石炭火力が問題であるとすれば中国の問題だ

Andrzej Rostek/iStock
グローバル・エネルギー・モニターという団体が石炭火力発電動向に関する報告書を発表した。
分かり易い図がいくつかあるので紹介しよう。
まず2023年の1年間で、追加された石炭火力設備容量と(赤)、退役した石炭火力設備容量(緑)。世界の殆どは中国で、なんと47ギガワット(=4700万キロワット)追加。
これは日本の石炭火力発電設備の総容量55ギガワットに匹敵する! つまり中国は毎年日本1国分の石炭火力発電設備を建てている訳だ:
しかも、現在検討中(発表、認可前、認可後の合計)の石炭火力発電設備容量も、世界の殆どが中国にあって、なんと268ギガワット。日本の総設備容量の5倍もある:
現状の石炭火力発電の設備の総量で見ても、中国(1125ギガワット以上。この図は分かりにくいが説明は略)は日本(53ギガワット)の20倍以上もある:
つまり石炭火力発電が問題であるとするならば、それは何よりも中国の問題だということだ。
電気料金が高騰し、火力発電設備の不足で節電要請が年中行事のように繰り返される日本。それでもCO2を理由に石炭火力発電設備を減らすというのが日本政府の方針だが、愚かなことではないか。
■

関連記事
-
2025年6月15〜17日、カナダのカナナスキスでG7サミットが開催される。トランプ第2期政権が発足して最初のG7サミットである。 本年1月の発足以来、トランプ第2期政権はウクライナ停戦、トランプ関税等で世界を振り回して
-
政府は、7月から9月までの3カ月間という長期にわたり、企業や家庭に大幅な節電を求める電力需要対策を決定しました。大飯原子力発電所3、4号機の再稼働が認められないがゆえに過酷な状況に追い込まれる関西電力では、2010年夏のピーク時に比べて15%もの節電を強いられることになります。電力使用制限令の発令は回避されたものの、関西地域の企業活動や市民生活、消費に大きなマイナス要因です。ただでさえ弱っている関西経済をさらに痛めつけることになりかねません。
-
はじめに 「地球温暖化は人間の出すCO2によって引き起こされている。このことについて科学者の97%が同意している」──このフレーズは、20年近くにわたり、メディア、環境団体、国際機関を通じて広く流布されてきた。 この数字
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 今回は理系マニア向け。 「温室効果って、そもそも存在する
-
今年の10月から消費税率8%を10%に上げると政府が言っている。しかし、原子力発電所(以下原発)を稼働させれば消費増税分の財源は十二分に賄える。原発再稼働の方が財政再建に役立つので、これを先に行うべきではないか。 財務省
-
「ポストSDGs」策定にらみ有識者会 外務省で初会合 日経新聞 外務省は22日、上川陽子外相直轄の「国際社会の持続可能性に関する有識者懇談会」の初会合を開いた。2030年に期限を迎える枠組み「SDGs(持続可能な開発目標
-
米国の元下院議長であった保守党の大物ギングリッチ議員が身の毛がよだつ不吉な予言をしている。 ロシアがウクライナへの侵略を強めているのは「第二次世界大戦後の体制の終わり」を意味し、我々はさらに「暴力的な世界」に住むことにな
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 地球温暖化が起きると、海水が熱膨張し、また氷河や南極・グ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間