IPCC報告の論点㊲:これは酷い。海面の自然変動を隠蔽
IPCCの報告が昨年8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。

Revolu7ion93/iStock
米国オバマ政権の科学次官を務めたスティーブ・クーニンの講演(ビデオ、講演録)での指摘を紹介しよう。
ビデオだと16:26付近である:

画面右下にあるが、2013年の第5次報告(AR5)では、「1920年から1950年の間にも1993年から2010年までと同様な速い海面上昇があった」、となっている。
しかし、今般2021年の第6次報告(AR6)では、右上のFigure SPM.8(注:SPMとは政策決定者向け要約の意味)を見ても、このことは判然としない。それどころか、画面左上にあるSPM の文を見ると、
1901年から1971年は年間1.3ミリ(誤差範囲は0.6から2.1ミリ)
1971年から2006年は年間1.9ミリ(誤差範囲は0.8から2.9ミリ)
2006年から2018年は年間3.7ミリ(誤差範囲は3.2から4.2ミリ)
となっていて、いかにも海面上昇の速さが加速しているかのように書いている。
だがこの元になっている論文を見ると画面左下の図のようになっていて、海面上昇速度(GMSL: Global Mean Sea Level、青い線。青い影は誤差範囲)はやはり1920年から1950年にかけてかなり速かったことが分かる。
酷いのはこのIPCCの時間区分が恣意的すぎることで、「1901年から1971年」「1971年から2006年」「2006年から2018年」と3つに区分することで、平均操作によって、いかにも一貫して海面上昇速度が上がってきたかのように見せている訳だ。
クーニンは「学生がこんなレポートを出して来たら落第にする」と批判し、レビュープロセスに問題があるとしている。
なお詳しくは原論文に譲るが、海面水準が変わる理由は氷河や氷床の融解など(画面左下図中の赤線)と海水の熱膨張(図中オレンジ線)がある。そして、下図のdのように、1920年から1950年にかけては、グリーンランドの氷床融解や世界中の氷河の融解がいまよりも盛んであったと推計されている。

■
1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。
【関連記事】
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