パニック(下) — 米国政府は危険認定のミスをした

2014年01月14日 14:00
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ジャーナリスト・ノンフィクション作家(米ワシントン・ポスト紙 元東京特派員)

12月3日放送の言論アリーナ「米国ジャーナリストの見る福島、原発事故対策」に、出演した米国のジャーナリスト、ポール・ブルースタイン氏が、番組中で使った資料を紹介する。(全3回)

(上)、(中)より続く。

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調査を進める中で、私は3・11直後に起こった、大きな誤りを知った。

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2011年3月16日に、米国の原子力規制委員会のトップが福島第一原発の状況について、日本政府が示したよりも、はるかに悪い状況にあるということ、公の場で強調した。

グレゴリー・ヤツコ米原子力委員会委員長は、福島第1原発4号機の核燃料プールの水がなくなっている可能性にあることを、議会で証言している。これは、放射線の漏洩が起こっていることを意味する。

そのために米国市民の避難範囲を、日本政府が示したものよりも広くするべきと、ヤツコ氏は述べた。

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このエピソードは、メディアの大きな注目を集めた。(私の知る限り、そう思える)

日本政府は、燃料プールが空であるというヤツコ氏の主張についてすぐに反論をした。ところが、ワシントンと東京の見解の興味深い違いは、その日のうちにメデイアに広がり、日本政府の批判にむすびついた。

CNNの放送より。
日本政府の発表によって、信頼性の懸念が拡大しています。

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よく知られているようにヤツコ氏が誤っていたことは明らかになった。プールはずっと満水だった。ヤツコ氏の議会証言から3カ月後、米原子力規制委員会は、2011年6月中旬にこのことを認めた。

このエピソードは、メディアでほとんど関心をひかなかった。

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大きな問題が、私が検証した公文書で見つかった。3月16日におけるNRC(米原子力規制委員会)の電話会議の複写が示すところでは、議会証言の数時間後に、ヤツコ氏は彼の主張に疑問を示す文章を受け取っていた。

東京のNRCチームのチャック・カストーとのやりとりである。

ヤツコ:つまり問題点は、あなたは、プールは空であるともはや思っていないということですね。私に報告がありましたか。

カストー:言ったと思います。少なくとも、昨日5時時点では、プールの中にある程度の水は残っていました。

ヤツコ:分かりました。けど、今私は、プールは空であると言ってしまったのです。

カストー:ええ、知っています。

ヤツコ:そのことは不正確だと思いますか。

カストー:私たちが言えることは、・・・つまり結論づけられないということです。実際に、どっちみち、そうはいえないでしょう。

(次のスライドに続く)

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(前のスライドから続く)

ヤツコ:じゃあ私が空だと言ったのは間違いなのですね。それはあなたが言ったことではないのですか。そこが問題ですが、はっきり言ってください。

カストー:空だと言ったのは、おそらく不正確です。

ヤツコ:分かりました。

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ヤツコ氏がするべきであったことは、自分の証言に疑いがあるのならば、ニュースメディアに対してすぐにそれを表明することであった。そうしたならば、彼は日本政府の信用性に対する損害を最小限に食い止められたであろう。しかし、彼はそうしなかった。

次の文章は、ヤツコ氏が、自分の信用性について、疑問を持っている証拠であろう。

発言者:私たちはプールが空であったというべきではなかったかもしれません。

ヤツコ:ろうそう。分かっています。皆、私の信頼性を問題にしています。それは問題です。

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ヤツコ氏の証言で、使用済核燃料の保管プールの水が空になっているということの影響はどのようなものだったのだろうか。

▼ メディアによる日本政府の信頼性について、どのような影響があったのだろうか。つまり、福島を報道する日本のメディアにどの程度の影響があったのだろうか。

▼ 日本の政府の国民ヘの信頼性に、どの程度の影響があったのだろうか。つまり、日本政府が保証した安全性について信じられなくなった日本の人々に、感情面のストレスを与えてしまったのではないだろうか。

▼ これらの答えについて、正確な評価をした回答をすることは不可能であろう。日本政府は、コミュニケーションについて適切に行うことができず、信頼の崩壊について批判されるような行動をしていた。

▼ しかし、確かにヤツコ氏の証言は、ある程度の大きな影響があった。日本政府の広報の信頼性に影響があった。

▼ そうならば、この話は多くの人に関心を持ってもらうべきと考えた。

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調査内容を示すためにスレートとニューズウィークジャパンに寄稿した。

ニューズウィーク紹介記事。本文、ネットに未公開。池田信夫氏の紹介記事「アメリカ政府の誤った退避勧告」。

「Fukushima’s Worst-Case Scenarios–Much of what you’ve heard about the nuclear accident is wrong」

「How a US mistake after Fukushima hurt Japan」

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いくつかの結論

▼2011年3月において、日本のメディアは、外国メディアより、適切な情報を提供した。

▼ 東京はこれまで危険になったことはない。米国政府の考えた最悪のシナリオに反映されたような科学的知見に基づけば、そうなることは自明だった。反原発の活動家が唱えたような東京は危険で、脱出するべきだという主張は、意味がなかった。

▼ 特に日本政府要人の使った「悪魔の連鎖」という表現などの誇張した報道などがあった。米国政府の最悪のシナリオをメディアが無視したという事実のように、日本以外のメディアの福島をめぐる報道は、問題を悪化させてしまった。

▼ 私のかつての職業であった日本での外国特派員は、日本に害を与えてしまった。そして米国政府も問題のある行動をした。この問題に責任があると思う。

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それではどちらの方がよいだろうか

▼ 潜在的な危険を強く強調する懐疑的なメディアがよいのか。

▼ 危険を強調としない、受け身のメディアがよいのか。

▼ 繰り返すが、どちらもよくない。

▼ しかし、福島事故の場合に大きく危険を示したメディアは、考えられるよりも悪い悪影響を与えてしまっている。

(2014年1月14日掲載)

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