ネスレが気候カルテルを離脱:米国から欧州へと広まる気候カルテル崩壊

Michael Derrer Fuchs/iStock
2024年6月に米国下院司法委員会がGFANZ、NZBAなど金融機関による脱炭素連合を「気候カルテル」「独禁法違反」と指摘して以来、わずか1年でほとんどの組織が瓦解しました。
今年に入って、7月にフロリダ州司法長官がSBTiとCDPを「気候カルテル」と指摘し、翌8月には米国23州の司法長官がSBTiに対して独禁法違反の調査を開始すると、早速9月にスイスとカナダの保険会社がSBTi離脱を表明しました。
筆者は米国で始まった金融機関による気候カルテル崩壊が今後民間企業にも波及しそうだと繰り返し述べてきましたが、この10月に入ってまた気になる動きがありました。
Nestle quits global alliance on reducing dairy methane emissions
ネスレ、乳製品由来のメタン排出量削減に関するグローバルアライアンスを脱退
食品大手ネスレは水曜日、酪農が地球温暖化に与える影響を軽減することを目的としたメタン排出削減のための国際連合から脱退したと発表した。
Dairy Methane Action Alliance(酪農メタンアクション連合)は2023年12月に発足し、ダノン、クラフト・ハインツ、スターバックスなどの加盟企業が、酪農サプライチェーンからのメタン排出量を公に測定・開示し、排出削減計画を段階的に公表することを約束していた。
この動きは、地球温暖化の影響を制限しようとしている企業連合にとって最新の打撃であり、ドナルド・トランプ米大統領がさまざまな気候保護イニシアチブを解体している中で起こっている。例えば、いくつかの大手銀行は、炭素排出量削減の取り組みを主導するこの分野の主要団体から脱退している。
2050年にメタンの排出量ゼロをめざす気候カルテルからネスレが離脱したとのことです。
気候カルテル崩壊に関して、金融機関から民間企業へ波及すると筆者が考えていたのは主にCDP、SBTiでしたが、メタンに関して金融機関のようなアライアンスがあったことを初めて知りました。このアライアンスでは、ネットゼロに加えて酪農由来メタン版(これってつまり牛のゲップ版)スコープ3の測定・開示に取り組んでいるのだとか。もはや狂気の沙汰。
ネスレが抜けたら、早晩他の乳製品企業も離脱するはずです。他にも似たようなカルテルがあるのかもしれませんが、この流れはどんどん加速しそうです。
そしてもうひとつ重要な点を。ネスレはスイス企業です。気候カルテル崩壊は米国内にとどまらず欧州にも波及し始めたようです。
昨今の流れを筆者なりにまとめると、
- 自社でネットゼロをめざすのは自由。
- イニシアチブなどで結託してバリューチェーン上の融資先や取引先に強要する行為がカルテル、反競争法、反消費者保護法に該当。
- 参加メンバーに対して外部イニシアチブ間でお互いに参加を促す行為は搾取のフィードバックループ。
- 気候カルテルと指定を受けたイニシアチブに参加したメンバーも反競争法、反消費者保護法に該当。背後にある”善意”は無関係。
となります(あくまで2025年10月時点での整理)。
これって、ひとことで言うと優越的地位の濫用です。今後、こうした気候カルテルに対する認識が世界中で広まるのかもしれません。CDP、SBTiにそれぞれ2000社も参加し世界一となってしまった日本の産業界こそ早く気が付かなければならないのですが、日本語での報道がないためまったく認識されていない状況です。
CDP、SBTiなど脱炭素イニシアチブだけでも動向を把握するのが大変なのに、メタン版カルテルや他にも知らないアライアンスがあるとしたらとてもサラリーマンの身では追いきれません。大手メディアの皆さん、ちゃんと海外の動向を掴んで報道してください。ぜひよろしくお願いします。
■
関連記事
-
日本は「固定価格買取制度」によって太陽光発電等の再生可能エネルギーの大量導入をしてきた。 同制度では、割高な太陽光発電等を買い取るために、電気料金に「賦課金」を上乗せして徴収してきた(図1)。 この賦課金は年間2.4兆円
-
「国民的議論」とは便利な言葉だ。しかし、実際のところ何を表しているのか不明確。そのうえ、仮にそれに実体があるとしても、その集約方法についてコンセンサスがあるとは思えない。
-
原子力規制委員会により昨年7月に制定された「新規制基準」に対する適合性審査が、先行する4社6原発についてようやく大詰めを迎えている。残されている大きな問題は地震と津波への適合性審査であり、夏までに原子力規制庁での審査が終わる見通しが出てきた。報道によれば、九州電力川内原発(鹿児島県)が優先審査の対象となっている。
-
前回、前々回の記事で、企業の脱炭素の取り組みが、法令(の精神)や自社の行動指針など本来順守すべき様々な事項に反すると指摘しました。サプライヤーへの脱炭素要請が優越的地位の濫用にあたり、中国製太陽光パネルの利用が強制労働へ
-
トランプ大統領は、かなり以前から、気候変動を「いかさま」だと表現し、パリ協定からの離脱を宣言していた。第2次政権でも就任直後に一連の大統領令に署名し、その中にはパリ協定離脱、グリーンニューディール政策の終了とEV義務化の
-
原子力の論点、使用済核燃料問題についてのコラムを紹介します。
-
福島原発事故を受けて、放射能をめぐる不安は、根強く残ります。それは当然としても、過度な不安が社会残ることで、冷静な議論が行えないなどの弊害が残ります。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー・環境問題のバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














