核廃棄物には管理型処分という選択肢もある

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高レベル放射性廃棄物の最終処分をめぐり、南鳥島が新たに注目されている。経済産業省は2026年3月3日、小笠原村長に対して南鳥島での文献調査実施を申し入れた。NUMOは同年5月20日、南鳥島における文献調査を開始した。
もっとも文献調査とは、地質図や学術論文など既存資料を集める机上調査であり、ボーリングを伴う概要調査や地下施設を伴う精密調査の前段階にすぎない。これをもって「南鳥島が最終処分場に決まった」わけではない※1)※2)。
原子力反対派はしばしば「最終処分場が決まっていないから原発を動かすな」と言う。しかし、この議論には一つの前提が隠れている。すなわち、最終処分とは地下深部に埋設する地層処分でなければならず、それが決まらない限り使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物は管理不能だ、という前提である。
だが、最終処分とは、必ずしも地層処分である必要はない。「管理型処分」という方法もある。それは、地上において、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物を管理し続ける、という考え方である。
先に行く前に、まず用語を整理しておこう。原子炉から取り出された燃料は「使用済み燃料」である。日本の核燃料サイクル政策では、これは再処理されるまで発電所内や中間貯蔵施設で保管される。再処理では、燃料として再利用できるウランやプルトニウムを取り出し、残った高レベル廃液をガラス原料と溶かし合わせて固化する。これが「ガラス固化体」であり、日本でいう高レベル放射性廃棄物は一般にこのガラス固化体を指す。
本稿でいう管理型処分とは、使用済み燃料をそのまま長期管理する場合にも、再処理後のガラス固化体を長期管理する場合にも成り立つ考え方である。
実際に、使用済み燃料を長期に安全管理する技術はすでに存在する。原子炉から取り出した使用済み燃料は、まずプールで冷却される。その後、十分に冷えた燃料は乾式キャスクに移すことができる。
米国NRCは、乾式キャスクについて、密封した金属容器で使用済み燃料を閉じ込め、金属・コンクリートなどの外殻で放射線を遮へいし、崩壊熱はポンプやファンに頼らず自然に逃がす方式だと説明している。NRCはまた、1986年に最初の乾式キャスクが装荷されて以来、公衆に影響する放射線放出や環境汚染はなかったとしている※3)。
米国ではユッカマウンテン計画が停滞し、商業炉由来の使用済み燃料は9万トンを超え、毎年約2,000トンずつ増えている。それでも米国の原子力は、使用済み燃料を発電所敷地内などで管理しながら運転されてきた。
NRCは継続貯蔵の環境影響評価で、処分場の供用時期が遅れる場合を複数想定し、原子炉の運転終了後60年までの貯蔵、その後さらに100年続く貯蔵、そして処分場がまったく利用可能にならない場合の長期貯蔵まで評価している※4)※5)。これは、最終処分場がただちに存在しなければ技術的に破綻する、という話ではないことを示している。
日本でも事情は同じである。電気事業連合会の資料によれば、2026年3月末時点で、各発電所における使用済み燃料貯蔵量は合計1万7,120トンU(ウラン重量換算)、法的要求容量は2万1,840トンUである。もちろん余裕が無限にあるわけではないが、物理的に置き場所がないという話でもない。
青森県むつ市のリサイクル燃料備蓄センターは2024年11月に事業を開始し、当初3,000トンU、最終的には5,000トンU規模の中間貯蔵が計画されている※6)。
原子力は僅かな燃料から莫大なエネルギーを取り出す技術なので、使用済み燃料の量は多くはない。米国の全米アカデミーズの報告では、典型的な乾式キャスクは高さ約6メートル、直径約2.5メートルで、10〜15トン程度の使用済み燃料を収容できるとされている※7)。
実際には、搬送や点検のための通路、警備のための区域も必要になるが、それでも日本全体の使用済み燃料が、国土の中で収まりきらないような巨大な物量であるかのように語るのは誇張である。
当面は原子力施設周辺や集中中間貯蔵施設で乾式貯蔵を拡充すべきである。しかも、それをいつまでも「最終処分までの時間稼ぎ」に過ぎないと位置づける必要はない。現行制度では位置づけられていないが、長期にわたり人間社会が責任を持って使用済み燃料やガラス固化体を隔離し、その状態を継続的に確認しながら、必要に応じて容器や施設を更新し、将来の回収可能性も残す方式を、政策概念として「管理型処分」と呼ぶべきである。
これは奇矯な発想ではない。日本学術会議は、2014年の「高レベル放射性廃棄物の暫定保管に関する技術的検討」で、使用済み燃料でもガラス固化体でも、暫定保管には基本的に乾式貯蔵技術が適しているとした。また、50年を大幅に超える場合には、施設や設備の更新で対応する必要があるとも述べている※8)。
山地憲治氏は、かつて「核のゴミ、とりあえず時間を買おう」という趣旨の発言をしていた。これは、最終処分地を無理に急ぐよりも、合意形成と技術選択のために時間を確保すべきだという現実的な考え方であった※9)。
IAEAは、放射性廃棄物管理の目的として、現在と将来の人および環境を守り、将来世代に不当な負担を課さないことを掲げている※10)。 これ自体は妥当な原則である。問題は、その原則がなぜ放射性廃棄物だけに特に強く適用されるのかである。
水銀、カドミウム、鉛、砒素などの重金属は半減期を持たず、事実上いつまでも化学毒性を持ち続ける。それでも社会は、重金属を含む有害廃棄物について、必要な処理を行ったうえで埋立処分し、閉鎖後も施設を管理し、地下水を監視している。米国EPAの有害廃棄物規制も、処分前処理によって毒性や移動性を下げること、閉鎖後も管理を続けることを前提にしている。発想としては、まさに「管理型処分」である※11)。
この原子力廃棄物と重金属廃棄物に対する扱いの非対称性は以前から指摘されてきた。
池田信夫氏は、永続的なリスクを持つ水銀や砒素には同じ議論が及ばないのに、なぜ核廃棄物だけに千年・万年の安全性が要求されるのかと批判した※12)。Jerry J. Cohenも、プルトニウムの長い半減期を問題にしながら、鉛、カドミウム、水銀のように永遠に残る安定毒性元素に同等以上の関心を払わないのは論理的に一貫しない、と論じている※13)。
もちろん、放射性廃棄物には重金属とは異なる特徴がある。発生直後の使用済み燃料には強い放射線と崩壊熱があり、十分な遮へいや冷却に加えて、核物質防護も必要である。
しかし、これは工学的管理の対象であって、「だから地層処分でなければならない」という結論をただちに導くものではない。むしろ放射性廃棄物には、時間とともに放射能と発熱が低下するという、重金属にはない望ましい性質もある。
地層処分を否定する必要はない。南鳥島も、候補の一つとして科学的に調査すればよい。しかし、地層処分だけを唯一の最終解とみなす必要もない。管理型処分を正面から制度化すれば、「地層処分場が決まっていないから原発は駄目だ」という議論の前提は崩れる。
なぜ最終処分は地層処分でなければならないのか? 技術的にも、立地の現実性から見ても、管理型処分は十分に検討に値する。コストについても、巨大な地層処分場の早期建設だけを前提にするのではなく、既存施設と乾式貯蔵技術を活用する選択肢として評価すべきである。何しろ、そのような呼称ではないにせよ、長期的な管理の実績はすでにある。
日本は「核のごみ」問題を、地層処分だけという呪縛から解放すべきである。
【文献リスト】
- ※1)経済産業省「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づく文献調査の東京都小笠原村南鳥島での実施について、申入れを行いました」2026年3月3日。(METI)
- ※2)NUMO「南鳥島(東京都小笠原村)における文献調査の実施について」2026年5月20日、およびNUMO「文献調査のご案内」。(NUMO南鳥島コメント;NUMO文献調査のご案内)
- ※3)U.S. NRC, “Backgrounder on Dry Cask Storage of Spent Nuclear Fuel,” 2023。(U.S. NRC)
- ※4)U.S. NRC, “Generic Environmental Impact Statement for Continued Storage of Spent Nuclear Fuel: Final Report, Volume 1,” NUREG-2157, 2014。(U.S. NRC)
- ※5)U.S. GAO, “Nuclear Waste Disposal.” (GAO)
- ※6)電気事業連合会「使用済燃料の貯蔵状況と対策」、日本原子力発電「リサイクル燃料備蓄センター」。(電気事業連合会;日本原子力発電)
- ※7)National Research Council, Safety and Security of Commercial Spent Nuclear Fuel Storage: Public Report, National Academies Press, 2006。(National Academies)
- ※8)日本学術会議「高レベル放射性廃棄物の暫定保管に関する技術的検討」2014年。(日本学術会議)
- ※9)山地憲治「核のゴミ、とりあえず時間を買おう」日経ビジネスONLINE、2012年10月24日。RITE掲載の山地氏業績リスト、および記事紹介。(RITE)
- ※10)IAEA, The Principles of Radioactive Waste Management, Safety Series No. 111-F, 1995。(IAEA Publications)
- ※11)U.S. EPA, “Introduction to Land Disposal Restrictions,” および “Closure and Post-Closure Care Requirements for Hazardous Waste Treatment, Storage and Disposal Facilities.” (U.S. EPA LDR;U.S. EPA Closure/Post-Closure)
- ※12)池田信夫「放射性廃棄物についての学術会議報告への疑問」GEPR、2012年11月5日。(GEPR)
- ※13)Jerry J. Cohen, “Nuclear Waste Disposal: the Nature of the Problem,” および Bernard L. Cohen, “High Level Radioactive Waste,” Natural Resources Journal, 1981。(NWMO;UNM Digital Repository)
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