温暖化問題に関するG7、G20、BRICSのメッセージ①

2024年11月06日 06:50
アバター画像
東京大学大学院教授

Heiness/iStock

11月11日~22日にアゼルバイジャンのバクーでCOP29が開催される。

COP29の最大のイシューは、途上国への資金援助に関し、これまでの年間1000億ドルに代わる「新たな定量化された集団的な目標(NQCG)」に合意することであり、資金援助拡大に向け、途上国が先進国に攻勢をかける構図となる。

他方、先進国はCOP28におけるグローバル・ストックテイクの成果を踏まえ、1.5℃目標を射程に収めるためのNDCや長期目標の野心レベルの引き上げをプッシュしたいと考えている。

先進国の目論見が奏功するかどうかはG7プロセス、G20プロセス、更には先般のBRICSプロセスで発出されたメッセージを比較すれば明らかである。

野心的メッセージ満載のG7共同声明

本年6月14日にイタリアのプーリアで開催されたG7サミットの首脳声明は、

「世界の気温上昇を1.5℃ に抑制する目標を達成するため、この重要な10年間で、世界の温室効果ガス排出量を2019年比で約43%削減し、2035年までに60%削減する取り組みに大きく貢献する」

「遅くとも2025年までに世界の温室効果ガスをピークに達し、2050年までにネットゼロを達成するためには、これは集団的努力であり、すべての国、特に主要経済国のさらなる行動が必要である」

「野心的な1.5℃に沿ったNDCを提出することを約束する。これは集団的な努力であることを強調し、我々は、全ての国、特にG20や他の主要経済国に対し、同様の努力を行うよう求める」

と述べた。

また発電部門の脱炭素化に関しては、

「2035年までに電力セクターの完全な脱炭素化もしくは大半の脱炭素化を達成し、2030年代前半、もしくは各国のネット・ゼロの道筋に沿って、1.5℃の気温上昇の制限を維持することと整合的なスケジュールで、エネルギーシステムにおける既存の未熱存石炭発電を段階的に廃止(フェーズアウト)するという我々のコミットメントを再確認する。他の国々とパートナーに対し、可能な限り早期に、新規の稼働停止していない石炭火力発電所の許可と建設を終了させるために、我々と共に参加する ことを改めて要請する」

と述べた。

1.5℃、2050年カーボンニュートラルを至高の目標とし、石炭火力のフェーズアウトを謳い、G7のみならず、他国に同様の行動を求めるという点で昨年の広島サミットと同様である。

数値目標のないG20共同声明

G7が脱炭素化やエネルギー転換に前のめりのメッセージを出すのに対し、中国、インド、ブラジル、南ア、サウジ、ロシア等を含むG20のメッセージはトーンが異なる。

G20リオサミット(11月18〜19日)の首脳声明は本稿執筆時は未だ発出されていないが、その内容は10月3日にリオ・デ・ジャネイロで開催された「環境・気候持続可能性大臣会合」(10月3日)、10月4日にフォス・ド・イグアスで開催された「エネルギー転換大臣会合」(10月4日)の閣僚声明を読めば概ね見当はつく。

まず環境・気候持続可能性大臣会合の閣僚声明には「1.5℃目標」「2025年ピークアウト」「2035年60%減」「2050年カーボンニュートラル」への言及は全くない。

あるのは、

  • 我々の指導的役割に留意しつつ、UNFCCCの目的を追求し、異なる国情に鑑み、衡平性、共通するが差異ある責任の原則及びそれぞれの能力を反映しつつ、パリ協定及びその気温目標の完全かつ効果的な実施を強化することにより、気候変動に取り組むとの我々の確固たるコミットメントを再確認する
  • 入手可能な最善の科学を考慮に入れ、パリ協定の全ての柱について野心的な行動をとることの重要性を強調する
  • COP28における野心的でバランスのとれた成果、UAEコンセンサス、パリ協定の下での第1回グローバル・ストックテイク(GST-1)の成果を歓迎し、全面的に賛同する

といった一般論である。

エネルギー転換大臣会合においては、「クリーンで、持続可能で、公正で、手ごろな価格で、包括的なエネルギー転換の加速」や「世界的なエネルギー転換のための資金ギャップを埋めるために、あらゆる資金源とチャネルからの投資を触媒し、拡大する必要性、特に途上国におけるエネルギー転換技術とインフラへの既存投資と追加投資のリスク回避、動員、多様化の緊急性」等が強調される一方、クリーン化石燃料あるいは石炭火力の段階的廃止(フェーズアウト)という文言が全く入っていない。

いつものことであるが数値目標、野心レベル引き上げ、化石燃料フェーズアウトに熱心なG7に対してG20はどこか冷めている。

特に昨年のG20デリーサミットにおいてIPCCのモデル計算の結果としつつも2025年ピークアウトに留意されていたこと、排出削減対策を講じていない石炭火力の段階的削減(フェーズダウン)というCOP26の合意内容が再掲されていたことと比べても、今回のG20のメッセージはG7に比して分量も少なく、内容面でも非常に「あっさりと」した印象を受ける。

(その②につづく)

This page as PDF

関連記事

  • IPCC報告には下記の図1が出ていて、地球の平均気温について観測値(黒太線)とモデル計算値(カラーの細線。赤太線はその平均値)はだいたい過去について一致している、という印象を与える。 けれども、図の左側に書いてある縦軸は
  • アゴラ研究所の運営するネット放送「言論アリーナ」を公開しました。 今回のテーマは「固定価格買取はどこへ行く」です。 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)は大幅に見直されることになりました。今後の電力供給や電気料
  • 菅首相が10月26日の所信表明演説で、「2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す」旨を宣言した。 1 なぜ宣言するに至ったか? このような「2050年ゼロ宣言」は、近年になって、西欧諸国
  • 「持続可能な発展(Sustainable Development)」という言葉が広く知られるようになったのは、温暖化問題を通してだろう。持続可能とは、簡単に言うと、将来世代が、我々が享受している生活水準と少なくとも同レベル以上を享受できることと解釈される。数字で表すと、一人当たり国内総生産(GDP)が同レベル以上になるということだ。
  • 本年1月に発表された「2030年に向けたエネルギー気候変動政策パッケージ案パッケージ案」について考えるには、昨年3月に発表された「2030年のエネルギー・気候変動政策に関するグリーンペーパー」まで遡る必要がある。これは2030年に向けたパッケージの方向性を決めるためのコンサルテーションペーパーであるが、そこで提起された問題に欧州の抱えるジレンマがすでに反映されているからである。
  • エネルギー政策をどのようにするのか、政府機関から政策提言が行われています。私たちが問題を適切に考えるために、必要な情報をGEPRは提供します。
  • 2026年新年早々、世界はトランプ政権のベネズエラ侵攻とマドウロ大統領の身柄確保に驚かされた。国家安全保障戦略に明記された西半球重視を実行に移した形である。 更に1月6日には大統領メモランダムにおいて66にのぼる国際機関
  • 原子力問題は、安倍政権が残した最大の宿題である。きのう(9月8日)のシンポジウムは、この厄介な問題に新政権がどう取り組むかを考える上で、いろいろな材料を提供できたと思う。ただ動画では質疑応答を割愛したので、質疑のポイント

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑