気候危機を煽る為の非現実的排出シナリオ

alexis84/iStock
「気候危機説」を煽り立てるために、現実的に起きそうな範囲を大きく上回るCO2排出シナリオが用いられ続けてきた。IPCCが用いるSSP5-8.5排出シナリオだ。
気候危機論者は、「いまのままだとこのシナリオに沿って排出が激増し、それで気候危機がもたらされる」というストーリーをしきりに広めてきた。
だがその排出シナリオとは一体どのようなものか。
図は、ロイ・スペンサーが作成したものだ。

縦軸は世界全体の化石燃料起源のCO2排出量。緑は、過去については実績値。2050年までの未来については、米国エネルギー省のエネルギー情報局(Department Of Energy, Energy Information Administration)の推計値。
このEIAは、政府の政策に忖度せず、客観的な推計をすることを法律で定められていて、手堅い推計をする。欧州や日本、それに国連の機関は、政治に忖度してCO2ゼロやらグリーン成長やらのシナリオを流布する様になってしまったが、この米国EIAはそれとは一線を画している。
図を見ると、世界のCO2排出量は、人々を脅すために使われているIPCCのSSP5-8.5シナリオを大きく下回っていることが分かる。将来について大きく下回るのみならず、すでにかなり乖離が始まっていることが読み取れる。2050年を見ると、排出量は倍ほども違う。
ロジャー・ピルケJr.が何年も前から指摘してきたように、IPCCはこのような誇張されたシナリオを「なりゆき」ないし「ベースライン」としており、脱炭素をしなければこのような世界になる、と人々を脅し続けてきた。
IPCCのSSP5-8.5シナリオは、高い経済成長と、石炭への高い依存を前提としたものだ。だがいまの世界はそのようにはなっていない。とくに、シェール技術などで天然ガスが安価かつ大量に供給されたことで、石炭への依存の増大は起きなかったことは、このシナリオの作成時点では全く予想が出来ていなかった。
という訳で、「このままでは、気候危機が訪れます」という人が居たら、こう聞こう。「このままとは、どういう意味ですか?」。
それは現実には有り得ない、とんでもなく排出量の多いシナリオに基づいた計算だ。
■
関連記事
-
先日、COP28の合意文書に関する米ブライトバートの記事をDeepL翻訳して何気なく読みました。 Climate Alarmists Shame COP28 into Overtime Deal to Abandon F
-
12月に入り今年も調達価格算定委員会において来年度以降の固定価格買取制度(FIT)見直しの議論が本格化している。前回紹介したように今年はバイオマス発電に関する制度見直しが大きな課題となっているのだが、現状において国内の再
-
本年1月11日、外電で「トランプ大統領がパリ協定復帰の可能性を示唆した」との報道が流れた。例えばBBCは”Trump says US ‘could conceivably’ rejoin Pari
-
本年9月の総選挙の結果、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU)は全709議席のうち、246議席を獲得して第1党の座を確保し、中道左派の社会民主党(SPD)が153議席で第2党になったものの、これまで大連立を
-
去る2024年6月11日に米下院司法委員会が「気候変動対策:環境、社会、ガバナンス(ESG)投資における脱炭素化の共謀を暴く」と題するレポートを公開しました。 New Report Reveals Evidence of
-
日米のニュースメディアが報じる気候変動関連の記事に、基本的な差異があるようなので簡単に触れてみたい。日本のメディアの詳細は割愛し、米国の記事に焦点を当ててみる。 1. 脱炭素技術の利用面について まず、日米ともに、再生可
-
今年7月末に「『気候変動・脱炭素』 14のウソ」という日本語の書が出版された。著者は渡辺正博士。全体は「気候変動」編と「脱炭素」編に分かれ、それぞれ7つの「ウソ」について解説されている。前稿の「気候変動」編に続き、今回は
-
小泉進次郎環境相は国連温暖化サミットの前夜に、ニューヨークのステーキハウスに行ったらしい。彼は牛のゲップが地球温暖化の大きな原因だということを知っているだろうか。 世界の温室効果ガスのうち、メタンは15.8%(CO2換算
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間

















