再エネで電気代爆上がりのオーストラリアに明日の日本を見る

da-kuk/iStock
オーストラリアは、かつて世界でも屈指の「電気の安い国」だった。豊富で安価な石炭を用いた火力発電によって、低廉な電力を供給してきた。
ところが現在、電気料金は大幅に上昇してしまった。
図1は、豪州統計局(ABS)の消費者物価指数(CPI)における電気料金を、2000年を100として示したものだ。これを見ると、2000年代後半から急騰していることがわかる。

図1 電気料金指数
さらに、シドニーなどの大都市があるニューサウスウェールズ(NSW)州の世帯あたりの電気代を実額ベースで示した図2でも、かつて年500豪ドル程度であった電気料金が、現在では2,000豪ドル前後にまで膨らんでいることが確認できる(執筆現在、1豪ドルは約100円)。

図2 世帯あたり電気代。2014年以降はIPART※1)の公表値(中央値)。
2013年以前については、IPART公表のNSW規制料金の名目指数(1999/00基準)を用い、2014年度の実額に接続して推計した年額。
かつて電気が安い国であったオーストラリアで、なぜこのような事態が生じたのか。
クリス・モリス氏が詳しく現在の電力事情を紹介している。非常に詳細な分析なので全容はとても書ききれないが、その結論だけ紹介しよう。
Update on Australian NetZero efforts
図3に示したオーストラリアの国家電力市場(NEM)の電源構成を見ると、太陽光発電と風力発電が大量に導入されていることが分かる。黄色が太陽光、緑色が風力発電であり、黒色は石炭、茶色は褐炭、青は天然ガス、水色は水力発電である。

図3
大量導入された太陽光・風力発電の変動性を吸収しているのは、主として火力発電である。しかし、それだけでは変動性を吸収しきれないため、地域間の電力融通を行うための送電網の強化や、大規模なバッテリーの設置が進められている。
さらには、昼間の太陽光余剰に対処するため、2026年7月から日中の少なくとも3時間をゼロ料金とする時間帯を含む小売メニューを小売事業者に求める制度(Solar Sharer)が導入される見込みだ。
太陽光発電も風力発電も、いずれも間欠性が極めて大きい電源である。そのため「発電量あたりのコスト(均等化ライフサイクルコスト、LCOE)が安い」としても、電力システム全体で見れば、火力発電による変動性の吸収、送電網の増強、バッテリーの設置、そして再エネ出力制御などの「系統統合コスト」が嵩むため、総コストは大変に高くなる。
この帰結として起きていることが、図1および図2に示した電気料金の高騰である。
さて、オーストラリアは土地が広大で、日照条件の非常に良い地域、風況に恵まれた地域がふんだんにある。これほど太陽光発電と風力発電を導入しやすい国はない。これほど条件に恵まれた国ですら、再エネの大量導入によって起きた帰結は、電気料金の大幅な上昇なのである。
日本では今なお、「太陽光発電は最も安い電源だ」といった主張が繰り返されている。しかしそれは、間欠性を考慮に入れない場合の話にすぎず、現実には意味が無い。間欠性を考慮するならば、やはり系統統合コストが不可避的に発生し、結局は、電気料金は高くつくことになる。
再エネにとって恵まれた条件下にあるオーストラリアですらこの価格高騰ぶりである。日本で再エネを今後も大量導入すれば、オーストラリア以上の電気料金高騰になることは目に見えている。
現在、日本政府は脱炭素を理由に「再エネ最優先」を掲げ、太陽光発電と風力発電の大量導入を進めている。しかし、オーストラリアの事例は、その政策がいかに愚かなものであるかを明白に示している。
※1)IPARTは電気料金の規制・監督を行う機関。Independent Pricing and Regulatory Tribunal:ニューサウスウェールズ州独立価格規制審判所。
■
関連記事
-
原子力発電の先行きについて、コストが問題になっています。その資金を供給する金融界に、原発に反対する市民グループが意見を表明するようになっています。国際環境NGOのA SEED JAPANで活動する土谷和之さんに「原発への投融資をどう考えるか?--市民から金融機関への働きかけ」を寄稿いただきました。反原発運動というと、過激さなどが注目されがちです。しかし冷静な市民運動は、原発をめぐる議論の深化へ役立つかもしれません。
-
小泉進次郎環境相が「プラスチックが石油からできていることが意外に知られていない」と話したことが話題になっているが、そのラジオの録音を聞いて驚いた。彼はレジ袋に続いてスプーンやストローを有料化する理由について、こう話してい
-
米国エネルギー長官クリストファー・ライトの指示によって、気候危機説を否定する内容の科学的知見をまとめた報告書が2025年7月23日に発表された。タイトルは「温室効果ガス排出が米国気候に与える影響に関する批判的レビュー(A
-
ChatGPTへの一回の問い合わせはGoogle検索の約10倍の電力を消費するとも言われる。生成AIの普及、さらにAGIへの進化が視野に入る中、データセンターの電力需要は従来の延長線上にない速度で急拡大している。 調査会
-
「温暖化対策をしないと、大変なことになる!」というシミュレーションで、政府は随分と国民を怖がらそうとしてきた。 例えば、環境省にこんなコラムがある: コラム:2100年未来の天気予報 環境省では、現状を上回る温暖化対策を
-
2024年3月18日付環境省報道発表によれば、経済産業省・環境省・農林水産省が運営するJ-クレジット制度において、クレジットの情報を管理する登録簿システムやホームページの情報に一部誤りがあったそうです。 J-クレジット制
-
1月17日付日経朝刊に、日本原子力発電株式会社の東西分社化検討の記事が載っていました。 同社は、日本が原子力発電に乗り出した1950年代に電力各社の出資によって設立されたパイオニア企業で、茨城県東海村と福井県敦賀市に原子力発電所を持っており、他の電力会社に電気を卸しています。
-
拝啓 グーグル日本法人代表 奥山真司様 当サイトの次の記事「地球温暖化って何?」は、1月13日にグーグルから広告を配信停止されました。その理由として「信頼性がなく有害な文言」が含まれると書かれています。 その意味をグーグ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















