石炭火力発電について今一度おさらいしましょう

emma/iStock
ポイント
- 石炭火力発電は、日本の発電の3分の1を担っている重要な技術です。
- 石炭火力発電は、最も安価な発電方法の1つです。
- 石炭は、輸入先は多様化しており、その供給は安定しています。
- 日本の火力発電技術は世界一優れたものですが、2019年以来、CO2規制のために国内での建設が停止し、海外の事業も抑制されたことで、技術力を急速に失っています。
- 日本の火力発電技術は、世界一クリーンなものです。ただし、近年では中国に急速に追いつかれています。
- CO2排出を半減以下にする石炭火力発電は、技術開発はされていますが、コストが下がる見込みはなく、普及すると考えるのは現実的でありません。
- 石炭火力発電は、CO2を排出します。しかし、CO2の害は誇張されています。
- 石炭火力発電による安全保障や経済性のメリットは、CO2というデメリットを上回ります。
- 日本政府は、石炭火力を否定する今の政策を改め、国内においても、海外においても、石炭火力発電を積極的に推進するよう、方針を転換すべきです。
最近になって、「やっぱり石炭火力発電は重要だよね」という意見をよく聞くようになりました。一貫して私はそう申し上げてきたので、嬉しいことなのですが、時々、その事実関係については思い違いがあったり、贔屓(ひいき)の引き倒しになっていることがあります。
そこで、本稿では、改めて、石炭火力発電について、その事実関係について分かりやすく説明しようと思います。
まず、日本にとって石炭火力発電所が重要な役割を果たしていることは間違いありません。日本の電気の3分の1は、今、石炭火力発電から作られています。
石炭は、そのほぼ全量が海外からの輸入ですが、輸入する元になる国はオーストラリアなど複数あり、地理的に偏っていない。このことは、日本のエネルギー安全保障上、重要なことです。これに対して、石油はその95%以上が中東に依存していて、しかも、ペルシャ海峡、マラッカ海峡などのチョークポイント(狭い海峡)を通って輸入されるので、供給途絶の心配があります。
そして何より、石炭はとても安い。このため、石炭火力発電はあらゆる発電方法の中で最も安い部類に入ります。図は発電コストといって、1kWh(キロワットアワー)の電気を作るために何円かかるかというものです。
1kWhというのは、1kW(キロワット)の電気を1時間使った場合ということで、例えばヘアドライヤーが1kWだとして、それを1時間使った時の電気の量です。それだけの電気を作るのに、図からわかるように、石炭は9円しかかかりません。

図 「データが語る気候変動問題のホントとウソ」より引用
これは天然ガス火力発電所とほぼ同じ水準です。これに比べて、太陽光発電や風力発電を使うと、はるかに電気代は高くなります(これについて詳しくはこちら)。
さて、このように優れた石炭火力発電ですが、日本政府は、脱炭素を理由として、その建設を停止してしまいました。すなわち、2019年以来、環境省は、石炭火力発電所について、環境アセスメントでその建設を認めないという方針をとっています。いま日本政府は排出量取引制度の導入を進めていますが、これはますます石炭火力事業を困難にするでしょう。
また、日本はかつて、バングラデシュやベトナムで石炭火力発電所建設の案件を進めてきましたが、このような海外の石炭火力事業も、新規には実施しない方針になっています。
これは日本の技術力にも影響しています。かつて日本は、世界一効率が高くクリーンな石炭火力発電技術を有していました。しかし、ここ数年、国内で建設することも出来ず、海外での事業についても実施しない、という方針になったために、大事な技術力が失われつつあります。これは憂慮すべき事態です。
また、そうこうしているうちに、世界の石炭火力発電事業は中国が席巻してしまいました。
日本は方針を転換して、国内でも、海外でも、石炭火力発電事業を推進すべきです。こうすることで、海外の人々も、日本のクリーンな石炭火力技術を利用することができる。これは海外と日本双方にとって好ましいことです。貧しい国は経済開発の為に安定的で安価な電気が必要であり、石炭火力発電は、そのために重要な役割を果たすことが出来るのです。
ところで、この「日本の技術がクリーンである」ということについて、時々、誤解されていることがあります。
まず第1に、日本の技術は確かに世界一クリーンですけれども、日本政府が石炭火力イジメをしている間に、海外勢、特に中国は大変に技術力が向上しました。何しろ中国は毎年、莫大な量の石炭火力発電所を建設していますので、その技術力も向上したのです。このため、日本と中国の差というのは大幅に縮まりました。
それから第2に、「クリーン」と言うことの意味についてです。ここで私がクリーンと言っている意味は、排気ガスから大気汚染物質が殆ど出ないとか、排水が浄化されてきれいになっている、といった意味です。
時々、誤解して、「日本の火力発電所はほとんどCO2を出さない」という方がいます。実際には、日本の既存の火力発電所はCO2を出しています。石炭は炭素の塊ですから、燃やせば、CO2はたくさん出ます。これは最新鋭の高効率の火力発電所でも同じことで、やはり石炭火力発電所は、天然ガス火力発電所に比べれば、同じ発電量(kWh)あたりで2倍ぐらいのCO2は排出されます(図を参照してください)。
CO2排出を半減以下にする石炭火力発電所というものも、アイデアとしては存在しており、日本政府はいま、技術開発を進めています。ただし残念ながら、これはいずれもコストが下がる見込みは全く立っていません。
方法としては、CCSというものがあり、これは石炭火力発電所から出るCO2を地中に埋めるというものです。ただしこれは、排煙からCO2を回収するためにお金がかかります。このため、発電コストは普通の石炭火力に比べて倍以上になります(図)。
また、石炭にアンモニアを混ぜて燃やして発電するという方法もありますが、これも、アンモニア自体が高価になるのと、更にはアンモニアを製造する際のCO2を回収して地中に埋めたりするので、やはり発電コストは倍以上になります(図)。このため、残念ながら、これらの技術は、実際にはほとんど普及することはないでしょう。
石炭火力発電所を使うということは、やはりCO2が出るということなのです。
しかし、だからといって石炭火力発電所を否定するというのは、完全に間違っていると思います。
その理由ですが、まず、CO2による被害なるものは、かなり誇張されています。そして日本が2050年にCO2排出をゼロにするとしてもせいぜい0.006度しか下がらない(このことについて詳しくは拙著をご覧ください)。
その一方で、安定的で安価な電力供給を実現する、そのためには、日本にとって、石炭火力発電の魅力は捨てがたいものです。
もしも石炭火力発電を放棄してしまえば、日本の電力供給は極めて脆弱になります。原子力発電所はすべてが再稼働しても全体の2割程度しか電力を供給できません。今後建設を進めるとしてもそうすぐには出来ず、時間がかかります。太陽光発電や風力発電では電気代は大変に高くなります。
液化天然ガスによる火力発電はありますが、液化天然ガスは極めて低い温度で保管する必要があるため、長期間の貯蔵には向いておらず、日本にある液化天然ガスの在庫は2週間分しかありません。中東で有事が起きたり、台湾で有事が起きたりした場合でも、日本は、石炭火力発電さえ堅持していれば、電力供給を維持することができます。
日本政府は、石炭火力発電を否定する今の政策を改め、国内においても、海外においても、積極的に建設を進めていくよう、方針を転換すべきです。
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