トランプの公約②:パリ協定は離脱しエネルギードミナンスを達成する

2024年02月09日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

「もしトランプ」が大統領になったら、エネルギー環境政策がどうなるか、これははっきりしている。トランプ大統領のホームページに動画が公開されている。

全47本のうち3本がエネルギー環境に関することだから、トランプ政権はこの問題を重要視していることが分かる。今回は第2回目。

(前回:トランプの公約①:アメリカの光熱費を世界一安くする

【動画】トランプ大統領、アメリカを再びエネルギー自立させるために

一言でポイントを述べると、「バイデンのグリーンディールは米国経済を痛めつけ中国を利している。パリ協定は離脱する。気候が破局するという政治的な予測に怯えることなく、アメリカのエネルギーを復活させる」ということだ。

以下、演説の抄訳を付けておこう:

ジョー・バイデンによるアメリカのエネルギー戦争は、過去58年間で最悪のインフレを引き起こした主な要因のひとつであり、アメリカの各家庭に大きな打撃を与えている。バイデンは、エネルギー自給、そしてやがては世界でのエネルギードミナンス(優勢)を達成するために私がとった行動をことごとく覆した。

彼はキーストーンXLパイプラインをキャンセルし、米国にとっては不公平で、他国にとっては好都合で、我々にとっては不都合な、恐ろしいパリ協定に再び参加した。彼は、石油、ガス、石炭の新規生産に巨大な障害物を設置した。

事実上、バイデンの反米エネルギー十字軍は、あらゆるものに対する大増税である。エネルギーコストが上がれば、食品、原材料、輸送、建設、製造、その他すべての価格が上がる。

ジョー・バイデンの急進的な左派グリーン・ニューディールによって、今最も恩恵を受けている国は中国である。アメリカのエネルギー価格の高騰は中国への贈り物であり、アメリカの重工業が海外に流出する大きな要因となっている。先進的な製造国になりたければ、低コストのエネルギーを生産できなければならない。それなくして豊かな国にはなれない。

そして、もし米国を非工業化したいのであれば、ジョー・バイデンが無意識のうちに行なってきたように、可能な限りエネルギーコストを引き上げようとするだろう。それは私には理解不能だ。

バイデンのエネルギー政策は中国のエネルギー政策なのだ。

だから中国は、あらゆる愚かなグローバリズムの気候変動協定にサインし、そしてすぐにそれを破るのだ。彼らは協定を守らない。私がホワイトハウスに戻ったら、必ずや親米的なエネルギー政策を復活させるだろう。

我々は再びパリから離脱する。そして、価格を急速に引き下げるため、最大限のスピードに焦点を当て、すべての価値あるエネルギー・インフラ・プロジェクトの承認を迅速に発行する。何千人ものアメリカ人を明日の発電所、パイプライン、送電網、港湾、製油所、出荷ターミナルの建設に従事させるのだ。ほんの2年半前のように、再び非常に安価なエネルギーが手に入るのだ。

この偉大な事業はまた、気候が破局するという政治的な予測に不合理に怯えるのではなく、アメリカの若者たちに希望と志を取り戻す助けとなるだろう。低賃金や左翼的なおざなりプロジェクトのために労働するのではなく、2年半前のように、アメリカの若者に本当の意味と仕事を見つけるチャンスを再び与え、力強く、豊かで、生産的で、活力にあふれ、近代的で、独立的で、自由なアメリカの屋台骨を築くビジョンを私は持っている。

トランプ次期政権の下で、我々は国として再び偉大になるだろう。アメリカの雇用とアメリカンドリームの復活は、アメリカのエネルギーの復活によってもたらされる。

アメリカほど足下に豊かな資源を蓄えている国はない。我々はそれを使い、利益を得て、それとともに生きていく。そして再び豊かになり、再び幸せになる。そして再び誇りに思うだろう。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 国際エネルギー機関(IEA)が「2050年にネットゼロ」シナリオを発表した。英国政府の要請で作成されたものだ。急速な技術進歩によって、世界全体で2050年までにCO2の実質ゼロ、日本の流行りの言葉で言えば「脱炭素」を達成
  • 【要旨】過去30年間、米国政府のエネルギー技術革新への財政支援は、中国、ドイツ、そして日本などがクリーン・エネルギー技術への投資を劇的に増やしているにもかかわらず著しく減少した。政府のクリーン・エネルギー研究開発への大幅な支出を増やす場合に限って、米国は、エネルギー技術革新を先導する現在の特別の地位を占め続けられるはずだ。
  • パリ協定については未だ明確なシグナルなし トランプ大統領は選挙期間中、「パリ協定のキャンセル」を公約しており、共和党のプラットフォームでも、「オバマ大統領の個人的な約束に過ぎないパリ協定を拒否する」としている。しかし、政
  • 今年も3・11がやってきた。アゴラでは8年前から原発をめぐる動きを追跡してきたが、予想できたことと意外だったことがある。予想できたのは、福島第一原発事故の被害が実際よりはるかに大きく報道され、人々がパニックに陥ることだ。
  • 今年も例年同様、豪雨で災害が起きる度に、「地球温暖化の影響だ」とする報道が多発する。だがこの根拠は殆ど無い。フェイクニュースと言ってよい。 よくある報道のパターンは、水害の状況を映像で見せて、温暖化のせいで「前例のない豪
  • 福島第一原子力発電所の事故を教訓に民主党政権下で発足した、原子力規制委員会と原子力規制庁。独立性確保の名目の下で与えられた巨大な権力を背景に、その行政活動は明らかにおかしい。法律の無視、そして科学的分析を欠いた恣意的な規制を繰り返す。
  • IPCC第6次評価報告書(AR6)の第1作業部会(自然科学的根拠)の政策決定者向け要約(SPM)が発表された。マスコミでは不正確なあおりやデータのつまみ食いが多いので、環境省訳を紹介しよう。注目される「2100年までの気
  • GEPR編集部より。このサイトでは、メディアのエネルギー・放射能報道について、これまで紹介をしてきました。今回は、エネルギーフォーラム9月号に掲載された、科学ジャーナリストの中村政雄氏のまとめと解説を紹介します。転載を許諾いただきました中村政雄様、エネルギーフォーラム様に感謝を申し上げます。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑