【データで確認】中東危機はアジアサプライチェーン危機である

FarzadFrames/iStock
アメリカとイスラエルがイランを攻撃し、イランがそれに反撃する形で、中東一帯に危機が広がっている。執筆現在で、ホルムズ海峡は事実上封鎖され、イランは米国の提示する停戦条件には全く応じないとしている。
海峡封鎖によってエネルギー危機が生じているが、これは日本のみならずアジア全体のエネルギー危機であり、更には、日本は直接のエネルギー輸入だけではなく、アジアに広がる製造業のサプライチェーンも危機に瀕することになる。
本稿では、このことについて、基本的なデータを確認していこう。なおデータの出所などの詳細については、本稿末のリンクを参照されたい。
まずは世界のエネルギー生産のシェアである(図1)。サウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦などの生産量が多くなっている。なお、この石油には、原油に加えて、ガス生産に随伴して産出される液体であるコンデンセート、NGLが含まれている。

図1
次にこのデータをまとめ直して、中東とそれ以外、それからホルムズ海峡を通過するものに分けてみる(図2)。

図2
ホルムズ海峡を通過するのは全体の20%程度である。加えて、中東で生産されるがホルムズ海峡を通過しない石油というのも10%程度ある。これは中東地域で消費されるか、あるいはパイプラインで域外に輸出される分である。
イランがホルムズ海峡を封鎖することによって世界の石油の供給の20%が吹き飛ぶことになる。さらに、ホルムズ海峡を通らない分についても、イランが石油生産設備に攻撃をかけたり、あるいはパイプラインに攻撃をかけたりすることで、イランが影響力を行使する可能性があり、そうすると最大で30%もの供給量が世界から失われることになる。
次に天然ガスについて見てみよう。まずは世界の生産量のシェアである。これを見ると、中東のウェイトは石油ほどには大きくない(図3)。

図3
ホルムズ海峡を通過する天然ガスは、主にカタールで生産される液化天然ガス(LNG)であるが、これは世界の天然ガス生産のうち2.5%にすぎない(図4)。ただし、中東として見ると、ホルムズ海峡を通過しない天然ガス生産が15.4%あることになる。これは、中東の域内で消費されたり、あるいは域外にパイプラインで輸出される分である。

図4
中東からのLNG輸出は、カタールやオマーンからのものであるが、この行き先はほぼアジア諸国となっている(図5)。中国、インド、日本、韓国、台湾などである。中東のLNG輸出は約100BCM(BCMは10億立方メートル)であり、その1割が日本に到達する。日本のLNG輸入も年間100BCM程度であるので、日本のLNG輸入の約1割が中東から来ていることになる。

図5
最後に、石油・ガス、それから窒素肥料について、アジア各国の消費量、輸入依存度、中東依存度について表にしておこう(表1)。依存度の高いところほど、赤い色を濃くしてある。

表1
この表では、化学的に分類している。石油は「炭化水素(CmHn)の液体」、ガスは「炭化水素(CmHn)の気体」、窒素肥料は窒素(N)であり、それぞれの量(日量バレルb/d, bcm, メガトン窒素MtN)で表示している。
なお窒素肥料という場合には、化石燃料から合成されたアンモニア、尿素、リン酸アンモニウム肥料であるMAP、DAPなどあらゆる流通形態があるが、ここではそれら全てを窒素の含有量で集計している。
日本は石油の中東依存度が95%と高く、この代替供給源を探すためにこれから奔走しなければならないだろう。それは原油の形態かもしれないし、原油ではなくて化学製品や燃料などの石油製品という形態かもしれない。
だがいずれにせよ、これを買いに奔走するときに、アジア諸国も同様な石油の供給不足に陥っていることから、奪い合いのような状況になることを覚悟しなければならない。中国はすでに燃料の輸出を停止している。韓国はナフサの輸出を禁止した。今後、このような動きが他の国や、あらゆる燃料、さらには化学製品や肥料などにも広がっていくかもしれない。
ガスについては、日本は中東依存度こそ高くないものの、やはりある程度の代替供給源を確保しなければならない。
更に、日本が欠乏するのはエネルギーだけではない。アジア諸国の燃料油やナフサなどが欠乏することによって、日本が使用するプラスチックなどの化学製品も影響を受けるだろう。またアジア諸国での工場の操業が止まることによって、日本への部品や部材の供給も止まってしまうかもしれない。
このようにアジア全体でエネルギー、特に石油が欠乏し、化学原料が欠乏し、それによってあらゆる製品のサプライチェーンが寸断されるかもしれない、ということが今回の中東エネルギー危機の本質である。
これを打開するためには、日本は①石油をはじめエネルギーの節約をすること、②原子力発電と石炭火力発電をフル稼働すること、更には③石油に加えてLNGも特にアジア域外からの調達について努力をすること、が必要になってくる。もしもLNG供給に余裕が生じるようであれば、アジア諸国に転売して、アジア域内の諸国の製造業を助けることで、日本のサプライチェーンも救済できることになる。
【参考】
情報源リンク(ChatGPTを使用して作成したエクセルファイル)
- 図1〜図4:世界の石油・天然ガス生産シェア(国別)と中東依存・ホルムズ依存 中東危機はアジアエネルギー危機であることをデータで確認
- 図5:中東LNG輸出先(国別)中東危機はアジアエネルギー危機であることをデータで確認
- 図6:アジア諸国の石油・ガス・肥料の輸入・中東依存度_脚注版 中東危機はアジアエネルギー危機であることをデータで確認
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