今週のアップデート — 核燃料サイクルへの疑問(2013年2月13日)
今週のアップデート
原子力の論点、使用済核燃料問題についてのコラムを紹介します。
1)「非在来型ウランの埋蔵量について」
アゴラ研究所の池田信夫氏の論考。日本の高速増殖炉計画は「ウランが世界で足りなくなる」ということを根拠に行われてきました。ところが今、世界で新しい形のウランが調達でき、ウランが数百年使い続けられる可能性が浮上しています。高速増殖炉は計画の根拠をなくしているとの指摘です。
2)「核のゴミ、対策を考える時間はたっぷりある—NHK特集への疑問」
GEPR編集部のコラム。2月10日放送のNHKスペシャル「核のゴミはどこへ–検証・使用済核燃料」の批判的検証です。そしてそれにより世間に広がる核燃料サイクルへの思い込みへ示しています。
番組は放射性廃棄物問題について「解決はほぼ不可能」「結論を出さなければ原発を使うべきではない」というメッセージを出しました。その考えは、合理的ではないと、このコラムはまとめています。
3)「効率的な街の功罪…「省エネ」「低炭素」、コンパクト・シティの流行が切り捨てるもの」
GEPR編集部のコラム。省エネでコンパクト・シティという考えが流行していますが、効率化によって切り捨てられることも検証しようという呼びかけです。
4)「気候変動交渉と通商交渉」
提携する国際環境経済研究所(IEEI)のコラムの転載です。経産省で気候変動交渉にかかわり、今は日本貿易振興機構(JETRO)のロンドン事務所長である有馬純氏のコラム。多国間交渉はいつも、同じ混乱の道をたどるようです。
今週のリンク
1)「原子力エネルギーの展望」
経済協力開発機構・原子力エネルギー機関(OECD・NEA)の2010年11月のリポートです。福島事故前のリポートです。原子力は地球温暖化とエネルギーの大量供給の為に有効な手段であると述べています。上記の池田氏の指摘のように、ウランの利用可能年数が、新しい技術を使えば、伸びる可能性を指摘しています。
2)G1サミットセッション「福島で考えるエネルギーの未来」。ニコニコ生放送2月9日配信。池田信夫アゴラ研究所所長に加え、河野太郎衆議院議員、澤昭裕国際環境経済研究所所長が、日本のエネルギーについて、語り合いました。原発への考えは違うものの、核燃料サイクル問題の採算性への疑問など、多くの一致点もありました。対話の可能性があります。
3)「原子力 北欧の選択(1) フィンランド 過疎地に雇用—最終処分静かな賛成」
河北新報の2月11日記事。「原子力 北欧の選択(2)フィンランド 規制機関への評価/高い独立性 国民の信頼」冷静に問題に向き合う。原子力問題で反対派も含めて冷静な議論を北欧が積み重ねていることの紹介記事です。
産経新聞2月11日社説。原子力規制委員会の国会同意人事で、委員の所信の検証が必要と言う指摘です。活断層をめぐる混乱は、一部委員のかたくなな姿勢によるものとされます。この社説は正論です。
5)シンポジウム「東京電力福島第一原子力発電所事故における初期内部被ばく線量の再構築」。放射線医学総合研究所が行ったシンポジウムの講演の要旨集。住民への測定の教訓などが盛り込まれています。
6)「LNG高騰が招き寄せる製造業の復活」
日本経済新聞2月10日記事。天然ガス産出国になり、通貨高と産業空洞化を招いたオランダと対比しながら、製造業が円安で息をついた日本の今後を展望しています。

関連記事
-
12月にドバイで開催されたCOP28はパリ協定発効後、最初のグローバル・ストックテイクが行われる「節目のCOP」であった。 グローバル・ストックテイクは、パリ協定の目標達成に向けた世界全体での実施状況をレビューし、目標達
-
地球温暖化問題、その裏にあるエネルギー問題についての執筆活動によって、私は歴史書、そして絵画を新しい視点で見るようになった。「その時に気温と天候はどうだったのか」ということを考えるのだ。
-
朝鮮半島に「有事」の現実性が高まってきたが、国会論議は相変わらず憲法論争だ。憲法違反だろうとなかろうと、弾道ミサイルが日本国内に落ちたらどうするのか。米軍が北朝鮮を攻撃するとき、日本政府はそれを承認するのか――日米安保条
-
9月25日、NHK日曜討論に出演する機会を得た。テーマは「1.5℃の約束―脱炭素社会をどう実現?」である。 その10日ほど前、NHKの担当ディレクターから電話でバックグラウンド取材を受け、出演依頼が来たのは木曜日である。
-
電力中央研究所の朝野賢司主任研究員の寄稿です。福島原発事故後の再生可能エネルギーの支援の追加費用総額は、年2800億円の巨額になりました。再エネの支援対策である固定価格買取制度(FIT)が始まったためです。この補助総額は10年の5倍ですが、再エネの導入量は倍増しただけです。この負担が正当なものか、検証が必要です。
-
先日、ロンドンの著名なシンクタンクが主催するハイレベルのフリーディスカッションに参加してきた。テーマはエネルギーを巡る4つの相克(Quadlilemma)である。4つの相克とはエネルギー安全保障、環境保全、国際競争力、エネルギーアクセスを指す。エネルギーの安定供給を図りながら、温室効果ガスも削減し、エネルギーコストを抑えて競争力を確保し、かつエネルギーアクセスを有していない人々(世界の人口の26%)へのエネルギー供給を確保していくことはミッション・インポッシブルに近い難題である。
-
公開質問状の背景 先週末の朝、私のところに標記の文書(小泉 進次郎氏への公開質問状)が舞い込んできた。発信者は、自民党自民党総合エネルギー戦略調査会会長代理で衆議院議員の山本 拓氏である。曰く、小泉環境大臣は9月17日、
-
ドイツの風力発電産業は苦境に立たされている(ドイツ語原文記事、英訳)。新しい風力発電は建設されず、古い風力発電は廃止されてゆく。風力発電業界は、新たな補助金や建設規制の緩和を求めている。 バイエルン州には新しい風車と最寄
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間