再エネの出力制御は今後どう運用されるか?公平性要件の見直しの影響
去る10月8日、経済産業省の第23回新エネルギー小委員会系統ワーキンググループにおいて、再生可能エネルギーの出力制御制度の見直しの議論がなされた。
この内容は、今後の太陽光発電の運営に大きく関わる内容なので、例によってQ&A方式で議論の内容について確認していくこととしたい。(資料は経済産業省HPから引用した(一部改変))
Q1:系統WGで今何が議論されているのか?
先日まとめられた再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会 第三回中間整理では、幅広い制度的な論点について課題/アクションプランが示されたが、その中で系統WGにもいくつかの宿題が課されることになった。
具体的には中間整理において
①オンライン化促進と両立するような、出力制御量の削減に資する事業者間の公平性のあり方
②当面の間は出力制御の対象外と整理されてきた旧ルール500kW未満の太陽光・風力の出力制御の対象化、及び、30日等出力制御枠や指定電気事業者制度の見直し等
③経済的出力制御の実務的手法
の3項目について、①は2019年度中に、②③は2020年度中に系統WGで具体化することが求められている。今回はこのうち①の「出力制御量の削減に資する事業者間の公平性のあり方」に関する議論を紹介する。
Q2:現在出力制御はどのようなグループ分けで実施されているか?
話が前後するが、現在産業用太陽光発電(10kW以上)の出力制御に関しては、いくつかルールが混在しており、発電所ごとに適用されるルールが異なる。
具体的には
①通称「30日ルール」または「旧ルールオフライン」 などと呼ばれる「年間30日を上限に日単位で出力制御が実施される」発電所群。出力制御の指示は前日に通知される。
②通称「360時間ルール」または「旧ルールオンライン」などと呼ばれる「年間360時間を上限にオンラインで時間単位で出力制御が実施される」発電所群。なお出力制御の予告は前日に通知されるが、最終的な制御実施の可否は当日2時間前までに決まる。
③通称「指定ルール」と呼ばれる「上限無しにオンラインで時間単位で出力制御が実施される」発電所群。出力制御の指示の運用は②と同様。
の3つのルールがある。

送配電事業者が出力制御を実施するにあたっては、これら適用されるルールと発電所の規模ごとに上表のようにいくつかのグループに分け、同一ルール内で均等に出力制御が行われるように運用する。なお、①が適用される事業者を「オフライン事業者」、②③が適用される事業者を「オンライン事業者」と呼ぶ。
Q3:事業者間の公平性要件の見直しのポイントは?
経済産業省は今年10月に「出力制御の公平性の確保に係る指針」を改定し、公平性に関する考え方の詳細を示した。
具体的には、これまで送配電事業者は「公平性」を結果としての出力制御回数を用いて判断していたが、これに関して改正指針では、「手続きの正当性が確保されていれば、全体としての出力制御量を低減するために、オフライン事業者とオンライン事業者の間で結果としての制御回数が異なることになっても公平性に反しない」という、解釈が示された。
これを受けて九州電力は今秋から想定出力制御量を最大誤差量から平均誤差量ベースに変更し、全体としての出力制御量を削減する方針を示した。
ただしこの場合は、オフライン事業者はオンライン事業者よりも出力制御機会が多くなる可能性が高くなる。
Q4:九州電力の運用見直しによる効果は?
Q3で述べた九州電力の運用変更の効果については、系統WGにおいて九州電力管内の2019年5月6日の数値をベースにしたシミュレーション結果が示されている。

現行運用では、前日計画の想定抑制量は144万kWとされ、オフライン事業者に65万kW、オンライン事業者に79万kW割り振られた。
しかし実際に必要となった抑制量は54万kWだったため、2時間前まで調整可能なオンライン事業者の出力抑制は行われず、オフライン事業者のみに54万kWの抑制が実施された。
これが見直し後の運用方針を適用すると、想定抑制量が49万kWと大幅に減り、実際はオフライン事業者に41万kW割振られるのみで、全体の抑制量が13万kWほど減るとされている。
Q5:出力制御におけるオンライン事業者のメリットは?
Q4で述べた通り、今後当面は前日計画ベースでオフライン事業者のみで想定制御量の大半の出力制御容量を確保し、当日必要に応じてオンライン事業者に追加的に出力制御容量を割り振ることになると見込まれる。
必然的にオンライン事業者の方が出力制御量が当面は大幅に少なくなることが予測される。
この点について誰しもが「オンライン事業者に有利なのではないか?」という疑問が浮かぶところだが、前述の通りガイドラインでは「出力制御の上限(年間30日)に達するまでの間は、出力制御量低減の観点から、オンライン事業者の制御回数がオフライン事業者より少ない場合であっても公平性に反することにはならない」とされており、むしろ経済産業省はこのメリットをオフライン事業者のオンライン化のインセンティブとする方針が示されている。
Q6:その他の論点に関する議論の予定は?
Q1で述べた通り系統WGでは
①オンライン化促進と両立するような、出力制御量の削減に資する事業者間の公平性のあり方
①当面の間は出力制御の対象外と整理されてきた旧ルール500kW未満の太陽光・風力の出力制御の対象化、及び、30日等出力制御枠や指定電気事業者制度の見直し等
③経済的出力制御の実務的手法
が議論されていくことになるが、これらの検討スケジュールについては、経済産業省から以下のように示されている。
今回は赤枠で囲った「公平性ガイドライン」のみに関する議論を紹介したが、経済的出力制御などその他重要な論点についても今後詳細が議論されていくことになるので、折を見て紹介させていただくこととしたい。
関連記事
-
福島の原発事故以来、放射能への健康への影響、とくに飲食による内部被曝に不安を訴える人が増えています。現状では、ほとんど問題にする必要はありません。
-
今回は、最近日本語では滅多にお目にかからない、エネルギー問題を真正面から直視した論文を紹介する。 原題は「燃焼やエンジン燃焼の研究は終わりなのか?終わらせるべきなのか?」、著者はGautam Kalghatgi博士、英国
-
毎朝冷えるようになってきた。 けれども東京の冬は随分暖かくなった。これは主に都市化によるものだ。 気象庁の推計では、東京23区・多摩地区、神奈川県東部、千葉県西部などは、都市化によって1月の平均気温が2℃以上、上昇し
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 1)ウランは充分あるか? エネルギー・コンサルタントの小野章昌氏の論考です。現在、ウランの可能利用量について、さまざまな議論が出て
-
今回の大停電では、マスコミの劣化が激しい。ワイドショーは「泊原発で外部電源が喪失した!」と騒いでいるが、これは単なる停電のことだ。泊が運転していれば、もともと外部電源は必要ない。泊は緊急停止すると断定している記事もあるが
-
関西電力は、6月21日に「関西電力管外の大口のお客さまを対象としたネガワット取引について」というプレスリリースを行った。詳細は、関西電力のホームページで、プレスリリースそのものを読んでいただきたいが、その主旨は、関西電力が、5月28日に発表していた、関西電力管内での「ネガワットプラン」と称する「ネガワット取引」と同様の取引を関西電力管外の60Hz(ヘルツ)地域の一部である、中部電力、北陸電力、中国電力の管内にまで拡大するということである。
-
(前回:温暖化問題に関するG7、G20、BRICSのメッセージ①) 新興国・途上国の本音が盛り込まれたBRICS共同声明 新興国の本音がはっきりわかるのは10月23日にロシア・カザンで開催されたBRICS首脳声明である。
-
「生物多様性オフセット」COP15で注目 懸念も: 日本経済新聞 生物多様性オフセットは、別名「バイオクレジット」としても知られる。開発で失われる生物多様性を別の場所で再生・復元し、生態系への負の影響を相殺しようとする試
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間

















