今週のアップデート — GEPR開設1年、読者の皆さまへの感謝(2013年1月7日)
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク「グローバルエナジー・ポリシーリサーチ(GEPR)」は、12年1月1日の開設から1周年を経過しました。読者の皆さまのご支援、ご支持のおかげです。誠にありがとうございます。
累計で250万ページビュー、最近では月20万〜25万ページビューと国内の論文サイトでは異例となる多数の閲覧数となっています。
東日本大震災と、原発事故により国民的な関心がエネルギー問題で高まり、各所で議論が続いています。GEPRは読者の皆さまがその議論に参加することに役立つように、これからもエネルギーを巡る中立かつ正確で分かりやすい情報を提供していきます。またGEPRはエネルギーをめぐる皆さまからの投稿、ご意見を募集しています。投稿は info@gepr.org まで。
今週のリンク
1)「放射線防護の革命を今こそ — より安全で安価な原子力利用のために」。オックスフォード大学名誉教授の物理学者であるウェード・アリソン氏から、日本の現状、そして世界の原子力をめぐる寄稿をいただきました。
アリソン氏は、福島事故に対する過剰反応が、日本と福島の復興を混乱させ、世界の原子力規制で過剰なコストを発生させていると、指摘しています。
2)「ハリケーン・サンディ、電力復旧遅れの理由 — 報道番組「ダン・ラザー・リポート」より」。昨年12月に米国東海岸を襲ったハリケーン・サンディは甚大な被害をもたらしました。ニュージャージー州の混乱の理由についての報道番組を、現地のエネルギー研究者の協力により要旨をまとめました。
3)提携する国際エネルギー環境研究所(IEEI)の論説を転載します。専門家のグループ電力改革研究会による「ハリケーン・サンディによる米国東部大規模停電が問いかけたもの
— 停電と電力システム論に関する日米比較」です。サンディの復旧の遅れをより広い視点で分析しています。
今週のリンク
1)「安倍首相、再稼動について明言せず—年頭記者会見」(首相官邸ホームページ)
安倍首相は年頭記者会見で原発政策の質問に、以下のように述べました。
「科学的安全基準のもとで再稼働を判断していくこととし、そして、3年程度で既存原発の規制を見極めながら、10年かけて新しい安定したエネルギーミックスに移行させてまいります」。
この言葉から推察すると、再稼動、原発の未来をめぐる決定は、かなり長引きそうです。
2)「Exports of American Natural Gas May Fall Short of High Hopes(期待先行の天然ガス輸出)」。米ニューヨーク・タイムズの1月5日記事です。米国内で、安い値段で産出できるシェールガスを国外に輸出したいという期待が、エネルギー関係者の間で高まっていることを伝えています。しかし政府による規制、また輸出設備がないという問題があります。
3)「日本のエネルギー「ゼロの呪縛」を解こう 原子力を基軸に再構築せよ」。
産経新聞の1月7日社説です。国民の原子力とエネルギー政策への信頼が壊れてしまった以上、原子力を基軸にするという主張は、現実の問題としてかなり難しいでしょう。
4)「原子力の時代を超えて 年のはじめに考える」。
東京中日新聞の1月4日社説です。かなり感情的な脱原発を主張する意見であり、その道筋は書かれていません。しかし原子力をめぐる日本の「空気」を示す文章として参考になります。
5)「「手抜き除染」横行 回収した土、川に投棄」「手抜き除染、夏から苦情殺到 環境省、対応おざなり」。朝日新聞の1月4日、5日の記事です。朝日新聞は除染が、かなりいいかげんに行われている事実についてのキャンペーンを行っています。確かにその通りです。しかし地域と効果を限定せず、全域を除染しようという国、自治体の非現実的な計画の是正をしなければなりません。大量の廃棄物に対応できなくなっています。
6)「Cancellation leaves no options for US waste」(米国の核廃棄物の選択肢、手詰まりに)。米国のWorld Nuclear Newsの1月4日掲載記事。米国は使用済核燃料の最終処分場の選定で、ユタ州のユッカマウンテンを選んでいました。ところがそれが住民の反対などで頓挫。暫定保管所をユタ州の別の場所で検討していましたが、地元の反対でそれも不可能になりそうなことを伝えています。どの国も、使用済核燃料の処分について行き詰まっています。

関連記事
-
はじめに 経済産業省は2030年までに洋上風力発電を5.7GW導入し、さらに事業形成段階で10GWに達することを目標に掲げ、再生可能エネルギーの主力電源化を目指していた。その先陣を切ったのが2021年の第1回洋上風力入札
-
先日のTBS「報道特集」で「有機農業の未来は?」との特集が放送され、YouTubeにも載っている。なかなか刺激的な内容だった。 有機農業とは、農薬や化学肥料を使わずに作物を栽培する農法で、病虫害に遭いやすく収穫量が少ない
-
田中 雄三 中所得国の脱炭素化障害と日本の対応 2021年5月にGHGネットゼロのロードマップを発表したIEAは、「2050年ネットゼロ エミッションへの道のりは狭く、それを維持するには、利用可能なすべてのクリーンで効率
-
気候研究者 木本 協司 地球温暖化は、たいていは「産業革命前」からの気温上昇を議論の対象にするのですが、じつはこのころは「小氷河期」にあたり、自然変動によって地球は寒かったという証拠がいくつもあります。また、長雨などの異
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 エルニーニョ現象、ラニーニャ現象は、世界の気象を大きく変
-
おかしなことが、日本で進行している。福島原発事故では、放射能が原因で健康被害はこれまで確認されていないし、これからもないだろう。それなのに過剰な放射線防護対策が続いているのだ。
-
三菱商事グループが、千葉県銚子沖と秋田県能代・由利本荘沖で進めていた洋上風力発電事業からの撤退を調整している、というニュースが報じられた。 三菱商事、国内3海域の洋上風力撤退を表明 コスト上昇、採算取れず 2021年の第
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 正直言ってこれまでの報告とあまり変わり映えのしない今回の
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間