LCOEだけで太陽光を語る危うさ:鈴木達治郎教授の日経論考に反論

2026年05月04日 07:00
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東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

BitsAndSplits/iStock

私の中にこの一年余、引っかかっている出来事がある。2025年2月19日の日経記事である。そこで鈴木達治郎・長崎大学教授が「太陽光は安い」と論じておられる。

原子力発電、依存度低減へ制度転換図れ 鈴木達治郎氏

論拠は均等化発電原価(LCOE)で見れば太陽光パネル発電が他電源を圧倒するというものだが、私はこの結論にどうしても同意できない。

理由は二つある。

第一に、LCOEとは要するに「発電所単体での発電原価」にすぎず、その電気が家庭や工場に届くまでに必要となる追加コスト——バックアップ電源、蓄電池、送電網の増強、出力抑制——を含んでいない。とりわけ太陽光のような変動電源では、これら統合コストが導入比率の上昇に伴って急速に膨らむ。LCOEだけで「安い」と論じることは、議論の射程を意図せず狭めてしまう。

第二に、引用されているデータの出所に違和感を覚えた。ドイツの再エネ推進派・反原発の論者マイケル・シュナイダーからの数字が中心に置かれているが、立場の偏りが明らかな出典を、結論の補強材として中立的に引用するのは、慎重を要するはずである。

鈴木氏とは長くお付き合いがあり、3.11以降、原子力委員会を経て長崎大学に移られ、核廃絶という大きなテーマに正面から取り組んでこられたことには敬意を抱いてきた。パグウォッシュ会議の正式メンバーとしての活動も同慶の至りと感じてきた。それだけに、今回の論にはやや戸惑いがある。

影響力のある立場の方の言説は、それ自体が政策議論の前提を規定してしまう。だからこそ、論点に立ち返って一度きちんと検証しておきたい——本稿はそうした問題意識から、LCOEの射程、システム統合コスト、EROI、家計負担への波及までを多層的に整理したものである。

1. はじめに:LCOEという指標の射程

太陽光発電のLCOE(均等化発電原価)は、世界的にも日本でも大きく低下し、新設電源としては最も安価な部類に入るとされる。資源エネルギー庁の試算でも、2030年時点の事業用太陽光は8〜11円/kWh台と見込まれており、この数字だけを取れば、確かに原子力や火力を下回る。

しかし、LCOEは「発電所単体で1kWhを生み出すのに、ライフサイクル全体でいくらかかったか」を均等化した指標にすぎない。電力という財の本質は、必要な瞬間に必要な量だけ供給されてはじめて価値を持つ点にあり、この時間的・系統的な品質をLCOEは捉えていない。

太陽光が安いのは「発電できた電気1kWh」についての話であって、「いつでも使える電気1kWh」についての話ではない。ここを混同するのが、世にあふれる「再エネは安い」論の最大の弱点である。

2. システム統合コストという論点

太陽光は天候と日照に依存するため、導入量が増えるほど、系統側で以下の追加負担が発生する。

第一に、夜間や悪天候時に備えるバックアップ電源(火力の待機運転を含む)の維持費。第二に、出力変動を吸収するための調整力——蓄電池、揚水、デマンドレスポンスなど。第三に、適地が偏る再エネ電源を需要地まで運ぶ送電網の増強費。第四に、供給過剰時に発電を捨てる出力抑制(curtailment)による実効発電量の目減り。

これらを合わせた「システムLCOE」の概念は、IEAやOECD/NEAも提起している国際的に標準的な論点である。

重要なのは、これらのコストが再エネ比率に対して非線形に増加することだ。導入初期は既存火力の余力で吸収できるが、比率が一定を超えると、長時間蓄電や系統増強が指数関数的に必要になる。電力中央研究所などの試算でも、太陽光主体のシステムを構築した場合、実効単価は20〜30円/kWh台に達するシナリオが示されている。

3. 日本固有の制約

加えて日本には、再エネ拡大を考える上で軽視できない物理的制約がある。国土の約7割が山地で、太陽光に適した平地はすでに開発が進み、今後の増設は傾斜地、農地、遠隔地に向かう。これは造成費、送電線延伸費、土砂災害リスク対応の上昇を意味する。

また、すでに国民は再エネ賦課金を1kWhあたり3円超負担しており、これは家計と産業の電力コストに直接乗っている。LCOEの数字には現れないが、社会が支払っている実費である。

4. EROIという物理的視点

エネルギー政策を考える際、経済単位の議論に加えて、エネルギー収支比(EROI)という物理的指標を併用する意義は大きい。文明を支えるには、エネルギーを得るために投入するエネルギーが、得られるエネルギーに対して十分小さくなければならない。

参考までに、Hall et al. (2014) は産業文明の維持に最低EROI 7〜10、豊かな社会の維持には14以上が必要と論じている。

5. 【基本試算1】2030年断面 太陽光比率別 システムEROI

太陽光が電源構成の30%/40%/50%を占める場合に、日本の電力システム全体としてのEROIがどう推移するかを試算する。

前提となる個別電源EROI(文献中央値)

太陽光比率20%以下では蓄電負荷ほぼゼロ、30%で発電量の約20%を蓄電経由、40%で約40%、50%で約70%と仮定。

試算結果

50%シナリオの10.0は、Hallらの言う「文明維持の下限ライン7〜10」の上端に接近する水準である。

6. 【基本試算2】EROI低下が家庭用電気代に与える影響

EROIの低下は、物理的には「同じ電力量を得るために、より多くの資本財(パネル、蓄電池、送電設備)を投入する必要がある」ことを意味する。これは資本費・更新費の増加として発電原価を押し上げ、最終的に家庭の電気代に転嫁される。

現状の家庭用電気代の内訳(31円/kWh)

試算ロジック:発電原価はEROIに反比例して上昇、託送料金には系統増強プレミアムを上乗せ、再エネ賦課金はFIT/FIP既認定分の支払いで増加。

試算結果

標準家庭(月400kWh使用)への影響

【追記】感度分析:追加シナリオによる検証

追記1. 太陽光60%シナリオ

第7次エネ基や2050年カーボンニュートラルを念頭に、太陽光比率を60%まで押し上げた場合の試算。原子力10%、火力14%程度まで縮減する想定。

太陽光60%では、太陽光発電量のほぼ全量(95%相当)を時間シフト=蓄電経由で供給する必要が出てくる。この結果、システムEROIは7.5まで低下し、「産業文明維持の下限」とされる水準に到達する。家庭の電気代は72円/kWh、月額3万円に迫り、現状から年20万円の負担増となる。

これは単なる「電気代が高い社会」ではなく、物理的にエネルギー収支が文明維持の臨界点に近づく社会である。低所得世帯は冬季暖房や夏季冷房を控えざるを得ず、エネルギー貧困が常態化する水準といえる。

追記2. 原子力ゼロケース

「原子力を全廃しつつ太陽光を主力化」というシナリオを、太陽光40%および50%の二段階で試算。原子力分は主にLNG火力で代替する想定(再エネだけでは穴埋めできないため)。

注目すべきは、EROIの低下幅は意外にも小さい(40%で14.2→13.2、50%で10.0→9.6)が、電気代の上昇は明確に出る点である。これは原子力分をLNG火力で代替した場合、火力依存度上昇に伴う燃料費調整・カーボン税想定の上振れが効いてくるためだ。年間負担増は40%ケースで+1.5万円、50%ケースで+1.3万円ほど追加される。

つまり原子力ゼロは、EROIの観点では致命的ではないが、化石燃料依存の固定化と燃料価格変動リスクを通じて家計を直撃する選択肢といえる。地政学リスク(燃料輸入途絶、為替変動)を考えると、表面の数字以上にダウンサイドが大きい。

追記3. 蓄電池EROIの楽観/悲観ケース

家計負担を決める最大の変数である蓄電池技術の進化(または停滞)について、以下の三段階で感度を検証。

  • 標準ケース:蓄電池EROI=8(現在のリチウムイオン水準)
  • 楽観ケース:蓄電池EROI=15(全固体電池等の革新的進化を想定)
  • 悲観ケース:蓄電池EROI=4(レアメタル制約や寿命短縮で劣化想定)

太陽光50%シナリオでの比較

太陽光60%×楽観電池ケース(参考)

楽観ケースと悲観ケースの差は、50%シナリオで月額約7,600円、年間約9万円。蓄電池技術が政府目標通りに進めば50円台前半で踏みとどまるが、停滞すれば70円台に跳ね上がるという、極めて大きな振れ幅である。

特筆すべきは、60%シナリオは楽観電池(EROI=15)を以てしても、標準電池下の50%シナリオ(58.3円)よりも高い62.4円となることだ。これは太陽光比率60%の物理的負担が、技術進化によっても完全には吸収できないことを示している。技術進化は重要だが、それだけに賭けて比率拡大を急ぐのは危うい。

追記4. 全シナリオの比較サマリー

追記5. 感度分析からの政策含意

これらの追加試算から、以下の三点が政策設計上の含意として浮かび上がる。

第一に、太陽光比率の安全圏は30〜40%程度である。これを超えると、家計負担が年7万円以上に達し、低所得層から悲鳴が上がる水準となる。50〜60%は、技術革新が確実に間に合う前提を置かない限り、社会的に持続不可能な領域に入る。

第二に、原子力は「物理的緩衝材」として機能している。 原子力ゼロケースでは、EROI低下は限定的でも電気代が上振れし、加えて化石燃料依存の固定化と地政学リスクを抱える。原発再稼働の是非を「感情の問題」ではなく「家計と国力の物理的緩衝材」として再評価する必要がある。

第三に、蓄電池技術が事実上の鍵を握る。 楽観ケースと悲観ケースで年間負担に9万円の差が出る。政府が太陽光主力化を進めるなら、蓄電池技術の国産化・低廉化への投資を、再エネ補助金以上の優先度で行わなければ、家計が物理法則の請求書を払わされることになる。

逆に言えば、蓄電池技術の進化スピードが見えるまで、太陽光比率を50%超に押し上げる政策決定は「物理的なギャンブル」である。「いずれ蓄電池は安くなる」という願望を前提に置いた計画は、楽観電池ケース(EROI=15)が実現しなかった時の家計破壊リスクを国民に転嫁することになる。

7. 原子力の位置づけ

以上の論点は、自動的に「原子力こそ最適解」と結論づけるものではない。原子力には独自のコストがある——新規制基準対応の追加工事、特重施設、廃炉費用、使用済み燃料の処理、最終処分場問題、事故時の巨大な社会的損失。これらを織り込めばLCOEは10円台後半まで上がりうる。

しかし同時に、既存炉の再稼働は建設投資という最大のコストを過去に払い終えた資産の再活用であり、追加投入に対する電力供給量の比は極めて大きい。今回の試算でも、原子力20%の維持がシステムEROIと電気代の両方を底支えしており、原子力ゼロにすると年1.3〜1.5万円の追加負担が発生することが示された。

「原子力は危険だから減らす」と「原子力を減らせば家計と国力が削られる」の両方が事実であり、それを天秤にかけるのが本来の政策議論である。安定したベースロードを一定割合確保することが、再エネ拡大に伴う家計負担の暴走を抑える役割を果たす点は、エネルギーミックスを論じる上で正当に評価されるべきである。

8. 結論

「太陽光はLCOEで安い」という言明は、命題としては正しい。問題は、その命題が示している範囲と、実際のエネルギー政策が答えるべき問いとの間にギャップがあることだ。

政策が答えるべきは「いつでも使える電気を、社会全体で安く、安定的に、低炭素で供給するにはどうするか」であり、これに答えるにはLCOE、システム統合コスト、EROI、地理的制約、家計負担、社会的受容性まで含めた多層的な評価が要る。

今回の試算が示すのは:

  1. 太陽光30%程度であれば家計負担増は年3.6万円に留まり、社会的に許容可能な範囲。
  2. 40%を超えると年7万円、50%では年13万円、60%では年20万円と、加速度的に膨らむ。
  3. 原子力ゼロを選ぶと、上記にさらに年1.3〜1.5万円が追加される。
  4. 蓄電池技術の進化次第で、同じ太陽光50%でも電気代に20円/kWhの差が出る。

これは「太陽光を増やすな」という結論ではなく、「増やすペースは、蓄電池の技術進化と原子力等の安定電源の確保のスピードに合わせて慎重に決めるべきだ。さもなくば、家計が物理法則の請求書を払わされる」という条件付きの警告である。

  • 太陽光の導入拡大を前提としつつ、その統合コストを正直に勘定に入れること
  • 蓄電池の進歩や需給調整技術への期待を持ちつつ、それが間に合わない場合のリスクを家計負担として直視すること
  • 原子力を含む安定電源を、感情論ではなくシステム全体の合理性から評価すること

この三点を踏まえた議論こそが、「LCOEだけ見て安い・高い」という不毛な論争から一歩進むために必要だろう。

【注記】
本試算で用いた数値(個別電源EROI、蓄電バッファ比率、EROI→価格の変換係数、賦課金推移、系統増強費、原子力ゼロ時の燃料費上振れ等)は、いずれも文献値の中央値や合理的な推定に基づく前提であり、絶対的な予測ではない。前提を変えれば結果も動く。読み取るべきは絶対値より「太陽光比率の上昇とともに家計負担が加速度的に膨らみ、原子力ゼロ・蓄電池停滞でさらに悪化する」という構造的傾向である。

終わりに

3.11後の秋口に、私は知人を通じて神田のおでん屋に「あんたに会いたい人がいる」と呼び出されたことがある。カウンターには、なんだか穏やかならざる面持ちの日経新聞の重鎮二人が座っていた。

正体と意図はすぐに知れた。「おまえは、なんでこの期に及んでいまだに『原発が必要だ』などと言っているんだ」——「いや、そうは言えどもやっぱり必要だ」——押し問答、水掛け論となり、おでんどころではなく、店主が気の毒だった。

二人のうちのひとり(東工大卒)が、「このやろう、水ぶっかけるぞ」と凄んだあたりで議論は頂点に達し、潮が引くように再会再論を約して、神田の夜を後にした。

あれから十年余、エネルギーをめぐる物理的・経済的制約は当時より明確になっているはずだが、論じ方はそれほど変わっていないようにも見える。今回の記事に接して、その思いを新たにした次第である。

【参考資料】検証対象となった日経記事について

書誌情報

本レポートが検証対象とした日経新聞「経済教室」欄の記事は、以下のとおり。

項目 内容
連載タイトル 原子力発電の将来像(下)
記事見出し 依存度低減へ制度転換図れ
執筆者 鈴木達治郎・長崎大学教授
掲載媒体 日本経済新聞 朝刊「経済教室」面
掲載日 2025年2月19日(水)
記事URL(日経電子版) https://www.nikkei.com/article/DGKKZO86806270Y5A210C2KE8000/
関連記事(電子版別URL) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD032SK0T00C25A2000000/
執筆者プロフィール(公開情報より)

鈴木達治郎(すずき・たつじろう)氏
1951年生まれ、大阪府出身。1975年東京大学工学部原子力工学科卒業、1978年マサチューセッツ工科大学修士修了。工学博士(東京大学)。専門は原子力政策、科学技術社会論。

ボストン・コンサルティング・グループ、電力中央研究所社会経済研究所研究参事、東京大学公共政策大学院客員教授等を経て、2010年1月から2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務めた。

現在は長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授(2025年3月に長崎大学を勇退、4月よりNPO法人ピースデポ代表)。2025年1月、パグウォッシュ会議の執行委員会委員長に選任。

記事の構成と要旨

掲載面に明示された「ポイント」は次の三点(紙面に明記)。

  • 原発を最大限活用する政府の根拠は薄弱
  • 核のゴミ処分や福島第1廃炉へ法整備を
  • 原子力拡大を前提にした制度は今も継続

リード部分(電子版で公開されている冒頭)の趣旨は、概ね以下のとおり整理できる。

政府は新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。福島第一原子力発電所の事故以降、計画には「原子力発電への依存度を可能な限り低減させる」と明記されてきたが、今回の改定でこの文言が削除され、加えて従来なかった「建て替え(リプレース)」を含む形で「原子力も最大限活用する」との方針が新たに明記された。これは原子力政策の大きな転換と考えられる——この政策に合理的な根拠はあるのか、本来日本はどのような政策課題を優先すべきか、というのが論考の出発点である。

本論の中核では、世界の電源別均等化発電原価(LCOE)の推移グラフが提示され、太陽光発電(電力会社規模)・陸上風力が原子力・石炭・天然ガス複合発電を下回る水準まで低下している点が示される。グラフの出典は記事末尾に「Mycle Schneider Consulting Project, The World Nuclear Industry Status Report 2024」と明記されている。

引用された出典の性格

上記グラフの典拠である World Nuclear Industry Status Report(WNISR)は、Mycle Schneider 氏(マイクル・シュナイダー、パリ拠点の独立系エネルギー・原子力政策コンサルタント)が筆頭執筆者を務める年次報告書である。

Schneider 氏は1983年にエネルギー情報機関 WISE-Paris を創設し2003年まで指揮、1997年には「もう一つのノーベル賞」と呼ばれるライト・ライブリフッド賞を受賞している。ドイツ環境省、フランス環境相事務所、ベルギー・エネルギー大臣等の顧問、欧州委員会・欧州議会・IAEAへのコンサルティング、ドイツ緑の党に近いハインリヒ・ベル財団からの WNISR 出版など、再生可能エネルギー推進・原子力批判の立場で一貫した活動歴を持つ。英語版 Wikipedia でも反原発活動家(anti-nuclear activist)と位置づけられている。

WNISRは、原子力産業の建設遅延・コスト超過・運転実績などのデータを精緻に集計しており、データそのものの正確性は学界・メディアでも参照される。一方で、結論的フレーミングは一貫して「原子力は遅く高く、再エネが代替できる」という方向に置かれており(例えば2019年版の結論部分)、中立的なベンチマークというより、特定の政策的立場から編まれた資料と理解するのが正確である。

本レポート序章で指摘した「立場の偏りが明らかな出典を、結論の補強材として中立的に引用するのは慎重を要する」との論点は、Schneider 氏の経歴・活動・出版経路に照らして根拠を持つ。LCOEのトレンド線そのものは IRENA・Lazard・IEA など複数の独立系機関が公表しており、議論の中立性を担保するには WNISR を単独で典拠とせず、これら複数ソースをクロスチェックする形が望ましかった——これが本レポートの問題提起の出発点である。

補足

鈴木氏は、本記事より前にも日経「経済教室」面で同種の論考を執筆している。例えば2022年2月24日付「依存度低減へ国民的議論を 原発政策を考える(下)」では、「原発の脱炭素電源としての役割は限定的」「日本では事故に伴うコスト上昇も重荷に」「政府から独立した機関で客観的な評価を」の三点をポイントとして掲げており、依存度低減の主張は氏の一貫した立場である。

本レポートは、鈴木氏個人の見解を否定するものではなく、影響力のある立場からの言説が政策議論の前提を規定してしまう構造を踏まえ、LCOE単独指標の射程・出典の偏り・システム統合コスト・EROI・家計負担への波及までを多層的に検証することで、論点を立て直すことを目的としたものである。

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東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

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