増えて大気の温度は上がり、夜間には、大気分子は大気よりも温度の低い地表へ並進エネルギーを渡し、並進エネルギーが減って大気の温度は下がる。
大気分子の並進エネルギーは地表の温度で決められ、大気と地表とのエネルギーバランスのおかげで、昼間はそれほど暑くはなく、夜間はそれほど寒くはない。もしも大気がなければ、月の表面のように、昼間には110 ℃の高温になり、夜間には-170 ℃の低温になってしまう。
大気は地球を包む布団や温室のような役割を果たす。なお、石炭や石油などの化石燃料を燃焼した場合には、昼間でも夜間でも、大気分子は放出される熱エネルギーを受け取って、並進エネルギーが増えて大気の温度は上がる。
CO2の振動エネルギーは大気の温度を上げるのか?
大気に含まれるCO2が赤外線を吸収して、CO2の振動エネルギーが増えたとしよう。しかし、固体の粒子間の振動エネルギーと異なり、気体分子の振動エネルギーは分子内のエネルギーであって並進エネルギーではないので、温度には反映されない。
赤外線の吸収によって大気の温度が上がると考えるためには、分子間の衝突によって、わずか0.04%のCO2の振動エネルギーが、その2500倍ものすべての大気分子の並進エネルギーに変換される必要があるが、これはほとんど不可能である。
逆に、大気分子の並進エネルギーは赤外線を吸収しないCO2の振動エネルギーに変換される※)。この場合には、大気分子の並進エネルギーが減るので大気の温度は下がる。なお、赤外線を吸収したCO2が赤外線を再放射すると、大気分子の並進エネルギーは変わらないので、大気の温度は変わらない。
大気中のどのくらいのCO2が赤外線を吸収しないのか?
CO2の赤外線吸収のスペクトルのシグナル強度は、光源の赤外線の量と試料の長さに依存する。実験室では大量の赤外線を放射する光源を用いるので、10cmの長さの試料でもスペクトルを観測できる。
一方、地表から10cmの位置で地表から放射される赤外線を光源として用いると、赤外線の量が少なすぎてほとんどのCO2は赤外線を吸収しないので、スペクトルを観測できない。
もしも大気の上空(100km)から地表を観測すれば、試料の長さがとても長くなるので、ほとんどのCO2が赤外線を吸収しなくても、スペクトルを観測できる。つまり、大気に含まれるほとんどのCO2は赤外線を吸収せずに、大気分子の並進エネルギーを受け取る役割を果たす。
赤外線を吸収してスペクトルで観測されるわずかなCO2ではなく、赤外線を吸収しないほとんどのCO2に着目すれば、CO2が本当に地球温暖化の原因であるかどうかがわかる。
■
※)中田宗隆「分子科学者がやさしく解説する地球温暖化Q&A 181-熱・温度の正体から解き明かす」丸善出版(2024)。

関連記事
-
エネルギーをめぐる現実派的な見方を提供する、国際環境経済研究所(IEEI)所長の澤昭裕氏、東京工業大学助教の澤田哲生氏、アゴラ研究所所長の池田信夫氏によるネット放送番組「言論アリーナ」の議論は、今後何がエネルギー問題で必要かの議論に移った。
-
80万トンともいわれる廃棄ソーラーパネルの2040年問題 「有害物質によって土壌や地下水汚染が起きるのではないか?」についての懸念について、実際のところ、太陽光パネルのほとんどは中国製であるため、パネル性状の特定、必要な
-
「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか」については分厚い本を通読する人は少ないと思うので、多少ネタバラシの感は拭えないが、敢えて内容紹介と論評を試みたい。1回では紹介しきれないので、複数回にわたることをお許
-
COP26は成功、しかし将来に火種 COP26については様々な評価がある。スウェーデンの環境活動家グレタ・トウーンベリは「COP26は完全な失敗だ。2週間にわたってこれまでと同様のたわごと(blah blah blah)
-
日本の電力系統の特徴にまず挙げられるのは、欧州の国際連系が「メッシュ状」であるのに対し、北海道から 九州の電力系統があたかも団子をくし刺ししたように見える「くし形」に連系していることである。
-
冒頭に、ちょっと面白い写真を紹介しよう。ご覧のように、トウモロコシがジェット機になって飛んでいる図だ。 要するに、トウモロコシからジェット燃料を作って飛行機を飛ばす構想を描いている。ここには”Jet Fuel
-
日本での報道は少ないが、世界では昨年オランダで起こった窒素問題が注目を集めている。 この最中、2023年3月15日にオランダ地方選挙が行われ、BBB(BoerBurgerBeweging:農民市民運動党)がオランダの1つ
-
2023年8月22日付アゴラ記事「ガソリン補助金が9月以降も延長 岸田首相の「ガソリンポピュリズム」」より。 岸田首相は、エネルギー価格を抑制している補助金が9月以降なくなることに対する「物価が上がる」という苦情を受け、
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間